第9話 家族と居るような「和会話サロン」を目指して
和会話教室を開くきっかけは?
寺子茶屋では、茶の湯教室を中心に、書道、生花、着物、和菓子、和食など、茶道にまつわる教室も行います。その一環として、和歌や古文など、日本語を改めて学ぶ教室も開講したいと考えている最中、岡田真規子さんとお話する中で介護施設で働く外国人の日本語によるコミュニケーションが話題になりました。
岡田さんは、介護施設で働く主に東南アジアの外国人の職場、生活や言葉のケアをする仕事をなさっています。私のピアノの生徒さんのお母様で、普段の会話の中から次のようなアイディアが浮かび上がりました。
(介護職の外国人+日本の小学生)× 童謡=言葉と音楽で交流型の和会話教室
介護職の外国人
生活や介護現場に役立つ日常和会話を学びたい外国人がいるが、学ぶ環境が少ない。(岡田さんの仕事場で感じること)
日本の小学生
小学生に「童謡」を歌って正い音楽感、旋律感を身につけて欲しい。(私のピアノ講師としての思い)
童謡
日本の童謡は季節や情景を表現するやさしい歌が多く、言葉と抑揚がメロディーとリズムに正しく美しく連動している。
効果
一緒に童謡を歌うことで日本の言葉を楽しく学び、介護施設現場でも入居者の方と一緒に歌えて役立つ。同時に、子供たちとの交流で自然な日常会話を交わすことができる。また、小学生は正い音楽感を身につけると共に、日本のことを外国人に説明したり、逆に相手の国について話を聞いたり質問する中で、新しい発見につながる。
以上の内容を岡田さんと2人で話すにつれ、「これはやるしかない!」となった次第です。
さっそくデモ授業
・介護施設で働くベトナム人 2名
・小学生3名、幼稚園生1名
・日本語教師1名
・音楽講師 1名
・親御さんやスタッフ 3名
以上、合計11名で行いました。
[授業内容]
1. 紅葉を歌う
映像を使いイメージと言葉を学ぶ
↓
2. 食事をする
みんなでご飯を炊き、素手でお結びをにぎってみる。
お味噌汁と玉子焼きの作り方もデモンストレーションする。
↓
3. 交流、質問など
手についたお米は、旨い!
コロナの影響で人との飲食交流が異常なまでに禁止された月日が長かったですね。同じ釜のご飯、みんなで同じ器の水、塩、梅、おかかを使い、輪になって喋りながら、素手でお結びのを握るなんて久しぶり。この楽しさ嬉しさって、とても大事なんだってことを改めて再認識しました。そして、手に一杯にくっついたお米って、お塩も効いてて旨い!
言葉は人の温もりから生まれる
3. 交流、質問など で、ベトナムの方が最後に私たちにお願いしたことは、子供たちとの抱擁でした。祖国にいる自分の子供を思い出したのでしょう。そして、子供たちも嬉し恥ずかしながら抱擁されるのでした。言葉は人の温もりから生まれるのだと実感しました。
まるで家族といるような…
ベトナム人の方からは、
「日本に来て、初めて家族といるような雰囲気だった」
と言ってくださり、子供たちからも楽しかったとの声もあり、私たちスタッフも嬉しい限りでした。そして、教室ではなく居間やサロンのような、言葉、情熱、心を育てる居心地の良い空間つくりを目指していこうと、スタッフ同士で方向性の確認もできました。
次は、どのように継続していくのかが重要な課題です。地域と結びつきながら、そして一つひとつ丁寧に授業を作りながら考えていきます。