クロちゃん

あれからあんなに号泣したことはないし、きっと一生ないだろう。

正月に猫を拾った。小さな黒猫だ。コンビニの帰り、道に人だかりができていて何かと思ったらそれだった。その場の雰囲気はまるで、あれだ、小学校のクラスで委員長になるのは誰か決めるときのあの「待ち」の時間に似てた。誰が保護するか。。。

使命感に駆られ彼を一旦私の家で保護することにした。考えてみれば小学校からあの空気に耐えられなくていつも嫌な役を立候補するような人間だったんだ私は。

黒いからクロちゃんだねと名前をつけた。最初の2日間は本当に大変だった。何を食べさせていいかもわからないしトイレもあちこちでする。

お気に入りのベレー帽の中におしっこをされたときはブラジルまで聞こえそうなくらい叫んでしまった。それでもすり寄ってくる彼にどうしようもない気持ちになった。実際母親に泣きながら電話した。

非営利団体に頼ってはみたもののあまりにも高圧的な態度であったため頼るのをやめた。こんな感じだ

「こんな夜遅くにこっちは知らない人の相手をしてあげてるんですから精一杯の敬意を払ってくれないとやってられません!!!はやく猫ちゃんを渡しなさい!!!!!なに悩んでるの???!!!ほら!!!早く!!!!」

もし本当に助けてくれるとしてもあの態度だ…この子は任せられない…。結局自分で里親を探すことにした。私の住んでいるアパートはペット禁止のためなるべく早く里親を見つけないといけなかった。

その後いろいろな人の支えがあり隣の県の三人家族が猫を引き取ってくれることになった。おとうさん、おかあさん、小さい子供の3人家族。とても感じが良かった。しかし引き取り手が決まるとなぜだか急にさみしくなってきたのを覚えている。

彼が私の家にいたのは約3週間であったがほとんどの時間を一緒に過ごしていたため、彼を送り出した後の部屋は悲しかった。

別れの瞬間我慢していた涙をひとしきり流しながらお酒を飲み、録りためていた「おっさんずラブ」を見た。あんなに一人でお酒を飲んだのは初めてだし後にもきっとあれほど泣きながら飲むことはないと思う。大失恋をしたような気分だった。(ちなみに私は失恋をしたことがない)

捨て猫も人間も同じだ。こんなに猫に心を動かされるなんて思ってなかった。自分はもっと冷静な人間だと思っていたからだ。恋人に振られて泣く女は理解できるが捨て猫を自分で拾って里親を自分で見つけ引き渡しさみしいさみしいと泣く女は理解しがたい。結局後になってなんで自分が引っ越してクロちゃんを飼わなかったのだろうと後悔した。

でも私がとった方法が最善策であったと信じている。私自信が成長できたと思ってる。

人間同士の別れと同じように、もしくはそれ以上別れの苦しさを感じたし、月並みだが動物の温かさを知った。私がSNSで彼について発信したことで、みんなが動物に対して敬意をもってくれたらいいと思うし、捨て猫や犬がいたら率先して保護して、広めてほしい。

私はきっと、次に動物を保護するときもっとうまくやれる自信がある。


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