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【今月のトークテーマ】太田光にとってのピカソが、自分にとっての「LA-MULANA」だったという話【池谷】

 主宰のカワチさんに誘われまして、なぜかこのマガジンに参加することになった元ゲームライターの池谷(@tekken8810)です。大学時代に雑誌「ゲーム批評」でライターデビューして、それからいろいろあって今はニュースサイト「ねとらぼ」の中の人に。ゲームライターとしてはどっちかというと「ドロップアウト組」だったりします。いやあゲームライター、なるのは簡単だけど続けるのは大変だよね……。

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太田光の記事を読んでハッとなった

 さて、6月のトークテーマは【自己紹介と自分がこの世でいちばん好きなゲーム】だそうです。またデカいテーマを持ってきたな……。自分はわりとしょっちゅう「いちばん好きなゲーム」が入れ替わる人なのでどうしたもんかな……と思っていたら、ちょうどこんな記事を見つけてハッとなった。

 川崎の連続殺傷事件を受けて、爆笑問題・太田光がサンジャポで語った内容がすばらしい、という記事だ。

 これ、僕だ。

 僕じゃん。

 なぜ今回、犯人はこのような「拡大自殺」に及んだのか。太田は自分の過去を振り返って、「自分にも一時、何を見ても感動できなくなった時期があった」と話す。いっそこのまま死んでもいい――そんな風に考えていたおり、たまたま美術館でピカソの絵に出会った。

「ああ、(表現って)こんな自由でいいんだ!」

 それがきっかけで、太田はまたいろんなことに感動できるようになり、自分や他の人間のことも好きになれたという。たとえ今、死を考えていたとしても、抜け出すきっかけは案外すぐ近くにあったりすることを知ってほしい――。太田のこの発言は、ネットでも大きな話題になった。

太田光のピカソと自分にとっての「LA-MULANA」

 これは一度ねとらぼでも書いたので、多少ハナシがかぶってしまうのはご容赦いただきたいが、自分にもまったく同じような時期があった。

 僕の場合はゲームだった。 長らく「ゲーム好き」を自認し、ゲームライターを生涯の仕事にしようとまで思っていたのに、ある時期、ゲームがまったく面白くなくなってしまったことがあった(どうしてそうなったか、については長くなるので省略)。

 そんな時に出会ったのが「LA-MULANA(ラ・ムラーナ)」だった。

 ネットの掲示板で知り合ったMSX好きな3人が、「自分たちが大好きだったMSXのゲームが、もしあのまま進化を続けていたら」という熱意と根気だけで「おれが考えた最高のMSXゲーム」を作ったら、なぜかそれが海外で評価され、Wiiでリメイクされて発売されることになってしまった。当時はこういうインディーゲームが家庭用ハードに移植されるのはまだまだ珍しく、今にして思えば、日本のインディーシーンが大きく動き出す転換点になったタイトルでもあった。

 これを遊んで、僕は太田光とまったく同じ感想を持ったのだ。

「ああ、(ゲームって)こんな自由でいいんだ!」

 制御しづらいレトロゲーム特有のジャンプ軌道、ひたすらに広大なマップと、プレイヤーをあざ笑うような罠、謎解き、そして凶悪すぎるボスたち……(知らず知らずハードモードで遊んでいたことが後に発覚)。それは決して万人に受ける作りではなかったが、遊べば遊ぶほど、これを作った人の「うるせえ! おれはこういうゲームが作りたかったんだ!」という気持ちが伝わってきた。

 こんな世界がまだあったんだ……。そう思った途端に、パッと目の前が開けたような気がした。

 太田光の発言がいいなと思うのは、しばしば言われる「なぜ娯楽や芸術が必要なのか」という問いかけへの答えにもなっている点だ。

 ピカソもゲームも、乱暴にくくれば全部「時間の無駄」でしかない。しかし、その無駄が誰かを救うこともある。少なくともピカソは太田光という人の人生を救ったし、LA-MULANAも僕の人生を明るいものにしてくれた。

 それからいろいろあって、僕はゲームライターをやめてニュースサイトの人になったが、今でもゲームは大好きだし、ねとらぼで珍妙なインディーゲームを取り上げている記事があったらだいたい僕が関わっていると思ってほしい。あのとき「LA-MULANA」に出会っていなかったら、今の自分はなかったと思う。

もうすぐ「LA-MULANA2」(家庭用版)も出ます

 ――と、結局また「LA-MULANA」のことを書いてしまった。おじいちゃん、その話は以前やったでしょ。でも、自分にとって「LA-MULANA」はそれくらい特別な1本なんだよ……分かってくれよ……。もっと普通に好きな作品で言うと、壺おじさんとか「SEKIRO」とか「FF15」とか、セガの「ピットフォールII」とか「電脳戦機バーチャロン」とかいろいろあるんだけどそのへんはまたの機会にとっておきましょう。

 あそうだ、そんな「LA-MULANA」ですが、続編の「LA-MULANA2」が昨年PCで出ておりまして、さらに6月27日にはなんと家庭用版(Switch、PS4、Xbox One)も発売予定となっております。これを読んでくれた人ならもちろん買ってくれるよな!


 あと最近書いた記事もよかったら読んでくれ。



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