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佐野元春│GREATEST SONGS COLLECTION 1980-1984│収録バージョン事前検証

2020年9月23日にリリースされる佐野元春のベスト・アルバム「MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004」について、その収録曲のバージョンを事前に検証してみようという記事である。

というのも、佐野元春の楽曲の中には既に何回もコンピレーション・アルバムに収録され、いくつもの別バージョン、別ミックスが存在するものが少なくなく、今回のベストに収録されるバージョンが過去のどのバージョンと同じなのか、あるいはまたしても新しいバージョンが爆誕したのかは、マニアを自称するオレとしては検証しない訳に行かないからだ。

しかしながら、今回のベストは3枚組48曲入りであり、リリースされてから1曲ずつ仔細に聴きこみ、過去のバージョンとの異同を確認する作業が結構大変なものになるのは容易に懸念されるところである。1日1曲やっつけても2か月近くかかるのだ。Mein Gott!!

そこで、アルバムのリリースまでまだ3か月以上時間があること(これ書いてるのは6月13日)、既に曲目だけでなくバージョン名まで発表されていることから、事前にそのバージョン名を頼りにアルバムに収録される可能性のあるバージョンを予想し、ある程度絞りこんでおこうということである。

ていうかそういうのが好きなので趣味的にぼちぼちやって行く。もし認識違いがあれば是非指摘して欲しいし、異論も聞かせて欲しい。

まずは「DISC ONE : MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-1984」からスタートする。

track#01 アンジェリーナ 

'99 mix version

知名度の高いデビュー曲だし発表からの歴史も最長なので当然なのだが、この曲はライブ盤も含めればこれまで実に19枚のアルバム、シングルに収録され、スタジオ音源だけでも4種類のバージョンが知られている。

オリジナルは大村雅朗アレンジによるイントロのサックスが特徴的なよく知られたシングル・バージョンだが、その他に、オリジナル・バージョンのサビ(「今夜も愛を探して~」の部分)の繰り返しを一部カットして編集し直したバージョン、「VISITORS TOUR」で演奏されたスロー・バージョンをスタジオ録音したバージョンなどが存在している。

ここに収録された「'99 mix version」は、1999年にリリースされたアルバム「The 20th Anniversary Edition」収録の渡辺省二郎による同名のリミックス・バージョンと見て間違いないだろう。テイクはオリジナル・バージョンと同じだが、ギターを前面に押し出したロック色の強いミックスに仕上がっており、オリジナルと聴き比べると違いがはっきり分かる。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り「The 20th Anniversary Edition」収録のバージョンと同じもの。

track#02 ガラスのジェネレーション

Additional recorded version

2枚目のシングルでありよく知られた曲。この曲に関しては微妙なミックス違いや編集して尺をいじったバージョンなどはほぼなく、オリジナルのシングル・バージョンが、アルバムにも、その後のコンピレーションにも収録されてきた。それだけオリジナル・アレンジの完成度が高く、曲としっかり一体になっているということなのかもしれない。

唯一の例外が2006年リリースのベスト・アルバム「THE SINGLES EPIC YEARS 1980-2004」にボーナス・トラックとして『ガラスのジェネレーション2006』のタイトルで収められた「Additional recorded version」で、このアルバムに収録されているのはこのバージョンだと思われる。

これはオリジナル・バージョンの佐野のボーカルだけを残し、バッキング部分をHKBによる演奏と差し替えたものということで、ある意味座興のようなもの。この曲の、ある特別な時期だけに見られる才気の輝きには、HKBのこなれた演奏よりは、やはりオリジナルの歯切れのよいアレンジの方が似つかわしいと思う。

【リリース後の答え合わせ】
「THE SINGLES EPIC YEARS 1980-2004」に収録された追加レコーディング・バージョンのうち、曲が始まる前の「Take2!」などの佐野の声やカウントを約8秒分ほどカットしたもの。このバージョンは2012年のコンピレーション「SOUND & VISION」に収録されたものと同じ。

track#03 スターダスト・キッズ

Additional recorded version

古いファンにはアルバム「No Damage」のオープニングとして印象に残っている曲。この曲はもともと1981年にシングル『ダウンタウン・ボーイ』のフリップ・サイドとしてリリースされたが、B面にしておくにはもったいないポップな楽曲であるとの判断で1年後にシングルA面として再リリースされた。

その際、原曲のトラックにいくつかの追加レコーディングを行い、イントロのブルースハープもサックスに差し替えられた。「No Damage」に収められたのはこの追加レコーディングを行ったシングルA面バージョンであり、このアルバムの「Additional recorded version」もそれと同じものと思われる。

ところで「Additionally recorded」じゃないのかなあ。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り1981年にシングルA面としてリリースされたバージョンと同じもの。「Additional recorded」という表記は『ガラスのジェネレーション』ともども英語として座りが悪くてムズムズするが修正されなかった。

track#04 ダウンタウンボーイ

’99 mix version

この曲は最初にシングルでリリースされたが、その際の録音状態がひどかった。このバージョンを聴くにはアナログのシングルを手に入れるしかないが、実際低域の迫力も高域の伸びもない、中域ですべての音が団子になったモコモコの状態で全体がひと塊になって転がって行く。このオリジナル・バージョンをいかにリカバーするかというのがその後の大きなテーマであった。

オリジナル・バージョンの仕上がりに納得できなかった佐野は、アルバム「SOMEDAY」では録音をやり直した。サックスのリフをイントロにフィーチャーしたこのバージョンは、多くの佐野ファンにもおなじみのものだが、その後のコンピレーションには一切収録されていない。

シングル・バージョンはまず1990年の「Moto Singles 1980-1989」というコンピレーションで阿部保弘がリミックスを試みている。セパレーションを改善したバージョンは、軽機関銃のように小気味よいスネアの音や強調されたハモンドの音色などに特徴が見られ、何とかCDに乗せられる音質に仕立てた。

1999年にリリースされた「The 20th Anniversary Edition」では渡辺省二郎が新たにミックスを手がけた。ここでは大胆にトラック間のバランスが調整され、奥に引っ込んでいたボーカルを前に引っ張り出すとともに、ギターにはコンプレッサーのような加工がされたようにも聞こえ、スネアやイントロのスライドに深めのリバーブがかけられているように思われる。音圧も高められ、はっきりした特徴を持ったミックスになっている。今回のアルバムに収録されているのは、バージョン名からこのときのものだろう。

2002年の「SOMEDAY Collector's Edition」では渡辺が再びミックスを変更している。99年のバージョンで特徴的だった深めのリバーブやギターのエフェクトは取り払われ、全体にすっきりと整理された仕上がりになっている。

2006年の「THE SINGLES EPIC YEARS」では、シングル・バージョンのミックスはそのままにリマスターのみを行ったと思われるバージョンが収録されている。CDで聴ける中では最もオリジナルに近いもので、全体に中域に音が寄ってモコっている感は否めず、ボーカルやドラムが引っ込み気味なのはオリジナルの通りだが、リマスターによってひとつひとつのトラックの輪郭がくっきりしている。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り「The 20th Anniversary Edition」収録のバージョンと同じものだと思うが、いろいろ比べて聴いてるうちにどれがどのバージョンなんだか分からなくなってくるのでほどほどにしといた方がいい。

track#05 情けない週末

Original version

いきなり「Original version」と書かれるとそこで話が終わってしまうが、一応見ておくと、この曲は1980年のデビュー・アルバム「BACK TO THE STREET」が初出であり、その後コンピレーション・アルバム「No Damage」(1983年)に収録されたことでファンの間でもポピュラーになった。

この曲には1991年にコンピレーション・アルバム「Slow Songs」に収録される際、新たに豪華なストリングスをバックにレコーディングされた「Full Orchestra Version」が存在するが、このバージョンは他のコンピレーションには収められておらず、「Slow Songs」でだけ聴けるものとなっている。

ファンの間では人気が高く、「No Damage」「Slow Songs」の後も、「THE LEGEND」(2003年)、「The Very Best」(2010年)、「SOUND & VISION」(2012年)、そして今回の「GREATEST SONGS COLLECTION」と、アルバム曲としては異例の、多くのコンピレーションに収録されているが、「Slow Songs」を除いてはすべてオリジナル・アルバムと同じバージョンが収められており、ミックス違いなどは存在しない。今回のコンピレーションに収められたのもオリジナル・バージョンだと考えていいだろう。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りアルバム「BACK TO THE STREET」収録のオリジナル・バージョン。

track#06 モリスンは朝空港で

'00 mix version

シングル『グッドバイからはじめよう』のフリップ・サイドとして1983年にリリースされたが、同年のコンピレーション「No Damege」に収録されたことでファンの間でもポピュラーになった曲。収録にあたっては次の曲とのつなぎのためにエンディングのフレンチ・ホルンの音だけをフェイドアウトから残すというリミックスを行っている。

その後、2000年にリリースされたコンピレーション「GRASS」に渡辺省二郎のリミックスで収録されており、今回のアルバムに収められたのはこの時のバージョンと思われる。但しオリジナルとの際立った違いはないように思われ、両方を聴かされても多分区別がつかないと思う。

なお、2012年リリースのコンピレーション「SOUND & VISION」にはオリジナル・バージョンが収められている。

ところでこの曲に関して困るのは、プレイリストを作るときに使えるバージョンがないということ。オリジナルはアナログだし、「No Damege」のバージョンは先に書いた通り次の曲とのつなぎのためアウトロがいじられている。「GRASS」収録のバージョンはシークレット・トラックとつながっていてこの曲単独で抜き出せない。結局「SOUND & VISION」しかプレイリストに使える音源がないのである。

その意味では今回「'00 mix version」が単独で収録されたのは何気に価値が高い。

ところで、タイトル表記はもともとは「モリスンは朝、空港で」と読点が入っていた。こういうところをないがしろにするのは本当にやめて欲しい。「朝空港」って何なんだよ、まったく。「昼空港」とか「夜空港」とかあんのかよ。

【リリース後の答え合わせ】
バージョン名が「'00 mix & radio edit version」に変更され、「GRASS」収録のバージョンのフェイド・アウトを早めて40秒ほど短縮した新たなバージョンが収められた。なお、曲名の表記も『モリスンは朝、空港で』と読点を追加して修正されている。

track#07 シュガータイム

Radio edit version

今回のアルバムではこの「Radio edit version」というバージョン名が11曲で使われている。一般に「Redio edit」というのはラジオでの放送のため長い曲の一部をカットして短く編集することを言うようであり、ここではその前提で、従来「Short edited version」などと呼ばれてきたバージョンとの異同を確認することになる。

この曲は1982年4月にまずシングルとして発表され、その2ヵ月後にはアルバム「SOMEDAY」に収録された。シングル・バージョンとアルバム・バージョンは同じテイクではあるが、1分48秒あたりのブレイクでの佐野のささやきが、シングルでは「I love you」であるのに対しアルバムでは「I need you」に。この違いは佐野自身も言及しているのでよく知られている。

その後、シングル・バージョンの方は「No Damage」(1983年)、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)に、アルバム・バージョンの方は「THE LEGEND」(2003年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められている。年季の入ったファンなら、この曲を聴くときにはまずそこを確かめるクセがついているはずだ。

逆に言えばこれくらいしかバージョンのバリエーションがないということでもあるのだが、2006年のコンピレーション「THE SINGLES EPIC YEARS」のみ、中間部を大胆にカットしたショート・バージョンが作られており、今回のコンピレーションに収められたのはこのバージョンではないかと思われる。

この曲は概ねAABABAという構成になっており、オリジナルでは4分余りの長さだが、ショート・バージョンはAABAという構成で1分以上短くなっている。ちなみにブレイク部分のささやきは「I love you」となっていて、シングル・バージョンを編集したものだということが分かる。

なお、2002年の「SOMEDAY Collector's Edition」にはシングル・バージョンのモノラル・ミックスが収録されている。

【リリース後の答え合わせ】
「THE SINGLES EPIC YEARS」収録のショート・バージョンから、さらにアウトロをフェイド・アウトにしてサイズを縮めた新ショート・バージョンが収録された。この曲はカット・アウトに慣れているので最初に聴いたときはかなり驚いた。

track#08 ハッピーマン

’99 mix version

アルバム「SOMEDAY」が初出、その後シングル・カットされた。「No Damage」(1983年)、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「THE LEGEND」(2003年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)など多くのコンピレーションに収められているが、どれもオリジナル・バージョンである。

唯一の別バージョンがここに収められた「'99 mix version」であり、これは2006年の「The 20th Anniversary Edition」収録時に渡辺省二郎が手がけたミックス。ギターの音が前面に出るなど、大胆にバランスをいじったミックスで、今回のアルバムに収録されたのはこのバージョンだと思う。

【リリース後の答え合わせ】
バージョン名が「'99 mix radio edit version」に変更され、「The 20th Anniversary Edition」収録の渡辺省二郎によるリミックス・バージョンの1番と2番の間の短い間奏を4小節カットし7秒ほどサイズを縮めた新しいバージョンが収録された。

track#09 悲しきレイディオ

’20 re-mix version

アルバム「Heart Beat」が初出。ステージでもよく演奏され、ファンの間ではポピュラーな曲だが、シングル・カットはされていない。

これまで「THE LEGEND」(2003年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収録されているが、いずれもオリジナル・バージョンであり、これまでオリジナル以外のバージョンは知られていない。

今回のアルバムに収録されるのは「'20 re-mix version」とアナウンスされており、その名の通り新たにミックスされたものとのこと。今さら新しいミックスが要るのかという気もしないではないが、どんな音を聴かせてくれるのか楽しみだ。

それにしてもタイトル表記の「レイディオ」は違和感あるわ(発表当初は『悲しきRADIO』)。

【リリース後の答え合わせ】
渡辺省二郎による新しいリミックスで収録。楽器のバランスや音色が微妙に変更されている他、ラストのカット・アウトがフェード・アウトに変更され20秒弱短くなっている。加えてボーカル・トラックがオリジナルとは異なるのではないか。「君は踊っている」の語尾がオリジナルとは明らかに違っている。

track#10 彼女

Re-take 1991 version

この曲もアルバム「Heart Beat」が初出。初期の代表的なピアノ・バラードである。

1991年のコンピレーション・アルバム「Slow Songs」に収録するにあたって、前田憲男のアレンジで新たに録音し直された。今回のアルバムに収められているのは、バージョン名からしてこのときのものだと思われる。

ボーカルが淡々とささやくようなスタイルになっていることや、ストリングス・アレンジなどにやや特徴があるものの、全体としてはオリジナルに忠実に再録した印象。ピアノは佐野自身。マスターの保存状態がよくないためリテイクしたと説明されていた。

なお、このバージョンは2000年のコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」にも収められている。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り「Slow Songs」収録のバージョンと同じもの。

track#11 サムデイ

Original version

1981年にシングルで発売、1年後に同名のアルバムに収録された。ライブも含めれば20近いリリースに収録されているが、基本的には当初のオリジナル・バージョンがその後もそのまま使われている。アレンジも「込み」で完成してしまっている曲であり、ミックスをいじる必要もないということだろう。今回のアルバムにもこのオリジナル・バージョンが収められていると見て間違いないだろう。

とはいえ、この曲にも別バージョンがない訳ではない。ひとつは1983年のコンピレーション「No Damage」に収められたバージョンで、曲間を詰めるために、曲の冒頭、キックのフィルが入る前の1秒程度のホワイト・ノイズがカットされている。まあ、マニア以外にはどうでもいい世界だろう。

2000年にリリースされた「The 20th Anniversary Edition」には渡辺省二郎による新しいリミックスが収められている。フェイド・アウトを長く取り、オリジナルでは聞こえなかった佐野のシャウトが聴けるという触れ込み。この曲にここまで手を入れたのはこの時だけだし、このミックスはこのコンピレーションでしか聴けない。

しつこいようだが『サムデイ』という表記はすごく気持ち悪い。僕にとってはこの曲のタイトルは『SOMEDAY』以外にあり得ない。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りオリジナル・バージョンがそのまま収録された。冒頭のノイズもカットされていない。

track#12 ロックンロール・ナイト

'99 mix version

初期の代表曲のひとつで、アルバム「SOMEDAY」の白眉。8分半に亘るロックオペラ的な大作であるため、シングル・カットされていないのはもちろん、コンピレーション・アルバムにもあまり収録されておらず、2000年にリリースされた「The 20th Anniversary Edition」に収録される際、渡辺省二郎によってリミックスされたものが唯一の別バージョンである。

今回のアルバムに収められたのはその「'99 mix version」でオリジナルに比べるとひとつひとつの楽器の音がそれぞれ際立って前に出てくるようなリミックスとなっている。またボーカルにも特徴的な処理が施され、ディレイによってダブル・ヴォイス的な効果を聞かせる。

これ以外には「THE LEGEND」(2003年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められているが、いずれもオリジナル・バージョンである。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り「The 20th Anniversary Edition」収録の渡辺省二郎によるリミックス・バージョンが収録された。

track#13 グッドバイから始めよう

Original version

1983年にシングルでリリースされたのが初出だが、オリジナル・アルバムには収録されていない。ストリングスをバックに歌うスロー・バラード。

その後、「No Damage」(1983年)、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「Slow Songs」(1991年)、「THE LEGEND」(2003年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)など多くのコンピレーションに収録されてきたが、例外なく当初シングルのままのオリジナル・バージョンが使われており、別バージョンは発表されていない。

今回のアルバムでもやはりオリジナル・バージョンがそのまま収められているようだ。タイトル表記で「始めよう」と漢字で書かれたのは今回が初めて。何か意図があるのか、あんまりそこを重要視してないだけなのか。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通りオリジナル・バージョンが収録された。曲名の表記も『グッドバイからはじめよう』とひらがなに修正されている。

track#14 コンプリケーション・シェイクダウン

Radio edit version

この曲はアルバム「VISITORS」が初出で、その1か月後に7インチ・シングル、12インチ・シングルの2つのメディアでシングル・カットされた。12インチ・シングルの方は「Special Extended Club Mix」というバージョン名を冠せられた8分近いクラブ・ミックス(リミックスはジョン・ポトカー)。

この時僕は気がついていなかったのだが、実は7インチ・シングルの方もアルバムに収められたオリジナル・バージョンとは異なり、最終部分のリフレインの回数をカットしてオリジナルより30秒ほど短くした別バージョンだったのだ。

途中の曲構成はまったく変わらないので分からなかったが、確かに聴き比べればシングル・バージョンの方がリフレインの回数が少ない。今回のアルバムに収録されるのは「Radio edit」とされており、やはりこの短く編集されたシングル・バージョンではないかと思う。 このバージョンは7インチ・シングルの他、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「The 20th Anniversary Edition」(2000年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などに収録されている一方、アルバム「VISITORS」収録のオリジナル・バージョンは他には収められていない。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り7インチ・シングル・バージョンを収録。なお、バージョン名がなぜか「Short edited version」に変更されている。「Radio edit version」とどう違うのか、わざわざ変更する意図が不明である。

track#15 トゥナイト

Radio edit version

この曲はシングルが初出。『COMPLICATION SHAKEDOWN』と同様に7インチ・シングル、12インチ・シングルの2つのメディアでリリースされた。12インチ・シングルには7分近いクラブ・ミックスである「Special Extended Club Mix」と、ボーカル・トラックの入らないインストルメンタルが収められた。

その1か月後に発売されたアルバム「VISITORS」にそのまま収録されたが、このバージョンは7インチ・シングルと同じオリジナル・バージョンである。

1990年にコンピレーション「Moto Singles 1980-1989」への収録にあたって、中間部分を一部カットして編集した「Short Edited Version」が作られている。オリジナルは、「イントロ-AABA-間奏-ABA-アウトロ」という構成になっているが、この時のバージョンでは「イントロ-AABABA-アウトロ」とされており、5分強あるオリジナル・バージョンよりも1分弱短い。

その後、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められた時もこのショート・バージョンが採用されており、バージョン名から考えて今回のアルバムでもこのショート・バージョンが使われているものと思われる。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り「Moto Singles 1980-1989」収録のショート・バージョンが収録されている。付属のブックレットでは「version収録」として「7' single」との表記があるが、7インチ・シングルはアルバム「VISITORS」と同じフル・レングスのオリジナル・バージョンであり、この表記は明らかな誤記である。なお、この曲もバージョン名がなぜか「Short edited version」に変更されている。

track#16 ニュー・エイジ

Radio edit version

1984年5月のアルバム「VISITORS」が初出で、その半年後にシングル・カットされた。もともと6分を超える長尺の曲だったが、シングル・カットに際して中間部分をカットし1分半以上短く編集したショート・バージョンが作られた。

オリジナルは「イントロ-AAB-間奏-ABCB-間奏-AB-アウトロ」の構成だが、このバージョンでは「イントロ-AABCB-間奏-AB-アウトロ」と編集したうえ、コーラスの順序を一部入れ替えている。

このバージョンは、「Moto Singles 1980-1989」(1990年)、「THE SINGLES EPIC YEARS」(2006年)、「SOUND & VISION」(2012年)などのコンピレーションに収められている。今回のアルバムにもおそらくこのバージョンが採用されているのではないか。

2000年のコンピレーション「The 20th Anniversary Edition」には、このショート・バージョンの間奏部分をさらに2小節カットして6秒ほど短く編集した「Edited version」が収録されている。意図がよく分からないが、佐野が編集作業のために聴き直して「ここ、ちょっと冗長だから2小節カットしよう」とか言ったのかな。そうでないとわざわざそんな手間かけないよね。

なお、ライブではテンプテーションズの『My Girl』を下敷きにしたような別アレンジで演奏されることが多く、このバージョンは「The Heartland Version」のバージョン名でスタジオ録音されて、1992年の「NO DAMAGE II」に収録された。

【リリース後の答え合わせ】
事前検証通り7インチ・シングル・バージョンを収録。但し曲が始まる前のカウントをカットしており、厳密には新たに作成された別バージョンになる。この曲もバージョン名がなぜか「Short edited version」に変更されている。

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