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きもの本棚⑱『お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖』を参考に、単衣と夏物の準備をする

令和五年の猛暑を受けて「単衣着物の先取り」がトレンドである。気に入った着尺を選んで「袷にしますか、単衣にしますか?」と選択するケースとはまた、違った感覚の「単衣向きの薄い布」だ。

お馴染みの「楊柳」や「本塩沢」の他にも、シボを目立たせない、透け過ぎない織りの工夫が様々、生まれている。私が「円居」で誂えたのは「江紋屋」のお品物で、シボの入った縮緬。夏用だけど、四ヶ月着られるタイプ。地の色は紫がかった黒。『美しいキモノ・夏号』で「2大旬カラー」としてクローズアップされている。これ着て、セレモニーに出てみたい。なんのアテもないけれど……。ちなみに、江紋屋さんの単衣用は両面染めてあって、八掛が着いているように見える。チラ見しても「あら、あの人単衣だわ」とバレない。早足で歩けばチラ見はするけど、やはり、お茶向きかな?

単衣着物用の帯をフォーマルで探すなら思い浮かぶのは、金糸の入った「絽綴」。九寸なら「紗の袋帯」やマルチな「紗の博多」。単衣着物には袷用の帯、単帯、夏用の帯を全部使える。写真の単帯は「博多」なのかな? 「綴」も「博多」も金糸が入ったり、なかったりするし、路目があれば夏帯だ。

『お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖』淡交社

では、小物はどうすればと、混乱する。

袷の帯には袷用の半衿(塩瀬)、夏用の帯には主に絽の半衿だ。塩瀬と絽の間に楊柳(きんち)や絽縮緬。例えば博多織の帯なら、まずは楊柳。その後、絽縮緬。そして、夏用の絽。帯替えて〜、小物替えて〜。また、帯替えて〜と、忙しない。そして、夏用の帯に合わせて買った帯揚げが、通年の博多織の帯にはしっくりしないぞという事態が発生し、帯揚げをまた、一枚。

では、目線を変えて、お茶をやるには何枚着物があれば良いのだろう? 参考にしたのは淡交社から出ている『お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖』。

非常に見やすい本だ。著者の北見雅子さんの生家は丹後ちりめんの織元だそうで、茶道は裏千家。この本では、お教室でのお稽古は紬だ。ただし、お教室のお稽古にも「初釜」「初風炉」「炉開き」のセレモニーの日があって、フォーマルを着る。「訪問着」か「紋付色無地」だ。お寺など、お教室の外が会場の「大寄せ」もフォーマルだ。催しのテーマや季節を意識したコーデを楽しむ欲が出ると、沼が深くなる。

普段のお稽古用に一枚、色無地が一枚、袷と単衣で四枚必要だ。設定に合わせて「紋なしの色無地or江戸小紋・五役」「仲間内のイベントで着る飛び柄小紋」「水屋のお手伝いの日のフォーマル」があると安心だ。茶道は、お菓子や掛け軸などのしつらえを楽しむ場であるからして、装いも合わせたい。そして、延々と着物が増えていく。

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