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日本茶エンカミーノ

窓を開けて
朝を胸いっぱいに吸い込む。

まだ何ものにも侵されていない地面から立ち上る香り。

深呼吸して
体内の空気を入れ替えた後は
空の写真を一枚撮る。

日本の友人が言った。

「気持ちに余裕があるかは、空を見られるかどうかでわかる」

なるほどそうかと
空を見上げて今日はどうだろうと自分に問いかけることにしている。

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今日の空は、こんなだった。

日が昇るのが遅くなってきたのか、7時過ぎはまだこんな感じだ。

刻々と変化していく空模様を見ながら煎茶を飲むのは何と贅沢なことだろうと思う。


我が家の煎茶ストックは、この間ゼロになった。
通常、夫の日本茶ストック箱には、煎茶、玄米茶、ほうじ茶、番茶、3年番茶、そば茶、ごぼう茶、麦茶、黒豆茶などがぎゅうぎゅうに詰められている。煎茶8.5、その他のお茶1.5の割合で、圧倒的に煎茶が多い。

隣の箱には、紅茶、モリンガティー、カモミールティー、ミントティーなど。
小さなお茶屋さんが開けるぐらいある。

これらは夫の宝物だ。

そして、ときどき彼は日本茶が入ったその宝箱を出して来る。

用もないのにお茶の袋をひとつずつ取り出して並べる。

大体夜の10時ごろから始まる。

「これは静岡のお茶屋さんで買いましたねぇ」

「あのお茶屋さんの社長さんからはカレンダーまで頂いたんですねぇ」

「これを買うときにはとても迷ったけれど、買ってよかったんですねぇ。まだ封を開けてないけれど、特別な時に飲もうと思っているんです」

「そうそう、400gでそんなに安くていいの?ってお店の人に聞いたでしょう。でも本当においしかったんですね。だから日本の友達にもおすすめしましたよね」

ひたすらお茶に話しかけている。
そしてお茶の話をするときは、日本語になる。

「ここにあるお茶には一つ一つストーリーがあるんです」

茶葉を愛でながら言う彼の前で、
煎茶の話は最近はしないようにしていた。



一昨日、日本の友人からメッセージが来た。

「今日お茶送っておいたから」

何度も携帯の画面を確認した後、夫を呼ぶ。

友人のメッセージを見て涙目になった夫は、
ありがとうありがとうと携帯に向かってお辞儀をしていた。


「でも、煎茶だったっけ。実は何茶を入れたか忘れちゃったんだけど、日本茶なのは確かだよ!」

とのメッセージに

「せ、煎茶じゃないかもしれないのですか!」

とあせっていたけれど、実際に届いたらそれは大事に大事に頂くに違いないと思う。

そして、そのお茶は「Nちゃんのお茶」として夫によりまた新しいストーリーが語られるのだろう。



何事もなければ一週間で届くはずだという。

おそらくこれから毎朝何度もポストと家を往復する夫の姿が見られることだろうと思う。

ありがとう、Nちゃん。


日本茶en camino、ただいまスペインへ向かい中。

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