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蛍をつかむ

今年は例年より早く蛍が出てきた。
ここでいう「例年」というのは曖昧なもので、あくまで体感値みたいなもの。季節は暦通りに進む方が少ないし、起こっている出来事は自分で確かめて愉しんでいく。

そんなわけで、蛍を観ながら、七輪でなにかしら焼いて、外で一杯飲みましょうという会をやってみた。

前日にやろうと決めて、当日に授業が終わってから集合時間を決める。
そんな、いきあたりばったり加減なので、野菜を今からカットしますとか、意外に寒いから上着取ってくるとかで、予定通りに集合できず。
「焼くなら絶対に烏賊だよ烏賊!」と、烏賊以外の選択肢はないかのような会話をしてきていたのに、肝心の烏賊だけ持ってくるのを忘れる。

ようやく、七論の炭火に火がついたけど、台所の方ではまだ生徒たちがゴソゴソと動いている。料理好きな人たちの性分というのか、いつも台所周りをうろうろして、なかなか落ち着いて座ってくれないのが、唯一困るところだ。

日が暮れてしまう前に一口目を飲みたかったので、とにかく始めるよ!と乾杯をした。暑い日の終わりに飲むビールは最高。1日の後半折り返し地点を、最高の形でもう1回始められる気分。ちらほらと蛍も見えてきた。

まずは豚バラ肉をサンチュで巻いて食べる。サンチュは自分の庭で採れたもの。慌てて洗ったもんで、まだ土が少し付いていたかもしれなかったけど、土ごと一緒に食べてしまう気持ちで一気に頬張る。美味い。

続いて、そら豆。そら豆は、たまたまお裾分けで頂いたもの。七輪とそら豆が偶然出会ってしまったともいえよう。鞘ごと焼く。静かに焦げ目がついていきながら、鞘の中から息を吹き出しながら、徐々に蒸されていく。鞘を開いて、薄皮ごとほくほく食べる。美味い。

その後も、生徒の地元から取り寄せた椎茸やらトマトや、途中合流した烏賊たちを愉しんだ。ふとした時に、「今、何時だろう」と時計を見たら、まだ9時過ぎ。すごく長い時間を過ごしたようで、実はそれほど時間が経っていないことにびっくりした。

小さい七輪を4人で囲んで、火の様子を見つつ。食材への火の通り具合も見つつ。もしかすると、気付いていないだけで、七輪に向かって黙っていた時間もあったかもしれない。目の前で進んでいることが最優先。そんな食べ方もよい。

(文:島食の寺子屋・受入コーディネーター 恒光)