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4月に入って、新たなメンバーでの1年間コースが始まった。
2022年度で5期生となる。前年度の生徒を見送ったあとに、少しリセットの時間を持って新年度に臨むものの、それでも入れ替え時期はいつも気持ちが騒がしい。

3月には生徒達の学びの集大成としての卒業制作弁当を、お世話になった生産者の方々へ渡したばかり。卒業制作の形は、表向きは弁当配布ということで変わらないけれども、そこに至るまでの出来事は毎年異なる。

自然や人を相手しながら進んでいく授業なので、まったく同じ年は一つもない。観光客の方に実際に料理を提供する実践授業もあるので、本土でのコロナ流行具合とも上手く付き合っていく必要もある。

満開の桜から葉桜になり始めて、ようやく少し落ち着いてた気持ちになってきたところで、2021年度に新たに出会ってきたことを振り返り、2022年度のことにも考えを巡らせてみたい。


2021年度に新たに取組んだこと

①島留学弁当


1年間お試し移住制度「大人の島留学」参加者向けへの仕出し弁当。よっぽど島暮らしに溶け込んでいないと、普段から島の旬の食材を口にすることはない留学生たち。仕出し弁当を食べてもらう時には、少しでも季節や旬の食材を感じてもらおうという趣旨で始まった。
島留学生からは、都度アンケートを回収して、「見た目・量・味」や「印象に残った一品」の感想など、丁寧にフィードバックをもらい、次回の弁当製作へと活かしていった。

島留学弁当 2022年1月実施分

②Entô宿泊のお客様への夕食提供


2021年7月にグランドリニューアルオープンしたEntôに連泊するお客様に向けた夕食提供。Entôでも島の食材を使った「洋」の食事提供をしていて、その相方として「和」の食事提供となる。

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Entôでのディナーの1品

これまで離島キッチン海士で提供してきた箱膳形式との違いは、夜会席の場合は一品ずつ提供していくところにある。その分、お客様と会話する機会は多く、お客様から料理説明を求められることがあれば、こちらから積極的に説明を試みることができる機会でもある。

離島キッチン海士の夜会席盛付

島で出会った生産者や現場のことを、料理や接客を通して自分なりに伝えてみる場所。最初の方は料理を語れる段階にはないけれども、生産現場のことも含めて伝えていける料理人になるステップアップに必要不可欠な舞台。

定置網漁船での課外授業

③生徒自主企画


離島キッチン海士での実践(箱膳、会席料理、仕出し弁当)といった、島食の寺子屋としての実践の枠から外したもの。生徒それぞれで、漠然とながらも「こんなことをやってみたい」ということに挑戦してもらう企画。

町営塾「学習センター」でのおにぎり販売

「やってみたい」というチャレンジに対して、とても寛容な風土が島にあるからこそ、自分のやってみたいことに小さいところからでも良いので挑戦してほしい気持ちがある。直売所や町営塾でのおにぎり販売や、イベントでのおでん販売などをしました。

先生からの指示で動くのではなく、自ら試行錯誤を重ねることで、試行錯誤のやり方そのものを学んでもらえたと思う。料理以外のことも含めて、1から10まで自分たちでするので、視野を広げながら尚且つ原価や売り方に対して自分事として真剣に取り組んでいく。1年間の終盤に、生徒自身の引き出しも増えてきたところで、実施していきたい。

おにぎり企画では、とことんお米と向き合った

2022年度のこと

2021年度に新たにトライしてみたことを並べてみたけれども、あくまで2021年度での新たな取組の羅列である。
島食の寺子屋の1年間のサイクルとして、基礎→実践→創出(創出=基礎・実践で学んだことを自力でアウトプットしてみる)という基盤自体は、年が変わっても変えない。

全てのことが新しく、満開の桜に目を奪われたと思いきや、自然にある緑が一気に噴き出る4月。鬱蒼とした、色濃い出来事の羅列の間を泳いでいる感覚から、次のステップへと向けて動き出していく時期。

同じ「あお」いでも、今の時期はまだ「蒼」い気がする。
来年の春には、すっきりと新天地へと向かっていけるような、「碧」い1年になってくれればと思う。

習字教室での2022年度生徒の「今」と「抱負」

(文:島食の寺子屋 受入コーディネーター 恒光)