攻め応用② 交刃の間での「攻め方」一覧
前回、交刃の間で攻めの工夫するんだよ~って言いました。今回は、色んな攻め方を一通り紹介していきます。「足の攻め」、「打突の直前の剣先の動き(中心を外す等)」この2つを組み合わせて打突していきましょう。
この記事で攻め方はあくまでも「一覧」です。この中からメン5パターン、コテ3パターン、ドウ1パターンをつまんで稽古の時に表現して使えそうだな、こうしたら自分はうまくいけそうだとか、自主的に考えて頂けたらと思います。いきなり全部やろうとすると頭パンクします。
注意:基本は中段の構え
打突する直前までは基本的に中段の構えを崩さずに間合いを測っていきます。中段の構えを崩してしまうと、今どの間合いの位置にいるのかわかりずらくなってしまいますし、体勢が崩れた状態だと審判も旗上げやすくなってしまいます。中心を攻めて攻めて、一足一刀の間に近づいてきました。それでは、いってみましょう。
打突する直前の剣先
中段のまま「一足一刀の間から1歩後ろの間合い」まで、中心を攻めていきました。さて、選択していきます
→1中心をギリギリまで攻めていって打つ
相手が手元をあげた瞬間に打っていく、「出ばなメン」を狙う基本的なスタンス。触刃の間から素早く入っていけば「出ばなコテ・メン返しドウ」もある。
また、足をそこから固定しながらも重心を前に移動させたまま、一足一刀の間に身体を前に流すと同時に、「仕掛けメン」か「仕掛けツキ」を打っていきます。
リスクはあるが、相手が一瞬、下をみたら、コテ一点読みで「合いコテメン」「コテ刷り上げメン」「コテ返しメン」も狙える
→2相手の竹刀を縦に刷り込むようにしながら打つ
1と同様。一般的には「1」と同じメンにみえる。相手の鍔元の上を通るように仕掛けていく。こちらの方がメンの応じ技を打たれない
→3相手の竹刀を縦に強く刷り込む(抑える)ようにしながら打つ
「2」と似ているように見えるが狙いは全く違う。中心をむりくりとられた相手の押し返しを利用して、「仕掛けコテ」を狙いに行く。相手が押し返してこない読みならば、押さえつけると崩した状態になるので「仕掛けメン」を狙いに行く
→4中心から少し剣先を下げて、溜めて打つ
中心から急に剣先を少し下げると相手はコテを狙われるように感じて手元をあげずに居つく。その居ついた状態をつくりながらもすぐに「仕掛けメン」を狙う。メンを打ってくる「読み」ならば、刺すように「出ばなコテ」を狙う。形的には下からのコテとなる。また、「メン返しドウ」のもっともポピュラーな誘い方でもある。
→5中心から剣先を相手の右コテにおろして主にメンを打つ
「4」の下攻めを寄り「コテ」に意識させた強気の攻め。「4」より中心を外しているので、相メンになったら少し遅れる可能性があるが、より大きく相手に「コテ」か「メン」か迷いを与えることができる。はたから見ると「4」と「5」は同じようにみえる
→6中心から少し剣先を上にあげ、胸元を突く感じで溜めて打つ
中心から急に剣先を少し上げると相手はツキ・メンを狙われるに感じて打突、もしくは、手元をあげる、もしくは、挙げずに居つく。狙いとしては相手を居つかせた状態でそのままメンを狙ってもよし、メンを警戒させてコテを狙いに行ってもよし。ただし、剣先を少し上げるのでコテを打たれる可能性があり、行うには少し勇気がいる。
→7中心から剣先の延長に相手の左目を突くようにして打つ
「6」の派生版だが、意味は大きくかわる。左目を突くようにして一瞬、相手の視界を半分奪うことができる奇襲技。効いている場合は、メンを打ってくる可能性が低いので、そのまま「メン」か、あるいは、「コテ」を打つ。ただし、右コテが空くので「6」と同様に多投するとコテを打たれる可能性がある
→8中心から若干竹刀を開いてから打つ
中心を外すどころか、相手に「打ってください」と言わんばかりのスタンスでメンとツキががら空きになる。そうなると相手はどうしてもメンを打ちたくなるのでこちらは「メン返しドウ」を仕込んでおく。「メン」を打つ場合は、一瞬だけ開いて相手のメンの打ち気を誘い、そのまま相メンの形にもっていく。
→9中心から竹刀を床に対して垂直に立ててから打つ
竹刀を大きく見せての打突。相手の手元が上がると読めばコテ、居つけばメン。奇襲技であり、多投するとコテを打たれる。この攻め方は前に詰めながら行うのではなく、一足一刀の間に入ってから、竹刀を立てた方が出ばなをうたれるリスクを抑えられる。
→10中心から担いで打つ
「8」よりも大胆で、メンも打ちやすい。「8」と同様に前に詰めながら行うと出バナを取られる可能性があるので、一足一刀の間(一足一刀の間の1歩後ろくらい)に入ってから担いだ後に、メンを打つ。尚、担ぐモーションを見せた後だと、相手は担ぎコテを警戒して、メンを打ちずらくなる
→11中心から相手の竹刀の物打ち部分を表から縦に払って打つ
表払い技。むしろ相手は中心に竹刀を戻しやすくなるため、メンやツキは狙いにくい。攻めあぐねた時など、若干遠間からメン返しドウ狙いの相手に対するけん制がおすすめ。私はあんまり使わない
→12中心から相手の竹刀の物打ち部分を裏から払って打つ
表の剣先の柔らかい相手に対して、裏から払ってそのままコテを打っていく。素早く打てば「1」のような「仕掛けコテ」にみえるが実は別物。
→13中心から相手の竹刀の物打ち部分を表から巻き上げて打つ
相手の竹刀を巻き上げる。表の剣先の柔らかい相手に対して使う。高段者同士では、あんまり竹刀を強く握らないので、奇襲をかければ成立するケースがある。私はできない
→14中心から相手の竹刀の中結の鍔の中間部分を裏から巻き下ろして打つ
「11」は「コテ」にいくが、こちらは、裏から「メン」にいく技。竹刀を落とすまでしなくても、中心は外せるのでそのまま「メン」をいく。相手が居ついていて、剣先が柔らかい相手に対して「ツキ」技の代わりとしても有効。
→15少し右に足を裁きながら、相手の竹刀の裏から押さえて、相手が裏を抑え返しところを表に戻して打つ
右に裁いて裏交差をするという技。こちらも表に対する剣先が柔らかい相手に対してで「13」と違い「ツキ」を狙いに行く
他にもあると思いますが、私が思いついたところで、こんなもんでしょう。新しいのを発見したら追加で加えておきます。
この15通りにメン、コテ、ドウ、ツキを当て込むと、実は剣道の技ってたくさんあるんだなということが分かっていただけると思います
足の攻め方
続いて、足の攻め方です。
触刃の間から一足一刀の間へと向かうとき、すり足幅の大きさ、スピードを分けることで足の攻めパターンを増やすことができます。
①触刃の間で相手の剣先を触りました
→1半歩すり足
→2芋虫すり足
→3右へ反時計回りにすり足
右へ反時計回りにすり足をする場合は、相手に隙がなかったり、懐が深かったりして攻めあぐ寝た場合に使用します。角度を変えることで竹刀を構えなおすことによる「崩し」も誘える場合もあります
②交刃の間から一足一刀の間までの足さばき
ここから前に出るとお互いに間合いが一足一刀の間になり打つか打たないかの選択となります
→1・半歩すり足
基本です。右足を前に出したら左足をひきつける。その時に、足幅が広くなったりして、身体がくずれないようにします。
→2・芋虫すり足
母指球と5本の指で右足を床をにょちにょち移動します。半歩以上のすり足だと間合いが詰まりすぎる、かといって前に出ない状態を作りたくない場合にしようします。
→3・左足固定で右足半歩すり足
左足を固定するにより、「下がる」動作をせずに、相手を誘い込むことが可能になる。足幅が広がれば広がるほど、遠くに飛べなくなるが近くを裁ける。その場合は、コテ打ちや相メン、メン返しドウなどに有効。
→4・左足固定で右足半歩すり足→右足退行戻し
「3」を繰り返していく。相手が誘いに乗ってこない場合に仕切り直しとして戻る。繰り返し行うことで突然飛び込みメンをしかけるといった攻めも可能にする
→5・左足固定で右足1歩すり足→右足退行戻し
足幅を変えてみてもよい。ただし、足幅が広がれば広がるほど遠くに飛べず近くでさばくという特性は忘れないこと
→6・ゆっくり一足一刀の間まで、1歩すり足
何度も多用すると「出ばな技」を狙われる危ないが、攻撃的なパターン。「3」をみせておけば、相手は不用意に「出ばなメン」を打つ事ができない。一足一刀の間に入ることができれば、そこから溜めて飛び込みメンを打っていくなど、様々な仕掛け技を行える。ただし、1歩入ったあとの重心を前に移動したままの勢いを保って打突したい。
→7・右足半歩前に出た後、意図的に左足を継ぐ
交刃の間からの打突を狙いにいきます。意味あいとしては「6」と同じだが、こちらは、左足を「敢えて」継ぐことで相手に打突前の準備だと思わせるやや邪道な選択肢。それが「罠」かもしれないといった迷いを狙う技。打突する前に左足を継ぐ「癖」のある人は、治した方が良いが、こちらは戦略としてわざと継ぐ
足を使った攻め方
次に打突直前に剣先を動かすのではなく、「足」メインにして相手を捉える打突。
1・素早く一足一刀の間まですり足して、出小手か胴
足を使った奇襲、中段に構えた状態でささっと、入ることにより相手の「出バナ面」を誘発。この時、止まらないですぐに「出コテ」か「メン返しドウ」を仕込むこと。「出コテ」を打突する場合は下攻めを仕込んでもよし。外れても相手は居ついている可能性があるので、コテ→メンと連続で打っていく。
2・歩み足による飛び込みメン
触刃の間から左足を前に出して、そこから左足を溜めて右足をす~~っと溜めまくって一足一刀の間に入ったらすかさず、飛び込みメンを打突する。これにより、速く強く打突することができる。
※体勢の崩れる足の攻めは悪手
人の身体能力にもよりますが、生涯剣道を考えて、最後まで体勢の崩れない剣道を目指していくことを前提とします。
打突する前に体勢が崩れれば元も子もありません
そうすると、足幅を大きく広げる足さばき等は悪手です
あと、初心者に陥る罠ですが打突する直前「左足を継ぐ」を起こりが目立ってしまい、いままでの攻めた形が台無しになるので注意してください。
癖がある人は、やはり、構えとすり足の練習によりなおしていきましょう
攻め足の使い分け方
相手によって使い分けますが基本的には「相手と対なる動きをすること」で相手のペースを乱していきます。
・素早い相手には「ゆっくり半歩前に詰めていく」ことにより、動じない圧力をかけていきます。
・中々動かない相手には「小さく素早く詰めていく」ことにより、相手に手元を挙げさせます。この時、すぐに打ちにいかないために、左足固定の右足攻めでけん制することを推奨
溜め方(打突する前の体重移動)
1、ゆっくり溜める
2、素早く溜める
3、溜めないでその場でさばく
「溜め」は踏み込むまでに身体を前に並行体重移動しながら、手元を最後に挙げる技術です。ポイントとしましては、溜めている間に左足を動かさずに体重移動は床に対して水平に行うことです。これにより、仕掛け技の打突の強度をあげることができます。6~7段レベルの技術です。これはちょっと言語化しにくい。止まってメンを打つよりも1歩入りながらメンを打つ方が打突が強くなりますよね?体重を前に乗せるための技術ですね。ギリギリまで手元をあげないので、これによって、相手のただ待っているだけのメン応じ技が打たれなくなったりします