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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2019年4月の記事一覧

【spin a yarn】
雨に耳を澄ます
時代の輪郭が見えてくるのは、もう少し後
それぞれに解像度の変わる
明日、詩を読む
MTF曲線の描き方を見る

【spin a yarn】
楽譜で音が聞けるでしょ
それで
星の歌うのを聴けないかって
夜の空を見上げる
(またたきはノイズだって)
(宇宙に出ても音は伝播しない)
(だから楽譜のように)
星を見たいと

【spin a yarn】
気が付いたことがあって、よかった、ひたすらに、また本を読もう。
足りないものが分かって、それなら努力のできること。
もう一度、はじめから。
歯車が、ぱちん、と。

【spin a yarn】
星を渡る
思いの速度では、遅すぎる
(肉体に潜む数多の抵抗)
(霊なら果たして)
抵抗を極限まで減らした、いつかの人類が隣にいても
それが未来だと気付かず
いつかの星の光につぶやいてしまう
星は鳥に語りかけている

【spin a yarn】
狼の瞳に少女の棲む
比喩の物語でも
幽閉の物語でも
未来の物語でも
遺伝の物語でも
或いは、それらの連作をいつか書こう
狼の横腹を枕にして眠る少女
そんな表紙の本を作ろう

【spin a yarn】
ソムリエの集まりみたい
じゃあ、わたしはカナの婚礼を差し出してみせる
祈り、注がれるもので、もてなしてみせる

【spin a yarn】
目を閉じれば、星の流れる
ずっと落下しているような
時折、強い光
いつか、こんなことが全くなくなってしまった時、不思議がらず、落胆せよ
お前の星は取り上げられた
それでも執着するならば
戻ることもあるかもしれない
今はなくさぬよう、ぎりぎりと歯を鳴らす

【spin a yarn】
早い春
親子のポートレート
(雪を演じているのは誰?)

【spin a yarn】
夕陽が綱渡りすれば、明るみが続くの
(白夜などはもしかして)
或いは、いつかの永遠の落下

【spin a yarn】
眠りが少しずつ満ちてゆく
耳たぶのうしろ
小指のつま先
その辺りから漏れてきているのでは、と
触れてみれば、確かに冷たい熱
まぶたがぼんやりとするまで
夜に似たものの広がりを追う
眠りの新芽のような棘が
骨にぶつかり、またたく

【spin a yarn】
おもしろいように開くのよ
春が手をかざす
ほころぶ音で賑やか
楽器よ
でたらめに叩くのではないわ
思い通りに弾くのよ

【spin a yarn】
ーメグのしゃしんはすてきねぇ
ーふふん、カメラとレンズがいいんだよ
ーあらぁ、けんそんしてるのぉ
ーリリィ、昨日の礼拝で知ったのね。すごいね
ーで、これなんのおはな?
ーニワトコだって。エルダーシロップのやつ
ーあれ、おいしいねぇ
ーソーダで飲もっか!

【spin a yarn】
星に手が届く
心の夜は穏やかに満ちる
久しぶり
待ってたよ
ただ首を振る
どんな結果でもいいじゃない、わたしは好きよ、君の歌
ただ首を振る
月が飲み物だと言ったでしょう、飲む?
酔いそう
酔うよ、目眩するほどに、星の声は高くなり
世界の秘密を歌うんだね

【spin a yarn】
ジャコウアゲハの飛ぶ様を
心にしまう
これもわたしの宝物
そういうガラス玉みたいな素敵なことを
いつか集めて本にしよう
たくさん旅に出よう
心の箱が萎れる前に
体はもう、眠っても眠っても
回復しないけれども
じゃあ、夢を見よう
素敵な夢をシェアしよう