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Gomes The Hitman ライブ・レビュー 2024.7.14 吉祥寺スターパインズカフェ

25th Anniversary year 2024 ~25年めの週末
■ 2024年7月14日(日) 17:00開場 18:00開演
■ 吉祥寺スターパインズカフェ
■ GOMES THE HITMAN
 Vocal, Guitar:山田稔明
 Keyboards, Chorus:堀越和子
 Drums, Percussions, Chorus:高橋結子
 Bass, Chorus:須藤俊明

メジャー・デビュー25周年ということでデビュー以来の歴史をあとづけるステージ。新曲を交えながら、ほぼ時系列に沿って、アンコール含め全部で25曲が演奏された。

彼らがメジャー・デビューしたのは1999年、僕が彼らの音楽に出会ったのが2003年のアルバム「omni」だった。その後彼らは2005年のアルバム「ripple」を最後に、2018年のアルバム「SONG LIMBO」でカムバックするまで、13年ものあいだ長い活動休止期間があった。25年間の半分以上はブランクであり、遅れてきたファンである僕は、むしろ彼らの不在と長いあいだつきあってきたのだ。

出会ったとたんにいなくなり、過去の音源を繰り返し聴きながら、帰ってくるかどうかもわからない未来を思う。そんな銃後の妻みたいな気持ちで日々を過ごした、それが僕にとってのゴメス・ザ・ヒットマンというバンドであった。

この日のライブは、そのすきまを、不在を埋めるピースのようだった。活動再開後も彼らのライブはなんどか見ていたが、キャリアをなぞりながら、彼らが不在のあいだに僕があとづけで繰り返し聴いていた曲を丁寧に演奏してくれたのは新鮮だった。

13年は長い時間だ。自分自身が歳をとるにつれ、時間の流れはどんどん速くなり、昨年と一昨年の区別もつかないような日々がおそろしい勢いで過ぎ去って行く。だが、そうやって過ごした13年のあいだにも実際にはいろんなことがあり、若かったころほどではないとはいえそれでも人はなにかを少しずつ学びながら、いろんなものが不可逆的に変化して行くことにある日気づく。

僕が彼らの帰りを待ちながら、あたりまえのような日を一日ずつやり過ごすあいだにも、そうして世界は緩慢に、しかし確実に移ろって戻らない。演奏される『何もない人』や『思うことはいつも』、『愛すべき日々』や『星に輪ゴムを』を聴きながら、僕はこうした歌を聴いて過ごした日々のわだちが今僕のどこにどれだけ残っているのかを探すために自分のなかへと続く階段を下りて行く。

山田の書く曲はどうしてそんなにも僕の生活や僕の歩幅や僕の泣き笑いとぴったり同期するのだろう。この日、僕はなんども感情を動かされ、ぽろぽろ涙をこぼしながら声を出さずにマスクの下で歌っていた。そこに過ぎた日々、ひとつひとつの曲に書きこまれた僕にしかわからない物語。それは不愉快ではなかった。僕のなかのなにかはひさしぶりに引き出しから取り出され、ホコリを払われてひととき光を浴びた。

そうやって時間が流れるとともに、今は自分の周りにつくり上げている親密な世界が、次第にほどけるように機能を失って行き、やがていつか僕自身という主を失ってただのモノに還って行く、それを思って沈みこむ日もあった。しかし、なにを思ってどんな気持ちでいても、結局時間は容赦なく過ぎて行く。そうであれば、好きなアーティストの歌を口笛で吹いていればいい。このごろ自分のなかでもそもそ動きだしていたイメージが出口を見つけた感じがした。

このライブでは新曲も披露された。昨年から今年にかけてのシリーズ・ライブで発表された曲だったが、レコーディングが進んでいることも明かされ、ゴメス・ザ・ヒットマンとしての新しいスタジオ音源を遠からず聴くことができるという楽しみもできた。

日々の営みは続いて行く。彼らもまた歌い続けて行くだろう。そこにどんな新しい関係が築かれるのか。今ここにあるものをしっかり目に焼きつけながら、自分の歩幅で歩けばいいと気づかされたライブだった。

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