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てりたまです。
監査法人で30年強、パートナーとして17年、監査やその他のお仕事で、さまざまな会社とお付き合いがありました。

監査人やコンサルタントがクライアントで業務を始めるときに、最初に乗り越えないといけない壁が、その会社の「お作法」です。
「お作法」が分からないと、そもそも会話が成立しないからです。

「お作法」の中には、一見して分かりやすいものも。例えば、

  • 服装:フォーマルか、どの程度までのカジュアルがOKか

  • 用語:社内でしか通用しない略語など

  • 資料:A4かA3か、縦か横か、枚数は少ない方がよいか

一方で、外からは見えづらい「お作法」もあります。長く社内にいる人にとっては空気のようになってしまい、自分たちでも分かりにくい「くせ」とでも言うものです。

会社の3つの「くせ」

① コミュニケーションの「くせ」

上層部と話すために、数ある階層の下から一つずつ上がっていくことが当然になっている会社があります。
そんな会社でこの「お作法」を守らないと、守らない人が困るだけでなく、下の人たちが、上から「お前たちは聞いてたのか? 俺への事前のインプットがないのはどういうことだ」と怒られることに。

これと似ていますが、違う部署に連絡するときのルートにも注意が必要。
会社によっては、別の部署の担当者に直接連絡して何の問題もありません。
ところが、組織図をなぞるように、自部門の上司から、相手方の部門の上司に連絡し、相手部門内で担当者に連絡してもらってからでないと、コミュニケーションが始められない会社もあります。

② 意思決定の「くせ」

非常に保守的な意思決定をしたがる会社もあれば、アグレッシブな選択肢を好む会社もあります。
保守的な傾向があると、「新しいこと」や「何かを変更すること」への抵抗が強いのが通常です。何かを始めるときには、事前に時間をかけて関係者を説得して回らないと、すぐにつぶされます。

もう一つ、議論を通じて決定するか、誰か特定の人が決めるのか、という違いもあります。
おもしろいのは、「会議をして決めるか」とは無関係であること。
正式な会議を開いて、議論する体にはなっていても、参加者全員が意思決定者を横目で見ながら上すべりな会話をしていることもあります。
逆に会議はなくても、関係者が立ち話をしたり、チャットで会話して決めていることもあります。

③ スピード感の「くせ」

最後の「くせ」は、スピード感です。
ものごとを前のめりにどんどん進めていくか、周りと確認をとりながら慎重に慎重に進めるのか。

これは比較的見分けやすい「くせ」です。
何か期日を設定するときに、案件にもよりますが、デフォルトが「明日まで」か「来週」かで分かります。

スピード感があれば、意思決定もアグレッシブかというと、そうとは限りません。
スピーディーに保守的な意思決定をする会社もあります。

「お作法」を理解した上で

自社の「お作法」について

同じ会社に長く勤めていると、「お作法」が空気のような存在になります。
自社独特の「お作法」と社会人としての「常識」との区別が分からなくなり、「お作法」を理解しない人のことを「常識がないやつ」「仕事ができないやつ」と断定してしまいがち。

会社の「お作法」は、社内のコミュニケーションを円滑にし、ストレスを減らして、共通のゴールに向けて集中しやすい、という効能があります。
しかし、空気のように気づかなくなることは危険です
知らない間に社内でムダが発生していたり、世の中と発想がズレているかもしれません。

そんなこと言っても、自分たちで分からないものをどうすればよいか?
一番は、転職してきた人が話しやすい環境を作り、転職者の声をじっくりと聞くことです。まずは何が自社に独特なのかを理解することで、今のままでよいのか、変えないといけないのかを考えるヒントになります。

監査人やコンサルタントにとってのクライアントの「お作法」

冒頭に書いたように、クライアントの「お作法」を知らずして、会話は成り立ちません。
まずは「お作法」を理解し、それを踏まえてコミュニケーションをとること。おそらく、すでにそのように取り組んでいると思います。

ただし、これが行きすぎて、クライアントの「お作法」に自分自身が染まってしまわないことも重要です。
監査人にせよ、コンサルタントにせよ、社外から来ていることに価値があるわけです。
また、これはまずい、と思う「お作法」があれば、それを伝えることも重要な価値です。もっとも、ストレートに話しても理解されないので、それこそ「お作法」にのっとった伝え方で進めましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのコメントや、Twitter(@teritamadozo)などでご意見をいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。
てりたま

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