05エピローグ

【小説】 アネモネダイアローグ#6

 エピローグ

(ああ、なんだか、とっても悲しい気持ち)
(クロエの人生を好転させることができなかった、悔しいよ)
(わたしたちのあきらかな力不足)
(だね)
(それにしてもさ、あの左肺の睡蓮、なんだかむかつくね)
(でも、叶わぬ恋って、どこか狂わせるところがあるよね)
(えー、でもやっぱりハッピーエンドがよくない?)
(そう思うよなあ。やっぱりわたしたちの手でなんとかしたかったな)
(脚本! なんとかならなかったの)
(うーん、まさか、左肺の睡蓮が、右肺の睡蓮のこと好きだなんて思ってなかったから)
(え? あそこってアドリブなの?)
(五章は、ほとんどふたりの即興劇だよ。かろうじて、それにふさわしい引用文を入れていったというのが、ほんとのところ)
(へえ、やるじゃん、あのふたり)
(あのふたりだけでも劇になるんじゃないかな。今度、それで一本仕上げてみよう)
(やあやあやあ! ブラボー 楽しかったよ)
(けっこう、さびしい劇になっちゃったね)
(観ていてどうだった?)
(わたし、ラップのところがお気に入り。
 ゲダウト! 熟れた房 遡るトラウト)
(ま、でも思いつきの割には楽しくできたんじゃない)
(また、こうして遊ぼうよ。今度は何にする?)
(リクエスト聞くのもいいよね)
(アネモネばかりでやったから、今度は別の花を招待してみるのもいいかもね)
(今度はみんなで魚になるの)
(人魚姫!)
(また、哀しい物語じゃんか!)
(じゃあ、ファインディング・ニモ)
(ニモ、いいね)
(パイレーツ・オブ・カリビアンは?)
(それ、人間。あと権利)
(それは言わないお約束)
(スイミーとかよさそう)
(はい、はーい。そろそろ打ち上げするよー)
(お、仕切り屋だ! 監督、及び主演、お疲れさまでした)
(これからは、右肺の、って呼ぶことにする)
(で、で、五章は、なに、ふたりの即興なんだって?)
(ふたりってできてるの?)
(ばかなこと、言わない。われわれは、役者です)
(これはおみそれしました! なんて、ほんとは、できてるんでしょう。白状しなよ)
(くだらない。なんか、あんたもいいなよ)
(君が右肺の、と呼ばれるなら、僕は、左肺の、と呼ばれ続けてもいいかな)
(……!)
(きゃー、なにー、今の)
(告った? 告った! のろけた? なんだこれー)
(左肺の。いい声でいいなよ、好きだって)
(言え、言え、言え!)
(好きだよ、右肺の)
(……!)
(きゃー)
(言ったー! 右肺、赤くなってるじゃん)
(あ、ごめん、ちょっと待って)
(左肺がなんか言おうとしている。聞こう)
(文化祭ノリで、まあ、勢いでやっているけれど、こういうのってあんまりよくない。僕たち、これから、ここを抜け出すから、もう追わないでね)
(分かった。ちょっと、調子に乗った)
(日々の泡、これにておしまい!)
(ブラボー!)

♦♦

(さっきの、あれは何?)
(あれって)
(は? なんでもない!)
(右肺の)
(それ、やめて)
(右肺の、君のこと、好きだよ)
(ふん、やめてっていってるでしょ)
(うーん、それじゃあ、こう言おう。
 君のことが好きだー! 
 なっとくした?)
(もう、知らないよ)
(右肺の。僕のこと、左肺の、と呼んでよ)
(いやよ……。……ヒダリハイノ)
(聞こえないなあ)
(左肺の!)
(左肺の?)
左肺の、君が好き!
 ふふふ、名前があるって特別なんだよ。
(右肺の)
(左肺の)
((睡蓮!))

アネモネダイアローグ <終劇>

*****

岡崎体育「FRIENDS」より一部歌詞を引用した。

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【小説】 アネモネダイアローグ#6

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サンキュー。枕のようなギモーヴがいつか突然、届きますように。
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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。物語を書きます。刺繍をします。インクの子どもたちの声を聞きながら。ホームページ http://www.roverdover.com / ヘッダー画:茅野カヤ
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