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「手紙処」誕生秘話

こんにちは。手紙寺発起人の井上です。

手紙寺ができるまでを語るにあたり、現在船橋にある「手紙処」が完成するまでのお話は省くことはできません。

今日から何度かに分けて「手紙処」ができるまでのお話をしようと思います。

「さよならと向き合う場所」を届けたい。

私は手紙寺の発起人であると同時に、承和2年から1200年の歴史を持つ證大寺の二十世住職をしています。

證大寺は埼玉県の森林公園に霊園があり、私たちはその霊園にお墓を作る構想を練っていました。単なる墓石ではなくて、大きくて美しい、霊園のシンボルとなるようなお墓です。

その中で私たちは、そのお墓を通じて、誰に、何を届けたいのか?ということを、今一度じっくりと考えました。

そしてたどり着いた答えは、大切な人を亡くした人へ、さよならと向き合う場所を届けたいということでした。

私が亡くなった父へ手紙を書いたり、別れた人へ手紙を書いていたように亡くなったら忘れる、別れたら忘れる、ということはせず、正しい形で昇華する機会を持ってほしいと思ったのです。

お葬式やお通夜よりも、もっと個人に寄った別れと向き合う場所と時間です。(恋愛の場合は、特にそんな時間はなかなか持てません。)

それを実現するべく、全国のたくさんの霊園を見に行き、様々なことを調べべました。しかし、なかなかしっくりと行くものは見つかりません。「これだ!」と思えるお墓や霊園には出会えず、何年もときが流れていました。

なぜなのでしょうか。

それを探るために、もっと自分ごとで考えることにしましょう。

ぴったりな場所は、ないのかもしれない。

私は、一番大切に想っている人が亡くなったとき、きっとひどく落ち込むと思います。

そうなったら、どこで私は立ち直れるのでしょうか。

本当にお寺やお墓がぴったりの場所なのでしょうか。

少なくとも、私にとってお寺ではありませんでした。(仕事の場所でもありますしね。)

さよならと向き合うためには、自分の素をさらけ出したいし、落ち着いて本当の気持ちを整理したり、心の奥にある想いを吐き出したい。

亡くなってしまった後にも、対話をして、自分自身とも向き合いたい。

あの人といた時間を振り返ることで、自分自身のことを確かめたい。

それができる場所は、きっとそれぞれの思い出の場所や、一人ひとりの思い入れの深い場所。共通する1つの場所であるはずがないのです。

「さよならと向き合う」時間を守る場所へ。

そう気づいたとき、私たちのゴールはお墓を作ることではなくなっていました。お墓を訪れた誰もが、心を落ち着け、亡き人と対話する時間を作ることのできる場所を作るのがゴールになりました。

そこに行けば、さよならと向き合う時間をしっかり作ることのできる場所です。

忙しい日常から離れて、自分の気持ちと向き合うことのできる場所です。

こうして、喫茶手紙寺 分室 の前段階として森林公園という霊園に佇む「手紙処」という空間の構想が始まりました。


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次回につづきます

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井上 城治 | 手紙寺 発起人
1973年生まれ。東京都江戸川区の證大寺(しょうだいじ)住職。一般社団法人仏教人生大学理事長。手紙を通して亡くなった人と出遇い直す大切さを伝える場所として「手紙寺」をはじめる。趣味は、気に入ったカフェで手紙を書くこと。noteを通して、自分が過ごしたいカフェに出会えること
を楽しみにしています。

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