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「可能性は五分五分」だけじゃ分からないこと

 「次の試合で日本代表が勝利する確率は五分五分」という予測、その導き出し方で2種類に分けるとこができます。

情報の五分五分
精緻な情報を元に分析した50%という確率を導き出したケース
未知の五分五分
知識、情報が全く無いから五分五分と言ってるケース

 「どっちも結果的に五分五分なんだから一緒」と思いますが、人間は予測する時に「情報の五分五分」の方を好む傾向があります。

 この傾向、経済学者のエルスバーグが実験を行い、論文で発表したことからエルスバーグの逆説と呼ばれています。

エルスバーグの実験

 エルスバーグがやったとされている実験を簡単に紹介してみます。

色当てゲーム

 壺から1つ玉を取り出し、その色を当てたら一万円進呈というゲームをみんなにやってもらいます、ゲームに使う壺は2種類あります。

情報の壺 : 合計100個  (赤玉 50個、黒玉 50個という情報有り)
未知の壺 :合計100個   (割合は不明、赤玉黒玉の割合は未知)

情報の壺を使った実験

 ゲームの参加者は予測する時、赤玉、黒玉を大体半々で選び、どっちかを好む傾向はありませんでした。

こちらは情報の五分五分に基づく判断です
赤黒の割合は五分五分だから、どちらの玉を選んでも一緒という判断ですね。

未知の壺を使った実験

 こちらも同じく、ゲームの参加者は予測する時、赤玉、黒玉を大体半々で選び、どっちかを好む傾向はありませんでした。

こちらは未知の五分五分に基づく判断です
情報が全くないから、どちらの玉を選んでも一緒という判断ですね。

情報の壺と未知の壺を使った実験

 ここまでの実験では2つの壺でゲーム参加者の行動に全く違いはありません。

 ゲーム参加者にとっては五分五分という情報だけが重要で、それが情報の五分五分なのか未知の五分五分なのかは意思決定に全く影響が無いようにみえます。

 しかし実は違いがあることが、この実験で明らかになります。

 今度はゲームのルールを少し変え、参加者に「情報の壺、未知の壺、どちらか好きな方を選んで玉を取り出して下さい、赤玉の場合1万円差し上げます」と伝えます。

 このルールにした場合、圧倒的多数の人が情報の壺を選択するという結果になりました。エルスバーグはこの違いを意思決定理論で使われるリスク不確実性という言葉を使って説明します。

リスクと不確実性
リスク  : データから確率が計算できる状況 (情報の壺の五分五分はこちら)
不確実性 : 確率が不明で計算できない状況  (未知の壺の五分五分はこちら)

 エルスバーグはこの実験結果を「人間のリスクよりも不確実性を回避しようとする傾向」を示すものであると結論付けています。

 以上、エルズバーグの逆説のお話でした。

なぜ逆説とよばれるのか?
意思決定理論で使われる期待効用理論では説明出来ない現象だったので逆説(パラドックス)と呼ばれています。

Photo by Victor on Unsplash


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