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3DCADを教えるときに気を付けていること!続編(Part4)

書籍「Fusion 360 マスターズガイド ベーシック編 」がAmazonでの評価100件を超えたことから、何か記念に!お役に立つ情報を配信したい!と思い、はじまった私、テルえもんが「3DCADを教えるときに気を付けていること!」の続編、Part4です。

そして、このたび、書籍「Fusion 360 マスターズガイド ベーシック編 」の重版(増刷)が決まりました!

これも皆様のおかげです。この場を借りて感謝申し上げます。これからも有益な情報を提供できるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回ですが、前回は「寸法の付け方」について書きました。

そこで、寸法の付け方によって設計変更した際にエラーが発生すると書きましたが、今回は、なぜ、エラーが発生するのかについて書きたいと思います。

3DCADで設計変更した際にエラーが起きてしまう理由

3DCADを使っている人の多くが、作成した形状に変更を加えたら、エラーが起こり関係するもの全てにエラーが出てしまい、次に進めなくなってしまった!という経験をしたことがあると思います。

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なぜ?エラーが起きるかなんですが、
3DCADが行おうとする作業ができなくなってしまうためです。

なぜ?行おうとする作業ができなくなってしまうのかですが、

参照関係が崩れてしまうことが主な原因です。

前回Part3で書きましたが、ヒストリー型の3DCADの場合、パラメトリック機能で値を変更することで形状を変更することができます。

とても便利な機能なのですが、値を変更したり、立体化するベースとなるスケッチを変更したり、一部の形状を削除したりした際に、参照していた要素がなくなってしまい、行うべき作業ができなくなってしまいエラーが起きてしまうことがあります。

3DCADで立体形状を作成していて意識することはないかもしれませんが、内部では、作成された面や線(エッジ)、点には自動的にIDのような名前が付与されています。「内部ID」と呼ばれたりします。

イメージとしては、面1、面2、エッジ1、エッジ2、のように名前が内部で付与されていて、作業を進めていく中で、この寸法はエッジ1を基準につけられている、面2を基準に押し出しが行われている、エッジ2にフィレットを付けているなど、3DCADが内部で記録しています。

3DCADでは、ここの形状のこの箇所にフィレットを付けているという形状での認識ではなく、「エッジ2」という内部IDの名前のところにフィレットを付けていると記録されています。そのため内部IDはスケッチなどで線を一度消して書き直したりすると番号・名前が変わってしまい、たとえ同じスケッチ形状だとしてもエラーが起きる場合があります。

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設計変更を行った際に、この名前が付与されている要素、面2やエッジ2が削除されてなくなってしまうと、それを参照して作業していた押し出しができなくなったり、フィレットが掛けれなくなってしまい、エラーが起きてしまうのです。

3DCADによっては、エラーではなく、参照関係がなくなり形状は保持される場合もあります。Fusion360の場合、要素を削除していくうちに、いつのまにか参照関係がなくなっている場合があるので注意しましょう。設計変更した際に意図したように連動して形状が修正されない場合があります。エラーが出すぎても困りますが、いつのまにか参照関係がなくなっているのも困ることがあります。

他にも削除ではなく、形状の大きさが変わったことで、例えば、フィレット10mm付けていたところが、10mmの大きさをつけられなくなり、エラーが起きることもあります。

形状が成立しない寸法に変更されるとエラーが発生してしまいます。

繰り返しになりますが、エラーが起きる原因として、参照関係が崩れてしまう!というのと、行うべき作業ができなくなってしまう!というのがあります。

それでは次に具体的なモデリングにおける、スケッチのエラーとフィーチャのエラーについて対処方法も含めて説明していきます。

3Dモデルを作成する際のスケッチとフィーチャの関係については、このシリーズのPart1で説明していますが、復習で書きますと、一般的に3Dモデルの作成は、スケッチ機能で2次元の輪郭(プロファイル)を作成し、それをフィーチャ―機能で押し出したり、回転などさせて立体化していきます。

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そのスケッチとフィーチャに設計変更を行った際にエラーが起きます。

スケッチのエラー

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例1:拘束の相手先が不明
スケッチでは、距離や角度などの寸法拘束や、平行・垂直・接線などの幾何拘束を付与していきますが、設計変更により、拘束の相手先が不明となってしまいエラーが起きることがあります。この場合、拘束の再設定が必要となります。

例2:スケッチ平面が不明
スケッチは平面に作成するのが基本になりますが、立体形状の平面にスケッチを描いている場合など、その立体形状の面がなくなってしまうと、スケッチ平面が不明となりエラーが起きてしまいます。その場合、新しいスケッチ平面を再設定する必要があります。


フィーチャ―のエラー

フィーチャの要素が不明となった場合には、スケッチやフィーチャを再設定する必要があります。

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例3:フィレットつける要素がなくなった
設計変更により、フィレットをつけていた箇所(要素)がなくなったため、エラーが発生。位置が移動した場合にもエラーが起きる場合があります。この場合、フィレットが不要になったのであれば、このフィレットのフィーチャを削除しますし、フィレットをつけたい箇所がある場合には、その箇所をフィーチャ編集で再選択します。

例4:形状と形状の結合、切り取りができなくなった
設計変更により形状と形状が交差しなくなり、形状と形状を結合したり、切り取りができなくなってしまうエラーが起きることがあります。この場合、交差するように他のパラメータやスケッチを変更したり、結合、切り取る形状も不要になった場合には、合わせて削除を行います。

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アセンブリ・図面におけるエラー

ここまでモデリングに関してのエラーについて書いてきましたが、アセンブリと図面に関してのエラーについても少し書きたいと思います。

一般的な3DCADでは、アセンブリや図面はモデリングした3Dモデルとリンク関係にあり、3Dモデルの形状が変更されるとアセンブリや図面も更新されます。

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なので、3Dモデルにエラーが発生すると、アセンブリと図面もエラーが発生してしまいます。これが3DCADで設計を進めていく上で、とても厄介なところで、設計業務の時間ロスとなる部分です。

アセンブリのエラー

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例5:構成部品の読み込みエラー
読み込んできている部品の読み込み場所やファイル名が変わってしまって、部品が読み込めなくなってしまうエラーが起きることがあります。エラーを修正する方法として読み込み場所・ファイル名を再定義する必要があります。3DCADでアセンブリを行う場合には、きちんとしたデータ管理が必要で、場合によってはデータ管理ソフトを別オプションで購入して管理します。(※Fusion360の場合、リンク関係が壊れないようにデータ削除ができないようになっていたり、ファイル名が変更されても連携できるようになっていますね。)

例6:参照関係が崩れている
部品と部品を組み合わせる際に参照している面や線(エッジ)、点などの要素(エンティティ)がなくなってしまうと参照関係が崩れてしまいエラーが起きてしまいます。参照している要素を再定義する必要があります。

図面のエラー

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例7:寸法エラー
寸法を付ける際に参照していた要素が3Dモデルの設計変更により、なくなってしまった場合に、エラーが起きてしまいます。寸法が不要になった場合には削除、または別な箇所への再定義を行います。

例8:部品の読み込みエラー
アセンブリと同様に、読み込んできている部品の読み込み場所やファイル名が変わってしまって、図面で参照している部品が読み込めなくなってしまうエラーが起きることがあります。エラーを修正する方法として読み込み場所・ファイル名を再定義する必要があります。(※Fusion360の場合はエラーが起きないようにデータが削除できなくなっていたり、ファイル名の変更などが連携できてエラーが起きにくくなっています。)


エラーが起きにくい3Dモデルを作成するためには

ここまでエラーがなぜ起きるのか?について書いてきました。それではエラーが起きにくくするためには、どうしたらよいのか?というのが3DCADを使う人は考える必要がありますよね。

今回、少しだけ紹介したいと思います。設計変更に強いモデルを作成するコツとして、以下の5つがあります。

設計変更に強いモデルを作成するコツ
①変更しやすいようにシンプルなスケッチとフィーチャを使用する
②1つのフィーチャは、1つの設計機能に対応させる
③不要なリンク関係を避ける
④関係をつける要素は、点よりも線、線よりも面を利用する
⑤モデルの平面ではなく、作業平面を構築して利用する

文だけ読んでも何のこと??となると思いますが、この辺の詳細については、次回もしくは次回の次回か、いづれ書きたいと思います。
(#なんとなく1回の投稿を3000文字を目安にしています。)

それでは、お待ちくださいませ。
今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。


noteを最後まで読んで頂き有難うございます。 東北の岩手県北上市で3DCAD/CAM/CAE、3Dプリンタ、3Dスキャナ、リバースエンジニアリング等、ものづくりエンジニアの育成、企業のサポートをしています。地方創生・地域活性化に取り組んでいます。よろしくお願い致します。