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薄型信号機

梅雨の合間に太陽が覗き、湿度でアメンボが宙を舞いそうなクソ暑だるい昼間のこと。

洗車して2週間経った車でガタガタの道路を走る。
気晴らしにつけている芸人のラジオが何て言ってるのか分からない。

かと思いきや急に綺麗に整備された道路に出る。
広くて、整備されていて、ど定番チェーン店がポツポツと現れる。最近の流行りか知らんけど、やけに薄型の信号機が「私光りたてです!」といった顔で青を強調している。
チンタラ走る軽トラの中にこれまたポツポツと最新の軽自動車が入り乱れて走る。
ああ、僕は地方に生かされているなと感じずにはいられない。
この「地方」という何もない空間に現れる都会的なデザインの新しい車や信号機がたまらなく不釣り合いだ。
CMの車はかっこいい石畳の街や都会の高速や大自然の山を走るのに、僕らが走るのはこの、餃子の王将、洋服の青山、マクドナルド…看板がいくつも並ぶだけの何もない整備された広すぎる道路ばかりだ。
僕もオシャレ車ユーザーなのでたまに恥ずかしくなる。中古のボロい軽自動車がこの町のドレスコードな気がしてならない。

15時過ぎ
こんな時間に本日初の食事。午前中はこの雨と晴れの間のアホ気圧で動けなくなっていて体調が回復したかと思えばこんな時間。
チェーンの何の変哲もない店に入るとこの世の終わりみたいな顔したおっさんが一人だけ。ちゃんぽんをすすっている。
おっさんからすると僕もこの世の終わりのように見えるのだろうか。仲間意識が芽生えて同じメニューを注文してやった。
待ち時間にnoteを眺める。偶然起きた面白エピソードの記事を眺めては「都会では本当にこんなことが起きるのか」と疎ましく思う。こちらは現に薄型信号機一本でnoteを書いている。努力をもっと褒めてほしい。

ガタガタした道を戻る。
「えー、続いて大阪市のラジオネームまんじゅう。昨日…」

ガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!!

「わはははははは、何だよこれ面白えな!!!」

1人で車に乗っていたはずが急にアウェーを感じてしまい、音楽を流すことにした。
これからも音楽だけは僕をアウェーにしない。


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