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テラジア オンラインウィーク2021 [日本語]

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テラジア オンラインウィーク2021に寄せた4つの読みもの。11月19日(金)から順次公開。テラジアの魅力をより深く知り、味わうために、作品鑑賞のお供としてぜひご一読ください。
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#伝統芸能

往復書簡:テラとTERAの音楽をめぐって④(音源付き)グリット・レカクンより最後の手紙

by 田中教順、グリット・レカクン ひとつ前の記事を読む 最初から読む 第六便:グリット・レカクンより 教順さん、こんにちは。 私の中では、私たちは音楽と仏教や、タイ人と日本人の音楽の違いを議論しているわけではないと思っています。実際、私たちは人間で、人類の創造と発展において、世界の文化の下にいます。ですから、タイの『TERA เถระ』や日本の『テラ』で表現された音楽は、グローバル化した世界における私たちの文化や経験を表しています。ゴージャスな音楽、美しい音楽、はた

地獄の唱導と芸能―絵解き・落語・芝居/後篇

書き手:渡 浩一(明治大学国際日本学部教授) 表紙:「十界双六」(国立国会図書館所蔵) ⇒前篇はこちら 地獄巡りの物語とその絵解き 仏教の唱導活動によって地獄の具体的イメージが広まってくると、地獄巡りなど地獄を舞台としたさまざまな物語も生まれ、そうした物語も多く絵画化されて絵解きされてきた。  たとえば、大和郡山市の矢田寺の『矢田地蔵縁起』は、受戒を望む閻魔王の招きで閻魔王庁に招かれ王に菩薩戒を授けた満米上人がお礼に地獄見学をさせてもらい、現世に帰還後地獄で出会った地蔵

地獄の唱導と芸能―絵解き・落語・芝居/前篇

書き手:渡 浩一(明治大学国際日本学部教授) 表紙:「十界双六」(国立国会図書館所蔵) はじめに 思いがけないご縁に導かれて、『テラ 京都編』の記録映像を視聴し、観劇の趣味などまったくないのに一文を寄稿させていただくことになった。  正直、映像を視聴しての印象は「わからない」であった。しかし、何となく面白く感じ興味をひかれた部分があったことも事実である。一つは『テラ』の活動全般に関わることだが、場所が寺であること。仏教・お寺と芸能との歴史的因縁を思った。一つは井戸から堕ち