ご近所さん

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この寺町通りで産声をあげ、早30余年。
そんな私の趣味はスーパー銭湯に行くことだ。
近頃のスーパー銭湯はとても良い設備が整っており、
温泉がわいている所もあれば多種多様な風呂釜がある。
石鹸や、シャンプーなどの備品も備え付けてある。
本当に小さな子供からお年寄りまでファミリーでも利用できる施設だ。
もちろん、現在も存在するが一昔前の銭湯は
自ら風呂桶を持ち石鹸やシャンプーを持ち込むスタイルが主流であった。
設備にしてもスーパー銭湯とは違う。

異なった事はたくさんあるが、私個人的に大きな変化に気づく。
それは銭湯内の情緒や雰囲気だ。
銭湯内で繰り広げられる会話など昔特有の良さがあった。
<○○さん、最近みかけへんけど元気にしたはるか?>
<おう!○○さんの子やなー。大きなったなー。>などなど。
ご近所ならではの会話が飛び交っていた。
私達が小さい頃はやはり怖いおっちゃんがいた。
<こら!坊主!!掛かり湯してからはいらんかい!!>
<走ったら滑るぞ!!>
<ゆっくり牛乳飲まなお腹こわすで!>・・・って。
怖い顔で怒りながらもとても暖かい優しい言葉を掛けて貰った。
その銭湯で私達はおっちゃんの事を知りおっちゃんに自分を覚えて貰った。
それは今となって家庭の中とはまた違う世界の親父であったおもう。
そういう親父というのは銭湯内だけではなくあちこちにいてくれた。
学校への通学路、いつも表玄関を掃除していたおばちゃん。
<しっかり勉強してきいや!>ってげきを飛ばしてくれた。
そんなおっちゃんやおばちゃんは歩いていくたびにいてくれた。
今思えば通学路のパトロールをしていてくれたことに気づく。

記憶に深い出来事は、終業式後の帰り道だ。
そのおっちゃんおばちゃんが待ってましたかのように
<今日もらってきたんやろ!?見せてみ。>
って言われるとランドセルの中から通信簿を取り出す。
成績が上がっていたら
<おお!よくがんばったな!ご褒美や!!>っていいながら
店の中に入りチョコレートをくれた。
成績が下がっていたら
<次は頑張れよ!!>ってチョコレートをくれる。
当時すごくイヤなこの行事は今思うとなんか頬笑ましく、うれしい。

最近、新聞やニュースを見ていると耳をふさぎたくなるような事件が多い。
小さな子供が被害にあったり、インターネットを通じての事件が目立つ。

私が思うにはそれらが共通していることはコミュニケーション不足があると思う。
小学生の通学時は近所のおっちゃんやおばちゃんの監視の元安心して通学できた。
<おはようございます。いってきます!!>
<ただいま!!>
挨拶が当たり前のように身に付いた。

学校から帰ったらゲームやパソコン。または塾や英語・・・といった習い事。
いろんな集団での遊びより個人個人で遊ぶ方を優先している。。
家に着くなりランドセルを放り投げ近所の公園やお寺に遊びに行くことが少なくなった子供達。
コミニュケーションはやはり私達にとって一番大切な事だろうか。
私達から発信するコミニュニケーションは家庭の繋がりであり地域とのに繋がりである。

この下町情緒、人間味あふれる寺町通りに生まれたことを改めて感謝し
ご近所のおっちゃんおばちゃんにありがとうを言いたい。

執 筆 者:スマート珈琲店 元木 章
イラスト:辰巳 優

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