天使・前々夜『小さくても奇跡しかいらん』

これも、古川日出男の『gift』っていう短編集に影響されて書いた気がする。
今、読んだら、わてぃの人生そのものを現していたな。確か、勉強会のパンフに印刷したんやけど、全く、誰も触れずに終わったわ。笑い。


袋小路だった。追い詰められた。私じゃなく、ねずみ。私の前を走っていたねずみが、私の前を走っていた猫に追い詰められた。厳密にいうと、私の前を走っていたというより、私は彼らを追いかけていた。
猫がねずみをいたぶるシーンがみたいという、ただの欲望だった。
でも、ちょっと考えて、それはそれで血生臭いからヤダな、とも思った。
生臭い感じがしたらすぐに去ろう、と思っていた。
とりあえず、こちらに背を向けている猫と、ジリジリした顔で猫を見ているねずみを写メールで撮らなきゃ!そう思って、鞄に手を入れ、携帯電話のストラッブを掴み取り出そうとすると、ストラップの紐に飴ちゃんが引っ掛かり転がり落ちた。

それは、丸い飴をセロハンで包み、両端をひねった、昔の飴ちゃんだった。しかも塩胡麻味。
あぁっ、ばか!なにやってんだ、私。こんな緊迫したシーンで!

猫が飴ちゃんに気付いた。猫は飴ちゃんに近づき、匂いを嗅ごうとしている。

おぉ!なるほど!ナイス私!
ねずみ!今のうちにはよ逃げろ!

興奮しながら、袋小路の隅にいるねずみに視線を移そうとしたら、黒い固まりが視界をよぎった。

あ!ねずみ!
ねずみ、逃げんと、猫と一緒に飴ちゃんに興味持ってもうた。
あほか。お前は。
せっかく、私が助け舟だしたったのに!偶然やけど。

猫とねずみは塩胡麻飴ちゃんを挟んで向かいあってる。
猫が飴ちゃんをくわえようとした瞬間、ねずみが猫の鼻を噛んだ。
へげっ!つった。
ねずみ、私の右側、通って逃げよった。
『窮鼠、猫を噛む』や!思た。
ちょっと意味ちゃうような気がする思たけど、もう、次の瞬間には眠りに落ちとったわ、私。

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