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vol.39 節分の花だより【手紙の助け舟】

みなさん、ごきげんよう。
喫茶手紙寺分室の田丸有子です。

節分は旧暦の年越し。いかがお過ごしでしたか。私は豆まきもせず、恵方巻きも食べませんでしたが、今年はちょっとすてきな出来事がありました。

昨年、桜の咲く頃に、私は近所の庭園に遊びに行き、そこで庭師のおじさんからこんな話を聞いたのです。
「この庭は、節分のころに咲くセツブンソウから始まって桜が咲く頃までに次々といろんな花が咲くんだ。庭の様子がどんどん変わっていくから毎週来ても楽しめるよ。一年で一番見ごたえのある季節だからね。」

話を聞いているうちにセツブンソウを見たくてたまらなくなった私に「来年見においで」と庭師のおじさんが言ってくれました。2022年2月3日はセツブンソウを見に行く。忘れないようにスケジュール帳にメモしました。しかし、その日が近づくにつれ少し半信半疑と言いますか、心配になってきました。こんなに寒いのに節分だなんてピンポイントの日に本当に咲くものかしらと。そして…

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セツブンソウは節分の日にちゃんと咲いていました。
なんと繊細で可憐な花でしょう。感動を表す言葉が見つかりません。
直径1〜2センチぐらいの小さな小さな花なのです。よくよく見ていなければ気付けません。知らずに踏みつけて、踏んだことにすら気付かずに通り過ぎてしまうでしょう。山の中でこの花にふと気が付き、出会うことができた人の気持ちを想いました。

花信・花だより

花が咲いたことや見頃を知らせる便りを「花信(かしん)」や「花だより」と言います。私も手紙の挨拶文に季節の花についてよく書いていますが、これからの季節は日本のあちらこちらから花信が届きますね。セツブンソウはご存知ない方も多いでしょうからまずはこの体験を手紙にしたためて、今春最初の花信としてお伝えしようと思います。

さて、そんな花だよりに添えるのにぴったりな切手が発行されました。

竹久夢二の植物をモチーフにした絵が元になったデザインです。大正ロマンを感じさせるテキスタイル風の切手はずっと見ていても飽きません。植物柄のポストカードに切手を合わせ、したためる文章はたとえばこんな感じ。

「こんにちは。紅梅の芳しい香りがどこからか漂ってきます。春はもうすぐ。お互い体を大切にして元気に過ごしましょうね。」

たったこれだけで季節感を感じられる手紙の完成です。花だよりの良さは書いた人と読んだ人が同じ景色を想像しやすいところにあるのではないでしょうか。最小限の文章でも、紙や切手が想像の手助けをしてくれます。
みなさんも早春の花が咲いているのを見かけたら、ぜひ手紙に綴ってみてください。それを読んだ人もきっと同じように春を感じられるはずですから。

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田丸有子(たまる・ゆうこ)|喫茶手紙寺分室 note ライター
手紙文化振興協会認定 手紙の書き方コンサルタント
子供の頃から「手紙魔」と呼ばれるほどの文通好き。
切手に描かれている美術品や絵画の実物を鑑賞するための美術館巡りが趣味。目下ステイホームで始めたベランダガーデニングに夢中。
blog: CORDIALLY YOURS 手紙魔の手紙物語


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