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【Jリーグ第10節】FC東京 2-1 新潟

■ 2023年4月29日(土) 15:00キックオフ
■ 味の素スタジアム

単なる土日だと思っていたら世間的にはゴールデン・ウィークはもう始まっているのだという。連休中唯一のホーム・ゲームとなる新潟戦を見るためにヴェスパで味スタに向った。

新潟はアルベル監督が東京の前に2年間率いていたクラブであり、それをベースに今季からJ1に昇格を果たした。丁寧にパスをつなぎながら敵陣にボールを運ぶ戦い方でJ1でも結果を出しており厳しい相手になる。

ケガから復帰し前節途中出場したバングーナガンデが先発した他は前節と同じメンバー。徳元がベンチ・スタートとなった。

布陣

スウォビィク
中村 木本 森重 バングーナガンデ
小泉 松木
仲川 安部 渡邊
オリヴェイラ

前半

当然ではあるがともにポゼッションをベースにパスをつなぎながら押し上げるスタイルでの組み合いとなる。ボールの動かし方では新潟が上手だが、ボールへのアプローチで東京も負けておらず、一進一退の攻防となる。

8分、渡邊が自陣からカウンターで持ち上がる。両サイドに選択肢があったが右サイドを並走した仲川にエリア手前でパス。仲川はこれを受けて前進し敵DFの股を抜くシュートを決める。1-0と東京が早い時間帯に先制する。躊躇なくシュートした仲川がさすがだった。

しかし12分、エリア手前で与えたFKを直接狙われる。ボールは壁の外からゴールいっぱいに決まり、試合は1-1と振り出しに戻る。スウォビィクの伸ばした手も届かず、ちょっとどうしようもない失点だった。

その後は交互にボールを奪っては攻撃をしかける展開になる。東京は松木、安部、渡邊を中心にボールを動かし、オリヴェイラ、仲川がこれを受けるかたちで押し上げ、いい形も作るもののフィニッシュまではなかなかたどり着けない。

一方の新潟はボールを持てば巧みな位置どりでパスコースを作りスルスルと東京陣内までボールを持ちこんでくる。このへんは良く徹底されていると感じるが、東京も最後のところでは身体を張って守っておりゴールは許さない。

34分、右サイド深くまで安部が持ちこみ中央のオリヴェイラに。受けたオリヴェイラは右サイドに流れたため作り直しかと思ったが、エリア角あたりの難しい角度からシュート。するとこれがニア上をぶち抜いて決まり2-1と東京が再びリードを奪う。入ったのが一瞬わからない技術の高いシュートだった。

その後は東京がやや受けに回り新潟にボールを持たれる時間が長くなるが、シュートは打たれるものの中央を固める。44分、バングーナガンデの左CKに松木が頭で合わせるが枠外に。結局2-1で前半を終了した。

新潟の練度は高いが東京もしっかりボールを動かせており、セット・プレーからの失点はあったものの、仲川、オリヴェイラと取るべき人が取ってリードを奪うことができた。このまま終わることはなさそうなスペクタクルな試合になっており、後半交代でうまく流れをつないで行きたい。

後半

後半に入るとポゼッションは新潟に譲るもののバイタル・エリアでは自由にさせず、奪ったボールから攻撃をしかけて時計を進める戦いになる。49分、松木からのパスを受けた渡邊がシュートを放つが敵GKがセーブ。

57分、仲川がパスを受けてエリア内に侵入したところで敵DFに倒され、こぼれたボールに走りこんだバングーナガンデがシュートを放つが枠外に。ゴール・キックで試合は再開されたがVARが介入、OFRの結果、仲川が倒されたシーンがファウルと判定されPKが与えられる。

60分、オリヴェイラがこのPKをけるがゴール左にはずしてしまう。これが決まっていればもう少し楽な試合運びになっていたと思うが敵GKが最後まで動いてくれなかった。オリヴェイラのPKはいつ見てもひやひやする。絶対身体に悪い。

66分、バングーナガンデ、仲川に代えて徳元、東慶を投入。東慶はボランチに入り、松木がトップ下に上がって安部が右ウィングにスライドした。東京は引き続きリスク管理を重視して試合を進める。新潟の攻撃も次第にキレを欠き、フィニッシュの手前で止めることができるようになってくる。

84分、オリヴェイラに代えてアダイウトンを投入。前線に置いて敵のDFラインを牽制する役目だと思う。東京は試合をオープンにせずしんどいなかでも自陣をしっかり固めて勝ち点3を確かなものにしようとする。

90分、自陣で敵とボールを競った中村が足首を傷めてうずくまる。敵FWとは接触しておらず、おそらくは靭帯系のケガではないかと思われるが、しばらくピッチで治療を受けた後担架で退場した。アディショナル・タイムに長友と交代、枠残しておいてよかった。

このプレーが新潟のファウルと判定され東京ボールでの再開に。リプレイを見ても接触はなく、またこの時中村がプレーできなくなったあと新潟はショート・カウンターのチャンスだったのを止められており、はっきりした誤審だが修正の機会はなかった。

もともと6分あったアディショナル・タイムはこの騒ぎで10分近くになったが、終了近くにはアダイウトンがカウンターから攻め上がってシュートを放つなどボールを自陣から遠ざけて時間をつなぎ、結局2-1で2連勝となった。

戦評

ひやりとさせられるシーンもなかったではないが、早い時間帯に先制し、セット・プレーから追いつかれてもオリヴェイラのゴラッソで突きはなし、後半はPK失敗もありつつ新潟の反撃をいなし続けた。ガチで打ち合っての勝利は大きい。

数字を見ても、シュート数7-6、CK3-2、ポゼッション48-52と拮抗した試合だったことが窺われ、どちらに転ぶ可能性もあったが試合の流れは東京がつかんでいたと思う。新潟の攻撃は怖かったが、自由にはさせなかった。あと、オリヴェイラのPK失敗が試合結果に影響しなくてよかった。

前線の流動性が上がっており、ポジションを交換しながらボールを動かして、敵をはがし前進して行く筋道が見えるシーンも多くなってきた。松木の強度、小泉の運動量、渡邊の技術などそれぞれの武器がかみ合い、オリヴェイラ、仲川を生かすシーンも増えた。中村の負傷が心配だが、チームとしてのオートマティズムは間違いなく向上してきている。

もちろんこの試合でもゴールは仲川とオリヴェイラの個人技であり、連係から崩しきったわけではないが、やり続けていることの先に果実があることは予感でき、こうやってまず勝ち点を積み上げながらそれに見合う内容を求めて行くことは正しい手順だと思う。

新潟はアルベル監督のもたらした戦術をベースに魅力的なチームを作っており、東京にとっても学ぶところの多い試合だったと思うが、必ずしもこのとおりのチームを我々が目指すわけではない。

細かくポジションを取り直し、ボールの通り道を作る取り組みでは新潟に一日の長があったが、東京もしっかりボールに行けていた。最終的に必要なのは再現性のある勝ち方であり、同じようにポジショナル・プレーをベースにしながらも、それをどうやって具体的な勝ち筋につなげて行くかは、手持ちの選手層に合わせたバリエーションがあってもいいと思った。

これで10試合を終了して4勝3敗3分で勝ち点を15(1試合あたり1.50)に伸ばし6位に浮上。首位との勝ち点差は7で変わらず、上よりは下との勝ち点差が小さい状況だが、これ以上離されないように上位にくらいついて行かなければならない。

ゴールデンウィークで連戦になっており、このあと福岡、札幌と遠方でのタフなアウェイ・ゲームが続くが正念場。ここでしっかり勝ち点を積み上げて、連休明け国立での川崎とのホームゲームに臨みたい。

評点

[評点はドイツ式(最高1~最低5)]:
スウォビィク(3) 今日もヤバいシュート止めてくれた。失点はノーチャン。
中村(3.5) 読みのいいボール奪取もあったが最後のケガがマジ心配。
木本(3) 自陣で破綻なくボールを前に付ける意識も高かった。
森重(4) 入れかわられてヤバいシーンあった。パス出しはよかった。
バングーナガンデ(4) 裏を取りに行く動きは効いたが組立には参加できず。
小泉(3) いてほしいところにいてくれるの本当に助かる。
松木(3) 上下動でチャンス・メイク。トップ下も可能性感じた。
仲川(3) うまく使ってもらえて結果も出した。貢献大きかった。
安部(3.5) 前線で動き回ってチーム全体を引っぱった。
渡邊(3) 彼が動くことでポジションが流動化するのがいい。
オリヴェイラ(2.5) 目の覚めるようなゴール。オレたちのディエゴ。
===
徳元(3.5) オレ的にはカシーフより徳元。
東慶(3.5) 小泉との分業もうまく行っていた。
アダイウトン(-) 時間短し。シュート決めたかった。
長友(-) 時間短し。そこにいることに価値がある男。

中村のケガはマジ心配だが、中村の交代で長友の名前がアナウンスされた瞬間、周囲の子供たちから大きな歓声があがったのはなんか嬉しかった。

あと東京サポのアーティスト、チバユウスケが食道がんで活動休止という報を受け、ゴール裏が「勝つのはオレたちだ」と歌うチバ作の『VAMOS TOKYO!』を歌い続けたのは熱かった。ミッシェルの「HIGH TIME」はレコード屋でかかってるの聴いて店員に「これだれですか?!」って言ってその場で買った人生で唯一のアルバムだよ。勝ったぞ、チバ。

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