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監査シニアスタッフ昇格後の壁をどう乗り越えるか【監査ガチ勢向け】

スタッフから複数の監査業務を担当する人は多いですが、シニアスタッフになると見える景色が変わります。そこで一番戸惑うこととは?


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

X(Twitter)で交流のあるそらさんより、こんな宿題をいただきました。

確かに、シニアスタッフになるとマネジャーからの期待も大きくなり、スタッフとは仕事の内容が変わりますね。
今回のてりたまnoteでは、そこでぶつかる壁を取り上げて対処法を提案します。

なお、シニアスタッフの業務は、監査法人、クライアントの規模、監査チームの状況、本人の状況によって変わります。
ここでは、次のような業務内容を想定しています。

マネジャーの指示の下、スタッフを率いて監査業務を遂行する。日常的に監査チームを代表してクライアント対応も行う。


複数の現場を仕切る難しさ

大昔のことですが、私がシニアスタッフのころ。
担当していないクライアントにスタッフ的にアサインされたことがあります。

そのときの気楽だったこと。だって、自分の割当だけを終えればいいんですから。

逆に言うと、自分がシニアスタッフとして担当していたクライアントについては、監査業務を遂行し、終わらせることに重い責任を感じていたということです。
自分自身が作業する割当をこなしながら、意識のかなりの部分はスタッフやクライアントに向いていました。

その意識は、担当しているほかのクライアントにも向いています。
同じ日に複数のクライアントで業務が進行していることもあれば、往査時期でないクライアントから相談が来ることもあります。
そうやって、タスクが山積みになっていきます。



❶ マルチタスクの壁

よくタスクを重要性と緊急性の2軸で分類しよう、と言われますよね?
監査のタスクで言うと、監査意見を出せなくなるかもしれない領域は重要性が高いと言えます。
また、クライアントから怒りの電話を受けたら、緊急性は高いですね。

タスクが山盛りになるとき、次のいずれかにおちいりがちです。

  • 先入先出や後入先出で手をつける

  • 緊急性の高いものから片付ける

先入先出法や後入先出法は、重要性も緊急性も度外視なので問題が大きくなって大噴火することが確実。

一方、緊急性の高いものにばかり対応していると、重要性が高いのに緊急性は低いものが後回しになります。
その結果、重要な手続が監査の終盤になっても進んでいない、ということが起こります。

いずれの仕事の仕方も、頭を使わずに反射的に仕事をしていることに問題があります。
ではどうすれば賢くタスクをこなせるのでしょうか?

それは、自分なりのタスク管理の方法を見つけることに尽きます。
紙ベースでも、タスク管理ソフトでも、エクセルでもなんでもよいので、最新のタスクの一覧を常に持ち、重要性と緊急性を考えながら優先順位を決めていくのがよいと思います。

以前のてりたまnoteで私のやり方をまとめていますので、よかったらご覧ください。


❷ 突発的に起こる問題の壁

現実には、どれだけタスクをコントロールしようとしても、突発的なことは起こります。
また、自分のタスクは順調でも、スタッフの進捗に問題があったり、スタッフが病気になったり、急なクライアント対応が必要になったりします。

そんな事態に備えるためにやっておくこと、それは自分の時間をできるだけ空けておくことです。

業務の割当を考えるときに、自分がやった方が早いとか、このスタッフには荷が重いとか、いろいろ考えて自分の割当を増やしたくなります。
ここは心を鬼にして、スタッフに割当てましょう。
そうでないと、スタッフが全員帰ってしまったあとで、めまいがするほどの膨大なタスクを一人で片付けるはめになります。

スタッフにとっても、難しい仕事に挑戦することは成長のための機会。
全部を任せることはできなくても、本当に難易度が高い部分だけを切り出して、ほかは割り当ててしまいましょう。


❸ 人手不足の壁

「そもそもスタッフの絶対数がぜんぜん足りないんです」
「スタッフにも相当無理してもらっていて、これ以上割り当てられません」
分かります。人手不足のしわよせが現場に行ってしまっていることは、私も心配しているところです。

そんな中で、シニアスタッフであるあなたには何ができるでしょうか?

スタッフがどれだけ不足しているかをパートナー、マネジャーと共有

パートナーやマネジャーも、人手が足りていないことは分かっています。ただ、どれくらい足りないかまでは認識できていないかもしれません。

前期と比べるなどして現場の窮状を見える化し、現実を分かってもらいましょう。

マネジャーと相談しながら、優先順位を決めてスタッフに指示

「やった方がよいこと」が全部できないのであれば、優先順位を決めてやっていくしかありません。
マネジャーの指示をあおぎながら、優先して取り組むべきことを特定して、スタッフに指示します。

見方を変えると、手を抜くところ、目をつぶるところを決めるということです。

マネジャーを上手に使う

「上司を上手に使う」と言うと、優秀なシニアスタッフであればニヤリとされたと思います。上司は、表面的には従順なふりを装いながら、手のひらの上で転がすものです。

すでに人がどれくらい足りないかは共有されているはずです。
心あるマネジャーであれば、あなたに対して無理を言っていることは分かっている。

そこであなたが、「この部分だけどうしてもできないんですが……」と相談すれば、無理やりほかの現場からスタッフを連れてきたり、自分で引き取ってくれると思います。あるいは「そこは、もういいから」と言ってくれるかも。

ここで業務全体に対して「無理です」と言ってしまうと、マネジャーとしては対応のしようがなく、現場が管理できていないように見えてあなたの評価も下がってしまうかもしれません。
そこで、無理な部分を特定して具体的に伝えることで、マネジャーに「さすがに、何とかしないとな」と思わせることがポイントです。


おわりに

シニアスタッフで苦労することは、マネジャーとしての活躍につながっています。
また、シニアスタッフで監査をやめたとしても、現場の取りまとめやクライアントとのコミュニケーションは、どんな仕事でも生きる経験です。

難しいと感じても、上司や先輩が通ってきた道。
心身の健康には気をつけながら、ぜひ積極的に取り組んでください。

宿題をいただいたそらさんも回答を発信されていますので、そちらもご参照ください。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはTwitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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