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【現場スタッフ編⑦】

・損害賠償とは(必要な判断基準)

 損害賠償と聞くと、むずかしそうだなぁ、とか、なんか大袈裟じゃない?と思われるかもしれません。案外身近にあるもので、交通事故もそうですし、人の物を壊した、愛犬が人を噛んでしまった、なども賠償、弁償を求められることがあります。
 
 この損害賠償ですが、大原則をご存知でしょうか?


「誰も得をしない」です。

 関わった人の中に、得をしようとする人がいると話がこじれます。
損害賠償とは、被った損害(マイナス)を元(イーブンライン ±ゼロ)に戻すところまでです。

「得」をするとは、ゼロより上、プラスαを求めることです。

 マイカーに乗っていて信号待ちをしていました。後方から来た車両に追突され、自車の後部バンパーが破損しました。幸い怪我はありません。

 この場合の正当な損害賠償請求は?

 そうです、「破損した後部バンパーの修理をしてもらう」です。
 
 このマイカーが1か月前に納車したばかりの新車で、「今日納車から乗ったのが2回目だ、新車で早々気分悪いし縁起も悪いから、修理ではなく新車にしてくれ」といった場合は?

 正解です。過剰要求となります。気持ちはわからなくはないですが、納車して2回目とはいえ、機械物は時間の経過とともに減価償却がかかります。要するにりっぱな中古車で、新車ではありません。価値(価格)は下がってしまっています。

 クレーム対応において必要な判断基準は、

「約束(契約)を守れていたかどうか」です。
 
 お饅頭を10個販売したとします。こちらのミスで3個が不良品でした。購入したお客様から、不良品3個の返品交換か、商品が無ければ3個分の返金要求がありました。これは正当な損害賠償請求ですね。お饅頭10個の約束が守れていません。3個分についてのみ対応します。
 
 では、お客様から、「そちらのミスでこうなった、嫌な思いをした、全額返金しろ」または、「そちらのミスだが、わざわざ持って来てやった。往復の交通費を出せ。出張先から戻って来たから、新幹線代とタクシー代を出せ」はどうでしょうか。
 
 もちろん過剰請求です。お持ちいただいたことは、ご足労おかけしましたが、お客様ご自身の判断です。また、遠方からというのも、疑うわけではないですが、本当かどうかわかりません。
 
「約束(契約)を守れていなかった部分のみ対応します」

 ここがゼロラインで、線を引くところです。プラスαを与えてはいけません。こちらに多少なりとも非がある場合、お客様に押し切られ、つい「今回だけは」「お客様だけです」などの対応をしがちですが、これは「企業の社会的責任」に反する行為です。
 「企業の社会的責任」とは、お客様によって対応を変えてはいけない、ということです。

 また、こういう対応をしていると、お客様が「得」をしたと感じます。「得」をするとどうなるか、味をしめます。味をしめると繰り返します。間違った対応はクレーマーを育ててしまいます。

 「約束(契約)を守れていなかった部分についてのみ対応する」ことで、どのお客様に対しても公平に対応することが出来ます。

 (もし、不良品や破損品がある場合は必ず現物確保をしてください。)
破損した物がガラス・陶器などの場合、「お怪我はありませんでしたか?」と気遣いの言葉をおかけしましょう。
 
 もう一つ予備知識として、賠償予定は対応不要と覚えてください。
どういうことか?
 
 例えば、先ほどのお饅頭10個の箱にこちらの不手際で異物が混入していたとします。
「こんなものが入っていたぞ、どういうつもりだ。もしうちの子が食べていたら、とんでもないことになっていたぞ、どうしてくれるんだ。」このように言われ、騒がれたりすると、はやく収めないと、という思いと、こちらにも非があるから、と間違った対応をしがちです。

 落ち着いてください。

 まだ、「食べてません」

 なので、謝罪はしても、損害賠償請求を受ける道理もありません。
 

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