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#はじめて切なさを覚えた日

#青ブラ文学部のお題

小学3年生だった私は、クラス内に憧れの人がいた。名前は達也くん。勉強が出来て、スポーツも得意な達也くんは、クラスの人気者だった。
私は席も遠く、個人的な話はしたことがない。遠くから見ているだけで満足だった。席替えがあるたびに

『近くの席にいけますように』 

と、願った。でも、願いは叶うことは無かった。

『縁が無いんだ』

小学3年生の私は、ませていたのか、一丁前のことを考えていた。

『好きだよ、達也くん』 

そう思うだけ。

そしたら、掃除当番がいっしょになったことがあった。
達也くんが、ほうきで掃いて私がその後をモップで拭いた。
机の上に椅子を重ねた机は、ふたりで元に戻した。

「重いよね」

「うん」

それがはじめての会話だったかも。

「おーい、男子、机運んで」

達也くんの声に男子が駆けつけて
机はすぐに元通り。

『やっぱり好き』

そう思った。

帰り道は違うので、一緒に下校は、出来なかった。いっしょに帰る人たちが羨ましかった。

朝、達也くんが学校に来るタイミングに合わせて昇降口に入る。

「おはよう」

「おはよう」 

挨拶が出来る。その頃は、学校を休むことも無かったかなぁ。達也くんのおかげ(笑)

小学校の行事といえば
メインイベントは運動会
そして学習発表会
遠足もあった。

遠足は当時は、近くの山に歩いていくもの。割と広い広場があるところで、友だちどうし、輪になって敷物を広げて座った。お菓子を交換しあったり、「これどうぞ」と配る人もいた。
私も達也くんに「どうぞ」としたかったけど、恥ずかしくて出来なかった。

運動会は、私の個人的な達也くん祭りだった。
自分のことは二の次で、達也くんばかり目で追っていた。 

学習発表会は、3年生は、合唱。
クラスごとに違う歌を歌う。
そうだ!あの時、ピアノを弾いたのは悦子ちゃんだった。ツンとした感じで私はあまり好きでは無かった。その悦子ちゃんが合唱の練習の時、達也くんと話をしている。 

『なんで達也くんは、クラス委員でも無いのに、話するわけ?』

と私は不満げな顔をしていたと思う。

嫉妬だ。

体育の時間、
思わぬことが起きた。

『フォークダンス』

大事なことだからもう一度

『フォークダンス』

唯一、男子と手を握れるチャンス!

『あー、神様、ありがとう』

男女が二人で並んで踊るフォークダンス。

オクラホマ ミキサー

一節ごとに男子が変わっていく踊り。

輪になった所で、達也くんを探す。

『これなら、いける』

私はうれしさを秘めて
その時を待った。
あと、3人
あと、2人
あと‼️‼️‼️


先生‼️



私の後ろに先生がいる。

先生が達也くんと手を繋いで
踊ってる。

そして、先生の笛が

ピーーー!

「はい、みなさん上手でしたね、
フォークダンスは、これで終わりまーす」

よろめく私。
小学3年生にして味わう
切なさを覚えた日。

忘れることは無いだろう。




#青ブラ文学部  
#はじめて切なさを覚えた日

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