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「手紙処」誕生秘話 02 

お久しぶりです。手紙寺発起人の井上です。

前回に引き続き「手紙処」という場所が生まれるまでのお話をしようと思います。

さよならと向き合う場所、手紙処。

最初の構想段階では、埼玉にある森林公園の霊園に、その場所を作るという方針で話を進めておりました。

ご縁があって押尾章治さんという建築家の方に手紙処の設計と建築をご依頼することができ、着々と準備が進んでいきました。

押尾先生は、隈研吾氏の元でキャリアを積まれたベテランの建築家です。手紙処に込めた想いも、しっかりと受け止めてくださり、手紙処を形にしていくための構想会議も何度も行いました。

作っていただいた模型の数は、10を超えるでしょうか。先生とともに、毎晩悩みながら手紙処のあるべき形を考えました。しかし最終的に、お互いに納得のできる手紙処が形になったのですが、残念ながら予算の都合上実現できず…。

もう一度、次は船橋にある霊園での建設を目指して再スタートすることになったのです。

韓国映画「イルマーレ」にインスパイアを得て。

話は大きく変わりますが「手紙処」を作るにあたり、韓国映画の「イルマーレ」という作品に大きく影響を受けました。

ハリウッド版にもリメイクもされた人気の作品なのですが、この作品で大きな鍵になるのが、主人公の家に届く「宛のない手紙」なのでした。

少しネタバレになってしまいますが、実はこの作品は、手紙がつなぐ、時空を超えたラブストーリー。

本人同士は出会うことができないけれど、ポストだけが時空を超えて、愛する人へ想いを届けてくれるのです。

手紙処のエッセンス:時空を超えるポスト

私はこの映画に登場する「ポスト」の存在がとても気になりました。

主人公が住む家を建てた建築家が「ここで幸せな生活が待っていますように」と祈りを込めたポスト。そのポストが、その家に住む主人公と未来に生きる恋人とを繋いでくれるのです。

主人公にとって、大切な人に出会う場所が「ポスト」になるのです。

手紙を持って家を出て、ポストまでの道を歩くとき、きっと主人公は大切な人に出会う心の準備をしているのでしょう。私は、この考え方に大きく共感しました。

手紙を書いて、そのポストに入れることで(たとえ郵便屋さんが来なくても)自分の想いを大切な人の元へ送り出している。

時空を超えて、大切なあの人へ届くことを願って、ポストに手紙を託しているのです。

手紙処には「壁ポスト」というものがあります。亡くなったあの人への手紙を投函していただければ、私たちがお焚き上げをすることで、その想いを届けられたらと考えています。

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イルマーレのように、ポストが時空を超えてあの人へ想いを届ける鍵になってくれたらと思います。

お焚き上げ、お坊さんがお経を読み、宗教的な意味で想いを届けているように感じるかもしれません。

しかし、私はお焚き上げをすることがゴールではないと思います。

最後には、自分自身が想いを手紙に綴り、自分の手でポストへ投函しているのですから。その行為があってこそ、時空を超えて、大切なあの人へ想いを届けることができるのだと思います。

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井上 城治 | 手紙寺 発起人
1973年生まれ。東京都江戸川区の證大寺(しょうだいじ)住職。一般社団法人仏教人生大学理事長。手紙を通して亡くなった人と出遇い直す大切さを伝える場所として「手紙寺」をはじめる。趣味は、気に入ったカフェで手紙を書くこと。noteを通して、自分が過ごしたいカフェに出会えること
を楽しみにしています。

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