プライドを捨てきった芸人のみが出演する糞みたいなライブに出た話

ここ最近のところ
右肩上がりな出来事ばかりで
文章からもフワフワ加減が
目に見えてしまうんじゃないかと
恐れている程の現在全くと言っていいほど
売れていない芸人が日々送るにつれ思ったことなどを書き起こす糞エッセイ

お気に召さない方はスキとフォローだけして閉じてください。


私個人の意見だが

芸人というものは自らの笑いに対しての
プライドを捨てた瞬間
死んだも同然だと思う

この意見を念頭に置いて下の文章に見てほしい
そして皆さんもこの現状について考えてほしい

そのライブは全く売れていない私ですら
「まだ地に落ちた芸人ではないな」と
考えさせられるライブだった

そして本当に怖かった

2か月前にとあるライブに出た時
ネタ終わりに他の芸人から「自ら主催でライブをしているんだけど、出てくれないか?」とお願いされた

今思えば、そのライブの詳しい詳細を聞かずに二つ返事で
出演を許諾してしまったことに後悔している


普段ではあまり出ないような少し遠方の土地に存在するライブハウスで
周りは歓楽街がにぎわっていた

エレベーターで安定の地下に向かい
ドアが開いた

空いた瞬間誰かを中心に談笑されており
その後に続いて笑い声が数種類聞こえた

一瞬ライブハウスを間違ったかなと思いつつも歩みを進めると
ライブに誘ってくれた芸人さんが
誘ったライブでは着ていなかった一張羅の舞台衣装を着て迎えてくれた

出会うや否や「来てくれたんだね~待ってたよ!」と肩を組まれた
誘ってくれた時はそんな距離感では無かったのに
会うのはまだ2回目なのに
むず痒さが体中を巡った


ここから先は「誘ってくれた芸人=クソ野郎」と略させてもらう


奥へ案内させると舞台上に
金色かつヒョウ柄のジャケットを身にまとった色黒の男性が他の芸人さんに向けて話をしていた

もう嫌な予感がした

色黒が喋るたびに周りの芸人は
おかしな薬でもしてるんじゃないかと思う程に笑う
面白いことを言っているわけでも無いのに

その光景を見てた私の首根っこを
クソ野郎は掴んできて強制的に頭を下げさせられた

そしてその色黒に向かって「出演者がまたまた到着で~す」と
明るい声で言うと同時に耳元で「今すぐ挨拶しろ」とドスの利いた声で言ってきた

簡単に言うと
そのライブは

その社長に媚びるライブだった

挨拶が終わり楽屋へと案内される途中に
クソ野郎に「首掴んでごめんね、ああいうの厳しい人だからさ」と
笑いながら言われた

殺意が湧いた
そしてその殺意は更に湧き上がる

「楽屋はここだから」とクソ野郎に言われたのが非常階段の階段だった
しかもそこで恐らく誰かが吐いたであろう匂いや痕までこびりついていた

そこに私以外の何人かがいた
そのクソ野郎がいなくなるのを見計らい他の芸人に向けて恐る恐る私は聞いてみた

私「このライブって大丈夫なんですか?」

芸人「今ピン芸人なんですか?コント?漫談?」

私「すみません初めてでこのライブってどんな感じですか?」

芸人「社長は凄く面白いんだよ、お金もくれるしさ」


まるで話が通じない
そして言い方が悪くなるが
完全に目が瞳孔が開いていて焦点が合っていなかった

恐らくこの人は何かしらの洗脳を施されている 

そう思った

更に他の芸人に対しても質問をしてそのライブの詳細が掴めてきた

どうやらその色黒社長が毎月手掛けているライブ
優勝したら賞金が出る 
2位3位にも何か商品が出る
その社長が育てているアイドルが出るのでお客さんはそのアイドル目当て

洗脳に対して情報を得る前に場当たりがあった
私含め何人か初めて出る人もいてどれもこれもそのクソ野郎に
誘われた形だった

場当たりが始まる
クソ野郎が第一声に

「ここの出会いは物凄く大事です
社長と出会えたことに感謝しましょう」

と言った

黒だ 完全に黒だ

感謝と言うワードが出た時点で出演してはいけないライブだと確信した

しかし逃げたら逃げたで何をされるか分からない
その後社長が15分程度ベラベラ喋っていたが内容は聞かずに
早く時間が過ぎ去ってくれと願った

そして社長がクソ野郎に向かってこういった
「じゃあ景気一発目に何かギャグやってよ!」

なりふり構わずクソ野郎はギャグをした

社長「面白くないねぇ、でも元気だけはいいね!」

クソ野郎「元気だけが取り柄ですから!面白さは社長の方が上回ってますよ!」

社長「そりゃそうだろ!俺が芸人だったらダウンタウン超えてるよ!」

その言葉がクソ野郎含め洗脳が完了している人たちは爆笑した

もう帰りたい

その瞬間社長が手掛けているアイドルが正面扉から入ってきた

見た目が完全に30後半のおばさんだった

つけまつげもこれでもかと付けており、黒い目が見えないくらいだ
衣装もサザエさんのワカメちゃんくらいスカートが短く
社長の隣に座り
そこからライブが始まる時間まで社長はそのワカメちゃんの太ももをずっとさすっていた

ネタとエントリー料金を支払い楽屋(非常階段)へ戻ると
クソ野郎は出演芸人全員集めて言ってきた
「社長の機嫌次第でお金や商品が変わるんで、ね、あとは分かるでしょ?じゃあよろしくお願いします。」

そう言われ各々ライブの開場時間まで過ごした

私は他に初めて出演する芸人とどうやってここから抜け出すかの
作戦会議をしたかったが
洗脳済み芸人にマンマークされことごとく喋りかけられた
「何年目なんですか?」「どこか事務所入っているんですか?」
「僕これ3回目で本当にいいライブなんですよ!」
「クソ芸人さんには感謝ですよこのライブ誘ってもらって」と
こっちが嫌な顔しようともお構いなしで話をされた

3回出ると洗脳が完了されることだけが分かった

ライブが始まった
社長とクソ野郎がMCだった

ネタをせずに帰りたかったが後々の事を考え
あくまで芸人なのでネタだけをして帰ることにした

私の1つ前の出番の芸人も洗脳済みで
完全に目の焦点が合っていなかった

その上ライブが始まっているにも関わらず
舞台袖で私に対して「緊張しているよぉぉお!」と
両肩を掴まれてかなり大きい声で言ってきた

人間は怖すぎたら何も反応できないんだなと感じた

袖から念のため確認したのだが
活舌もすこぶる悪く、何を言っているのかも理解不能で
ネタの内容も地下アイドルの振り付けを
ジェイソンの仮面を付けて踊るといったスプラッター映画のワンシーンのようなネタだった

途中何とか聞き取れた
「社長には全くかないませんけどね」や
「生まれ変わるなら社長になりたいな」と言うセリフに対してのみ
社長とクソ野郎は手を叩いて爆笑していた

私のネタが始まった
お客さんは3人
たったの3人かよとツッコミが出そうになったがぐっとこらえて
とりあえず手を抜いても何をされるか分からない
謎の緊張感を誤魔化すように大きい声でネタをした

ウケない 当然だ
社長に媚びてないからだ

クスクス笑いは何箇所かあれど
こんなライブで爆笑を取ったからと言って
将来何になるんだと思っていたので悔しくもなんとも思わなかった

ネタ中もずっと

一刻も早くこの場から立ち去りたい

その気持ちで張り裂けそうだった

ネタが終わった私は真っ先に着替えを済ませ帰る準備を整えた
帰る準備をしていた私に向かい
マンマークをしてきた信者芸人はこう言ってきた

「最後社長と集合写真を撮るんだから、何帰ろうとしてるの?」

背筋がゾッとした
その顔は真剣さながらでどこか怒っている表情で

夜勤があると嘘をついても帰ろうとしても

見抜いてからなのかマニュアルからなのか
信者は一方的に
「貴重だから撮っていったほうがいいって」と訴えかけてきた


ここで写真を撮ったら芸人として
何か終わりそうな気がする
私の本能がそう叫んでいた

逃げよう


私はその信者がネタをするまで待った
その間も信者から「貴重なんだから」や
「後でSNSに挙げてくれるんだよ?」とかほざいていた

SNSに上げられるなんて溜まったもんじゃない
芸人と言うよりも人間として何かの人生が終わる

信者のネタが始まった


その瞬間
私は荷物を手に取り必死に非常階段を駆け上がった

他の芸人にも挨拶はせず
無心で階段を駆け上がった

手当たり次第に非常階段のドアを開けた
奇跡的に3階の居酒屋のバックヤードに繋がり
そこからエレベーターを乗り継ぎ事なきを得た

あれほど駅のホームで電車が早く来て欲しいと思ったのは初めてだった

後々SNSを確認すると

満面の笑みを浮かべた社長とクソ野郎とワカメちゃんと信者で
その後ろに困惑の顔を浮かべている他の芸人の並んだ集合写真が
アップされていた

芸人として生きる手順として
社長に媚びて生きていく方法もあるのにはある

ただ

それって芸人なのか?

クソ野郎に次会った時に言ってやりたい

社長に媚びる芸人になりたくて芸人を始めたのか

クソ野郎も信者もかなり年齢は高い方で恐らく芸歴も重ねている方だと思う

売れないって残酷だな

と思えた日だった

今日まで私は売れていない、しかし明日はもっと面白い私に出会える、明日は売れる、明日から売れる。


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