7月と8月の振り返り④(課外授業と実践 )
見出し画像

7月と8月の振り返り④(課外授業と実践 )

離島で和食を学ぶ「島食の寺子屋」

画像1

恒光:
7月の課外授業の振り返りをしよう。学んで感じたものを、卒業後は伝えていく側になっていくんだし。今はその過渡期にいると思う。

武田:
選べないですけど、梅を干したのもそうだし、イカ釣り漁船もそうだし、定置網の見学もそうだし。鶏をしめるのも、普段鶏肉を食べているけど、一匹の鶏を絞めて食べてるんだなんて考えない。

画像2

あと天草も、寒天があっこからとれるもんなんて知らなかったんですね。だから、寒天って海のものだったんだっていう発見でした。知らなかったし驚きでした。しかも、モズクもあんな風に生えているんだっていうのも知らなかったし、定置の魚がとれる現場とかも、本当にここじゃなきゃ見れないことだったし、見なきゃ考えるきっかけがないというか。

だから、どれも選べないくらいに全て貴重な経験で、選べません(笑)

画像3

三橋:
私は海なし県出身なので、天草とかもずくとかないじゃないですか。本当に、ここの場所だから、その食材があるというのが、いま聴いていて思った。

この場所にしか生えていない。先生に蓼(たで)が生えていますか?って聞いたら、海士町は川がないからどうだろうねって言われて。それで今ここにしかないものを日々取っているんだなって思います。

この土地だから生えていて、この土地に合っていないものは生えてこないし。魚もこっちだと取れるものと、海流とかによってとれないものがあるじゃないですか。だから、ここで見れるものを貴重に思おうと思った。

海士チャンネルで食べ物じゃないけど、ハマビワって木が生えているらしくて、海士町には生えているけど隠岐の島町にはないらしくて。こんなに近くて島も見えているのに、生態系も違うくて、生えているものも違うって考えると、今見ているものも独自のものなんだなって。その時期に、その場所でしか取れないものって本当に貴重ですよね。当たり前のことだけど。

恒光:独自のものがある場所で、寺子屋の生徒たちが新しい視点で、新しいものを生み出していくことができるとも思う。

長谷川:
ひとつ気になってしまうのは、永住している人がやることと、ずっとは島にいない寺子屋生徒のような人がやることは、意味合いって変わってくるじゃないですか。

私たちには一年間という括りがあって、新しいことができたとしても、残したり、本人がいなくてもできるみたいなことを、描いてやるのかやらないのかで、内容が変わってくると思う。

恒光:
うん。生徒が一年間だけで何かを成し遂げようとしても、極めて難しい話で。本当にアイデアベースのものから始めても良いと思っていて。

長谷川の色素とかレタスの研究とか、出野の竹輪の話とか。そういうのが、とにかくストックされていくことが大事かなと。そのストックが今は各々の頭の中で終わっていて、他の生徒ですら詳しくは知らない。

けれど、例えばそれが図書館みたいに読めるようになっていったら、他の人が「こんなことしていたんだ。こんなアイデアあるんだ」っていうのを知ることができるようになれば、島に住んでいる人っていう長い時間軸の人たちと、ストックされていく蔵書が合わさって新しいものが生まれていく可能性があるんじゃないかって。

生徒1人につき1つの企画をやっていこうという話をしたけど、その企画も残っていくものにしていきたいなって思っている。

長谷川:
既に企画化されつつある、武田さんの「おにぎり企画」とかが、どういった形で残っていくかを考えてみたらいいかもしれない。

画像4

武田:
島のお米と、全国の色んなお米を食べ比べた研究結果を残すとかから始めてもいいと思ってる。それを知って、こういうお米があることも、どんなお米であることかもわかってくるから。それは、それで残せるものの1つかなと。

恒光:
来年の生徒にも、「本気米をどうするか」っていう課題は残り続けると思う。今年度で、最終的な答えはすぐには出ないと思っていて。

「こういう使い方がいいんじゃないか」っていう、今年度での仮説を作っておいて、来年の生徒がそれを引き継いで、さらに実験を進めていけばいいんじゃないかって。

武田:
例えばですけど、おにぎり企画を最初どのような形でやるかって決まっていないですけど、島食の寺子屋のおにぎりみたいなのが、しゃん山に月一で並ぶようになるとか。その形が来年度にも引き継がれていくようなやり方もある。

恒光:
うん。そういった土台作りでもいいね。2021年度の生徒なりに、米に対しての答えを出してみる感じかな。まあ、最初から引き継ぐことを考えすぎると前に進めなくなっちゃうから、まずは企画そのものを進めることを考えよう。

さて、次は長谷川さん。

長谷川:
ざっくりで言うと、「生と死」に直面し続けたのが7月。

烏骨鶏の雛を孵化させたり、海に潜ってサザエをとったり、鶏を実際に目の前で絞めて食べたり、イカ釣り船に乗ったり、もずくをとったり、定置網に乗ったり等など。生き物がいる原点に立ち会えたのが7月で象徴的だったなと思っています。

画像5

最近だと、ヴィーガンであったりプラントベースのお食事を色んな場所でメディアが広めていますけど、「なぜ食べるのか?」ってところを、もう一度考え直したくて。

食事の在り方を考える人が、特に私の周りにいる世代が多いんですけど。鶏肉を食べたのは一年ぶりくらいで。畜産産業と地球規模の環境とか、動物たちの危惧とか、自分がそこまでして口にしなくちゃいけないものなのかとか。大学でオンライン授業を受けた時に、食べないって決断をしていたんですけど。

目の前で鶏をしめて食べてみて、しちゃいけないことと思って食べないんだけど、実際にああいう環境で育てられていて、どんな餌を食べたかも分かってて、ああいう場で食べたっていうことは、全然違う意味を持っていたなと。

画像6

色んな考えもあって食べていなかった時と、色々とわかっていたうえで食べるのは違って、あの食事はとても良い食事だと思っていて。美味しかったっていう以上の感情があった。

画像7

鶏だけじゃなくて、定置網に乗せてもらって、魚たちが網の中で暴れていて、氷の中で死んでいくので、やっぱり見なきゃいけない。見なくてもいいんだけど、実際はそうだし。これまで見ないでいたところを見れたことが良かった。やっぱり食べることを考え直してしまいますよね。

恒光:
うん。鶏をしめる講座の時は、自然な食べ方をしたなって感覚になった。人があんなに鶏の周りに群がるのも、人間が食べたいと思うから群がっていたんだと思うし。求めているものを食べるというか。

自然な光景でもあったし、自然な食べ方だったと思う。
それが魚だったら、どういう食べ方が自然なのかな。

長谷川:
せめぎ合いですよね。人間たちだって生きていきたいし、動物たちだって生きていきたいし。美味しいってテーマは、7月の体験がすごく大きくて。

美味しく食べようとしたら、それは人間だけの都合だし、そこには儲かりたいって気持ちとか、そういう欲望もついてきているし、それを見ないようにしていたしわ寄せが環境問題とか人権問題になってきたりしていると思うんですけど。

全てがダメというわけではないけど、ただの美味しいっていう私たちの基準だけじゃなくて、本当に色んなところが重なってくるものだなって、7月に思わされた。

恒光:
うん。ちょっと話がずれるかもしれないけど、ステイホームの期間に、「食べたい」って気持ちが明解になった気がする。

外に出られないから、まずは冷凍庫にあるものから食べて行って、どうしても足りないと思う葉物とかだけを買い足す。それまでは、色んなものを食べたいって思うから、殆ど考えずにすぐに買ってしまって、冷蔵庫の中に半端に残っているものが沢山入っていて。

気付いたら捨てないといけないものが出てきてゴミになったり。それが、限られた行動範囲で過ごすことで、自分が本当に必要なものだけに集中する食べ方になって。あと、ゴミも減らしたいから、今までゴミ袋になんでも入れていたのもやめて、野菜くずとかは、土の中に埋めるようにしたり。だから、すごいゴミが減った。制限がかかると人間は頑張れるね。

長谷川:
あと7月の離島キッチン海士の振り返りを三者面談でもしたんですけど、軽くみんながいる場所でも話をすると。

立て続けに同じことをするみたいなことがあって、先生の頭の中を理解するということ。

提供までの全てを通した手順と、提供までにしないといけないことの準備と、7月を振り返ってみてすごく身になったなって。考え方でいえば、①時間、②温度、③作業場の、3つを離島キッチン海士で学べると思って。

画像8

卒業生の岡村さんに会いにいって、岡村さんが言っていたのは、先生のひとつひとつの作業は本当に丁寧だったって、振り返ってみて思うって仰っていて。

いま、岡村さんが働いているところの方も、先生とはまた違うやり方だけれども、でも先生の作業は全部盗みたいくらいのものだったと、振り返って思うよって言ってくれて。

先生の作業工程の丁寧さも、さっきの「考えながらやれ」とか色々加味して、私たちが離島キッチン海士で学べることってなんだろうって考えると、そこもある。

「時間」だったら、時間配分。「温度」だったら温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。器も含めた全て。
「作業場」も、いま机の上にあるものが用済みなのかまだ使うのか、洗い物を優先するのか、それとも他の作業が優先なのかとか。

画像9

全てが組み合わさって先生は動いているってことを考えると、先生が言っていることは一言では説明できないんだなって思って。

だから岡村さんが言っていた、先生の動きが丁寧だったってことも、「あー、丁寧にやっているな」という感想で終わるんじゃなくて、今言ったことを全部自分の中で考えながら完成させている。それを実践して蓄積をしていくことを、9月からできるかなって。

恒光:
岡村先輩と話してみて、どうだった?
岡村さんは、長谷川さんのことを、昔の自分を見ているようだったって言ってたよ(笑)

長谷川:
具体的な話ができる人って、卒業生しかいないじゃないですか。
同じ家に暮らしたことがあって、同じ人を知っていて、というのが貴重だから。恒光さんって言えばわかる、鞍谷先生って言えば分かる相手が、すごい貴重だなって思って。

そういうコミュニケーション自体が楽しかったです。

恒光:岡村さんは、離島キッチン海士の実践授業が苦手だったな~(笑)

去年の卒業生たちの、学びについての自信の付け方はそれぞれだった。森塚さんって生徒は、岡村さんと違って、むしろ忙しい離島キッチン海士で自信をつけたタイプ。

岡村さんはゆっくり時間をかけていきたいタイプだし、外に出て人と話していくうちに、周りからの評価もあって、ようやく学びに自信をもてた。

森塚さんは離島キッチン海士がすごい忙しいときに、そのペースについていけたりとか、先生の次の動きがどうだとか、全部わかってやっていける感覚が掴めた時に自信になったって言ってた。卒業インタビューにも書いてあるけど。

そういう自信のつけ方もあるし。鈴木くんの場合は、最後の卒業制作の時に生産者の方々にお礼のお弁当を作って、そのお弁当を自分なりに捉えた味覚の感覚を、弁当に反映できた。つまりはインプットしてきたものを、をちゃんと自分の考えに基づいてアウトプットに活かせたというのが、彼にとっての自信になっている。

本当にどこで自信がつくのかは、人それぞれというのが面白いところ。

恒光:三橋さんの振り返りは?

三橋:
駆け抜けてしまったなと。
体力が足りなくて、体調崩さないか心配なくらい、7月は駆け抜けた月でした。「大変だった」で終わりそうで恐い。

実践授業は、すごいレベルの高いことをしている気がして、離島キッチン海士って仕込みから盛り付けまで全部やるじゃないですか。レベルの高いことをしていて、そこへ未熟なまま挑んでいることに対して、どこを吸収したらいいのかっていうのが分からなくなった感じはあります。

ひとつに絞って、自分が学ぶテーマを絞って学べば、学べると思うんですけど、全てを吸収しようと思うと、たぶん自分でパンクするのかなって思いました。色々と立て続けにあって。

流れであれば流れだけを自分で意識してやるとか、仕込みだったら仕込みの効率を考えてやるとか。それとも料理の技術的なところ、茹で上がりの温度であったりとかを気を付けたり。

まあ、全部をやれたら良いんですけど、スピード感があって吸収しきれてない感じがあったなって。

恒光:離島キッチン海士の現場の動きというのは把握できた?

画像10

三橋:
現場の動きは、何回か繰り返して慣れてきたというのはあるから、その部分とかは良いのかなって思ったり。先生のメニューの組み立て方というのを休みの間に振り返って、自分なりに理解できてきた。

恒光:
今の話を聞いて思ったことが二つあって。
島留学弁当で実践が立て続けにあったのは7月が初めてだったから、まだ手元が定かじゃない中で周りも見なきゃいけないし、技術のこととか不安だろうけど、まずは現場の動きを体感してもらう目的があるし、最初はそこから始まっていい。

それを知ったうえで翌月に「時間を意識して」とか、に向けたステップアップと思ってくれたらいいなと。

あと、メニューの組み立て方だけど、島食の寺子屋校舎から離島キッチン海士への移動の車中で、15分ほど今日のメニューについて先生に聞くってのは大事だと思う。

何も聞かないまま厨房に入って、言われたことだけをやるのとは全然違う。だから、厨房に入る前に先生にしっかりと聞くことを習慣づけると良いと思う。

離島キッチン海士までの移動で、三橋は車中で先生と一緒だったけど話したりしなかったの?

長谷川:
三橋さんが、色んな事がありすぎて、なにから学んでいけばわからないって言っていた時に、「何をやりたいの?」って聞いたら「焼き物」って答えていて。

なんでやりたいかって聞いたら、最近やってないからっていう理由で、わたしはそういう理由でも良いと思っていて。最近やってないから、積極的に仕事をとりにいこうとすることはできるよねって。三橋はそこを考えれているし、実際にできているだろうしと思う。

全部が全部を吸収しきれていないって不安はみんな一緒だろうし。
その中でこれだけは持ち帰ろうってことがあって、次に繋げられているのであればそれで良いのではと思うし。三橋さんは、それができているのかなって思う。

画像11

三橋:
あのときは、この行程をやりたいって思う気持ちもあったけど、研修から帰ってきてから、なんか振り返ってみたら、また違う考え方になってきたかも。

恒光:どう変わったの?

三橋:
1年で学べる事って限られているじゃないですか。

自分が例えばですけど、ここを卒業してお店をすぐに開くとかというのは、現実として難しいじゃないですか。

島食の寺子屋のHPにもあるように、土台をつくるってところで言えば、基礎的な部分だけ学んでいけばいいというのか。完全にできなくてもいいというか、この焼き方は100%みたいな、そこまでにはなれないと思っているから。

100%にしようと思ってやってると、混乱しちゃうから、そこまででなくて良いかなって思い始めているところです。技術的なところで。

長谷川:
なにを突き詰めたいかってところに集中してやればいい気もするし。4人とも違う学び方をするだろうし、そこはあまり比べなくてもいいなって思う。

三橋:
一度、自分がどこに学びの重きを置いていきたいのかっていうのをリセットしたい。

恒光:
生徒のみんなは、自分の目標の立て方って、どういう風にしているの?

自信がないなら、まずはどういう風に自分に自信をつけていくかを考えてもいいだろうし。ここだけは負けないっ、てところを突き詰めるのもいいだろうし。

三橋:短期目標と長期目標が大事だと思う。

恒光:その辺りは生徒の姿勢として大事だと思う。

それでは、次に出野さんの振り返りは?

出野:
三橋さんの話を聞いててわかるなぁって。わたしもごちゃごちゃしてきたんですけど、その続きで言ってみると。

沢山のことを経験したい気持ちと、極めたい気持ちと、どっちもあるんですけど、それって両極端にあると思うんです。私は、沢山の経験寄りで、ちょっと所々極めるみたいな、そんな具合で学びを進めていければ、自分にとって良いのかなと思い始めて。

沢山経験して、それを忘れていったらそれは意味がなくなっちゃうんですけど、経験した中で悩みながら経験したり驚いたことは覚えているから、それが卒業後に身になっていくものなのかなって考えていて。

その中で、色々経験してひとつでも得意なこととか好きなことが見つかれば、将来に繋がっていくのかなと改めて思っているんですけど。そういう意味では、研修に行く前に、復習の時間が沢山あって、そこで先生も含めてやりたいことをさせてもらって、わたしは茶碗蒸しで色々実験して、それが結構身になっているような気がするというか。他にも色々胡麻豆腐とか、魚の串打ちとか何回かできたし、そういうのができたのは良かったなと思います。

画像13

離島キッチン海士は忙しかったけど、復習の授業の時間をとれて、ピックアップして復習できたことは身になっていて、これからもそういう風に継続していけたらいいのかなって。

恒光:身になったっっていう感覚はどんなもの?

出野:
茶碗蒸しについては、上手くいったんですけど。
記憶というか感覚で残っている感じが、身に付いているということかもしれません。

武田:
実践授業の振り返りの時に、魚のお造りの一切れずつのグラム数を同じにしたり、焼き魚の切り身の大きさを揃えたりとか、それを私は何回もチャレンジしてみて。

画像12

振り返りというか、これからどうしていきたいかの話かもしれないですけど。料理のレシピみたいなものを自分の中に叩きこむというよりかは、幅広く使えること。お造りの大きさを揃えて切れるようになるとか、野菜の切り方も全部そうですけど。そういうところとか、もっとできるようになりたいと思っています今は。

恒光:良い目標だと思う。

武田:
入ってくる知識も情報量も多くて、わぁーってなるけど。

研修行ってから、逆に「今、自分はこれをすればいいのか」って思えれたかもしれないです。私は要領よくないし、マイペースなので、一個一個やっていくと時間が足りないから、包丁の使い方を身につけるというか、そういう意味の基本的なところから、まずは身につけていけるようになりたいです。

恒光:良い振り返りだね。9月も頑張っていこう!

(2021年8月25日 収録)

離島で和食を学ぶ「島食の寺子屋」
島根県の北、隠岐諸島のひとつ中ノ島(海士町)にある料理学校「島食の寺子屋」。 海へ山へ里へと、食材の現場に足を運び和食を学んでいく。四季を通じて学ぶ1年間コースに通う生徒たちの日記です。 【島食の寺子屋HP】https://washoku-terakoya.com/