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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2020年7月の記事一覧

【spin a yarn】
わたしは、星の言葉の僕にならず、聖書の言葉の僕になろう。
星のおしゃべりは、好きよ。
不思議の、不思議を語るのをまばゆく見る。
星影の歌う賛美の大きいこと。たまに人のことを歌うこと。
不思議の、不思議を語るのを慄いて見る。

【spin a yarn】
わたしの嬉しいは、誰かの苦しいに、なっていないかな。
喜びを吟味する。
炭酸水を飲みながら、彗星を見ること。
無音なのに、あまりに大きいこと。
無音なのに、とても、嬉しいこと。

【spin a yarn】
祈る。
空から降る激しい雨が、やみますように。
やまない雨も確かにあること。
人の解き放った放射線の雨が、知恵により、やみますように。
知恵による先手は、賞賛されないけれど、気づいて感謝できるように。
政治に、千里の目が与えられますように。

【spin a yarn】
泡と光。
訪ねる者、ハライハライ。
遠巻きに見つめる者、フイルムと影、数多の太陽、ハライ。
凍える、トパーズめいたその繭を。
(溶かして形になるなんて)
カーテン越しに明日の太陽。
名乗りを上げる星々。
青白い顔を見せる麗しい孤独の弧。
(ほどけば音)

【spin a yarn】
「ソーダ好きだね」
「うん。涙が泡になるの」
「嘘」
「嘘」
「何かあった」
「うん。何もないよ」
「嘘」
「うん。嘘」
「泣いたら」
「泣かない」
「蛸って脳が足ごとにあるって」
「唐突」
「蛸焼食べたい」
「食べたい」
「行こっか」
「うん。ゆく」

【spin a yarn】
東京の大人の半分くらい、全然大人じゃないのかもな。
特別な事由もないならば、選挙権を行使しなかった少年少女は口を噤んでいていいと思うよ。
揶揄であり、軽蔑。ただ嫌いだよ。

【spin a yarn】
「素敵な雨模様」
「ん? これドット柄だよ。水玉」
「じゃあ、ストライプが雨模様かな」
「雨模様、あいにくの、って感じがするけれど」
「えー、雨模様ってかわいい言葉だと思わない? ご機嫌な雨模様です、って言いたいじゃない」
「ご機嫌な雨模様か。いいね」

【spin a yarn】
「星はどうする? トッピングする?」
「クラッシュしてまぜちゃう」
「ふうん、私はカチリカチリさせるのが好き」
「私は、スワークルの中でパチパチはじけるのが好き」
「だいぶ摘み取ったから、夜が暗くなってしまったね」
「月をトリプルスクープすればいいよ」

【spin a yarn】
インクの子どもたちがはしゃぐ。
内側の夢に住むわたしたちがそぞろにメイクアップをする。
「思うままに」
「自由に」
「大切なことを大胆に」
「そしてチャーミングに」
手を打ち鳴らす、舞台に飛び出す。
スポットライトを当てる。
わたしたちに戸惑いはない。

【spin a yarn】
7月の雨にはレモンカードが混ざるような気がするの、酸味のある黄色い幸せ。
天真爛漫はしばらくとっておくけれど、日々、目の奥に酸い喜びを届けるよ。
雨もまた、光の喜び。お気に入りの傘から溢れる音を拾って、タタタ。
レインブーツの、無敵にまっすぐ歩く。