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1回目の発表と「寿限無」(目指せ大学院7)

先月末、全員応募後の1回目の結果発表があった。

 
スペイン時間の朝に発表されるかと思っていたが、午後になってもウェブサイトには何も出てこない。
 
実際に発表されたのは、スペイン時間の午後6時半ごろだったように思う。日本にいる私がサイトにアクセスできたのは、日付が変わった朝の1時半ごろだった。
 

 
昨年はコロナ感染後に気合いでスペイン語の試験を受け、今年の春になってからは急に必要となった英語の試験を大慌てで受けた。その後、英語の資格はそこまで必要なかったことがわかった。少しばかりの間、全部なかったことにしようかなと思ったときがあったが、コメントやスキをくださった皆さまに大いに背中を押して頂いた。この場を借りてお礼申し上げます。


 
さかのぼること2カ月と少し。
第一希望の学科にだめもとで連絡をした。
 

大学時の専攻に基づく優先順位が「その他」だが、是非ここで勉強
したい。可能性は少しでもあるだろうか。


 翌日、なんとその学科の教授からメールが届いた。
 

「その他」にある場合は難しい。
しかし、本学科は定員割れすることもあるため、最後までわからない。全ては今年の応募人数次第。だめもとで、あなたの志望理由を書いてみてはどうか。幸運を祈る!


 学科ごとに必要となる応募書類は異なったが、私の第一希望である学科への必要提出書類に志望動機はなかった。
 
 
こうなったら、なんでもやってみようじゃないか!
 

極めて暑苦しい志望動機をひとまず英語でしたため、その後スペイン語に翻訳した。最初からスペイン語で書くには時間と自信とスペイン語の能力がなかった。そんな人間が秋からスペイン語で勉強するというのだから不安しかないが、今はそんなことを考えている暇はない。何とかなると信じよう!
 
翌朝、志望動機をウェブサイトにアップした。
 


 
大学にメールを送った日、4年前まで日本語クラスに来ていた学生から連絡があった。Sくんだ。高校卒業と同時に引っ越した彼は、今年大学を卒業したばかりだ。地元に帰ってくるため、クラスにまた来たいという。

数日後、近況報告を兼ねて4年ぶりに顔を見せに来てくれたSくんを見て思い出した。
そうだ、彼は私が第一希望とする学科で勉強していたのだ。
 
彼も大学院進学を目指しており、今度は少し違う分野を勉強したいという。大学や卒業論文の話、将来やりたいことについて熱く語るSくんを見ていると、ああ大人になったなあと思う。まぶしい。それでいて、昔からの優しい笑顔はそのままだ。
 
私の大好きなあなたのその笑顔は変わらないなあ!
 
思わずそう言ったら、恥ずかしそうに彼が笑った。
 
何にも変わらないよ!
好きな人と一緒にいると、自然といい顔になるんだろうな!
 

日本語は4年間何も勉強しなかったそうだが、またこうやって連絡をくれたことが嬉しい。
 
  
そんなことを思っていたら、Sくんが突然大声で叫びだした。
 
 
「寿限無 寿限無 五却のすりきれ. 海砂利水魚の……長久命の長助!!」
 
呆気にとられている私を前に、Sくんは「寿限無」の一節をひとつも間違わずに唱えて見せた。
 

「4年ぶりだ!4年ぶりに言ったのに覚えていたよ僕!!!」
 
当時、クラスで「寿限無」を勉強した。
その年の発表会で彼は浴衣を着て一席披露したのだった。
 
あれを覚えていたのかあと感動した私は、Sくんをぎゅうとして髪をごしごし撫でた。
 
 
次は黒いパンツを履いてこないよ。アンダルシアの日中に黒いTシャツと黒いハーフパンツなんかありえない。焼いてください、と太陽に言ってるようなもんだ!
 
そんなことを言いながら、Sくんは帰っていった。
 

 

先月末、アンダルシアの公立大学応募をひとまとめにしているシステムからメールが届いた。

 
そこには、第二希望の学科に合格と書いてあった。
シティライフが実現できそうな大学の。
 
第一希望は、残念ながら今回も評価対象にはならなかったようだ。
「その他」の壁は高い。
 
 
ウェブサイトにアクセスすると、結果の詳細が読める。
 
第一希望の学科の結果欄を見る。
今回も評価こそされていないが、優先順位の分類が「その他」から「低」へ変更されていた。

これは!

 
また、今回この学科に合格したのは、優先順位が「高、中、低、その他」のうち、「中」までの人だったことがわかった。
 
9月にある2回目の発表時に評価対象となるかはわからないが、「その他」から「低」に上げてもらえたのは、暑苦しい志望動機のおかげかもしれない。だめもとでも、もうしばらくねばってみようではないか。
 
ウェブサイトには、第二希望に入学するか、第一希望を優先して9月の2回目の発表まで待つかを選ぶようにと書いてある。これを3日以内に決めなければならない。
 
第二希望は、数万人が待機すると言われる人気の学部であり、そこに合格したのは大変ありがたいことだ。そちらに行った方が確実に仕事につながると、スペイン人からも大学時代の教授からも口を酸っぱくして言われている。
 
「この学部に入れば、あなたの人生がようやくリセットされますね」
 
そんなメールを大学時代の教授からもらった。

 
リセットってなんだろう。
 

私が興味を持っているのは、エルサレム、スペインと住んできて改めて勉強したくなったある分野だ。「そんなものを勉強しても仕事はない」と、いろんな人から言われている学科でもある。
 
 
3日後、予想通りというか私らしいというかなんというかわからないが、先生たちが「こっちにしなさい」というものの逆を選んでしまった。


 
9月まで第一希望の可能性を待ってみる。
 
それで無理なら、今回は第二希望の学部へ!

ともかく前へ進もう。


先週、Sくんから卒業論文が届いた。
当たり前だが全部スペイン語で書いてある。
60ページぐらいあるそれを読むのが、秋から始まる大学院に向けてのスペイン語準備となりそうだ。
 
にゃー!

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