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山下達郎と藤井風

藤井風、いわずもがな、若きライジングスターであり、優れたソングライターである。彼のもつシルキーなボーカルスタイルと、まるで熟練のソングライターのような作曲スタイルは、あっという間に世間に受け入れられ、支持された。僕も彼のファンの一人である。
小室哲哉氏以降のミレニアムの始まり、そう十年程まえからはじまったダンスミュージックのトレンドに抗うようなオーセンティックなサウンドが、若い層にも支持されるのは、音楽のトレンドのサイクルが一つの要因かもしれない。suchmos、nulbarich、wonkなどのオルタナティブな若いバンドが広く受け入れられ、出来上がった土壌に登場したのが藤井風である。彼は漸く現れた本物志向のシンガーソングライターとも言える。

藤井風に、優しさ、という曲がある。この曲を初めて聞いた僕の感想は、ああ、山下達郎の甘く危険な香り、が聴きたくなる、だった。メロディの譜割り、甘くノスタルジックな詞と曲調、アレンジは打ち込みのクラッシックなR&Bスタイルであるが、山下達郎の音楽は黒人音楽にルーツを持っているから、類似性は大きい。僕は、優しさ、を21世紀の甘く危険な香り、のように感じたのである。
どちらの曲も甲乙付けがたい。二人の生きる時代も異なり、名曲の概念それ自体も現在は曖昧だからだ。

YouTubeによって、若い世代の音楽家は、新旧問わず、ジャンルを問わず吸収し、才能のある者はグイグイとその芽伸ばしていく。

藤井風のもつセンチメンタリズムとリリシズムは、ずっと日本の音楽家が持ちつづけていた無形財産のようなもの、彼には、思う存分に表現をしてもらって、日本の音楽を定義し直してほしい。そう、山下達郎が、そうしたように。


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