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行動を変えるために必要な2つの条件

認知行動療法について解説した以前の記事で、
問題となる行動が繰り返される原因は、「行動の前ではなく後にある」と説明しました。

https://note.com/terasuyu/n/n252066e43d69

リハビリ拒否という問題行動の原因は、患者にやる気がないからではなく、
以前リハビリをしたことで嫌な思いをした、ということが理由になるのです。

行動の後にどのようなことが起こるか(起こったか)によって、その行動の増減は決まる。

今回は、その「行動」についてさらに掘り下げていきます。


行動の定義

特定の人物(患者でもセラピストでも)が起こす問題行動をどうにかしたいと思った時、
まずはその行動をしっかりと定めることが大切になります。

例えばの話。

「新入職員のAくんは病棟職員とコミュニケーションが取れていない」

後輩指導あるあるですよね。
この場合、「コミュニケーションが取れていない」というのが問題行動になります。

しかし、これでは不十分なのです。

行動を記述する際に重要なのは、
人形にはできないこと」を「具体的」に記述することです。

コミュニケーションが取れない、これは人形も同じですね。
また、コミュニケーションという単語は聞く人によってその意味するところが変わってしまいます。

病棟の看護師に挨拶ができないのか、患者さんの自立度を変更する時の相談が不十分なのか、新規患者の病状把握のための情報収集が不足しているのか…
全てコミュニケーション不足でまとめられる内容です。

Aくんにとっての問題行動とは何なのか?
それを具体的に把握することがまず初めに必要なことになります。

例えば、

「Aくんは、初めて入る患者のリスク把握のための情報を看護師のCさんから聴取せずにカルテからのみ情報を得ている」

こんな感じですね。
行動を具体的に記述することで、具体的な問題点やアプローチ方法が見えてきます。

C看護師との関係がうまくいっていないから話さないのか、カルテの確認のみで十分だと思っているから話さないのか、そもそも他職種の人に話しかけにくいのか。
そしてその理由は何なのか?

後述する、行動が強まる(弱まる)条件を絡めて考えることで解決の糸口が見えてくるんです。

「Bさんのリハビリ拒否が強い」

これも同じです。人形もリハビリ拒否はできますね(当たり前ですが)。
修正すると以下のようになります。

「Bさんは午前中のリハビリで離床を促されると、布団を頭まで被って“眠いからいい、やらん“と声を荒げる」

この記述からはいろいろなヒントが得られます。
午前中の介入時に拒否が多いようだ、リハビリという言葉の意味は理解している、もしかしたら昼夜逆転なのかもしれない、などなど。

行動が強まる2つの条件

行動が起こりやすくなる条件は大きく分けて二つあります。

・好子出現

メリットがあれば行動が起こる、ということを専門的に表現すると「好子出現による強化」となります。
「リハビリを拒否することでもう少し眠れる」というのはこれですね。
眠る=好子となっています。

・嫌子消失

行動した後に嫌なことがなくなれば、その行動は繰り返し生じやすくなります。これを「嫌子消失による強化」と呼びます。

「リハビリを拒否することで筋肉痛が生じることはなくなる」というのはこれです。
筋肉痛=嫌子となります。

行動が弱まる2つの条件

特定の行動が起こりにくくなる条件も二つあります。

・嫌子出現

デメリットがあると行動は起こらなくなる、ということを専門用語で言うと「嫌子出現による弱化」となります。
「リハビリをすると筋肉痛で眠れなくなる」といった例が挙げられます。

・好子消失

行動した後に好きなことがなくなれば、その行動は今後生じにくくなります。これを「好子消失による弱化」と呼びます。
「リハビリをすると昼寝の時間がなくなる」といった例が考えられます。

好子と嫌子は時と場合によって異なる

何が好子となり、何が嫌子となるのかは人によってはもちろん、
状況や環境によってコロコロ入れ替わります。

だからこそ、
対象者にとっての好子(嫌子)は何なのか?を常に観察・評価しなければなりません。

問題行動の原因を突き止めるためには、
行動の後に何が(好子・嫌子)起きているかを明らかにする必要があるからです。


行動を変えたいときは弱化よりも強化を利用する


車の一時不停止で運悪く罰金(嫌子)を喰らったとします。
ですが、一週間後に一時不停止した際にも再び警察に止められるとは限りません。
「違反をしても滅多に見つからない」ことが身に染みてくると、行動を弱化させていた要因が効力を失ってそのうち元のレベルまで戻ってしまいます。

人が過ちを繰り返すのは、この「回復の原理」が働いているからです。

毎日の晩酌が災いして高血圧になり、脳梗塞になって入院したとします。
退院直後は断酒を続けていましたが、それから1年経った誕生日に少量の酒を久しぶりに飲みました。
当然、1日の飲酒で血圧はそうそう変化しません。その後週末ごとにビール2缶を飲むようになっても、それほど変化はありませんでした。
そんなことを繰り返していくうちに、5日に一杯、3日に一杯、と量は増えて…

これが回復の原理です。

他人の行動を変えようと思ったときに、
嫌なことを与えたり、良いことを取り上げたりするのは倫理的に問題があります。

「リハビリしないと歩けなくなってしまいますよ」

と言うのは、好子消失を脅し文句として使っていることになります。

それよりは、
「リハビリをすると体が軽くなる」=好子出現による強化
「リハビリでは息の詰まる病室から外に出られる」=嫌子消失による強化

といった強化の働きを利用する方が効果的です。
そのためにも、対象者の好子・嫌子が何であるかを把握しておきたいですね。

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