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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2018年11月の記事一覧

【spin a yarn】
アドベントカレンダーを飾る。
明日からの朝の楽しみ。
聖書の通読は、旧約は小預言書に入り、新約はマルコの福音書。
オーナメントを飾る。
喜び楽しむこともいいでしょう。
不思議に素敵なことが、みんなのうえにありますように。

【spin a yarn】
心の夜を追いかける。
星の王子さまみたいに。
狭い心は、後ずさりすれば、たちまち夜。
明るみが兆せば、また夜の方へ向かう。
夜に、何か忘れ物をしている気がする。
狭い心だ、すぐに見つかる。
或いはそれは、星のまたたき。
遠すぎてそれは、時間のまぼろし。

【spin a yarn】
夢うつつに雨の音を聞く。
雨なら許されるように思い、もう少し眠る。
雨の夢を見る。
霧のように、雨の降る。
目を覚まし、晴れ渡っているのを知り、面食らう。
雨はどこに降っていた?
しばらくして、耳鳴りがやまないことに気が付く。
目を閉じれば、雨の降る。

【spin a yarn】
曇りの日に、少し時間を見失う。
影も眠そうにしている。
このまま、ぼんやり過ごせたらいいのだけれど。
時計は働いている。
影もいくらか濃くなり、自分の足で立つ。
(踊るように)
しかつめらしい顔をして外に出る。
影の手を取り、見せない心で、踊るように。

【spin a yarn】
コーヒーとチョコレートチャンクスコーン。頬張りながらデスクに向かう。モレスキンのノートに今日の予定を書き出す。やりたいこと、アナウンスすること、更新すること。たくさんあって、楽しみでわくわくしている。白いわたしたちが、うふふ、と笑う。久し振りで嬉しい。

【spin a yarn】
心があやふやのまま、朝。
わき出る雲をちぎっては口に寄せ、吹く。
少し厚手のコートにしようかしら。
わたしたちの、静かに頷く。

【spin a yarn】
夜の深みで遊んでいる。
それでも、もう、足がつきそうだ。
さあ、ねむれねむれ。
朝に見つからないうちに。
影が体から離れてしまう前に。
夜をこぼさず、夢に注いで、ねむれねむれ。
夜の続きで、わたしの影よ、踊りましょう。
少し、羽目を外して眠りましょう。

【spin a yarn】
心の眠る。
涙があれば、そっと拭う。
おやすみ、よい夢を。
心の、いつの間にか醒めていて、遊んでいる。
模様を描く、白地に白の刺繍をしている。
薄く現れた影と戯れる。
心に光が差していることを知る。
おやすみ、よい夢を。
心の言う。
私の涙も拭われる。

【spin a yarn】
夜を纏う時間をもう少し。
たちまちほどける朝を忘れて。
雨のスパンコールが、液晶ディスプレイの光を受けて瞬く。
しっとりと、夜に吸われる。
たちまちほどける朝。
夜は秘密をくるんで隠し、ひるがえって消える。
裏表のない朝がやってきて、おはよう、と言う。

【spin a yarn】
夢を巻く。
いつかの眠りに、それは広げられる。
時々、続きのような夢は、同じ反物からできている。
纏われて、肌触りで気づく。
風景は違うけれど、懐かしい。
悪夢を纏うことは、最近少ない。
けれど、その反物は棚にある。
よい夢を。
よい夢を纏って眠れ。

【spin a yarn】
煙たい曇りの日、くすぶりを鼻で嗅ぐ。
日の光が雲に遮られ、透明な煙を吐き、もくもくしている。
煙くて、自分が隠れるようで、それが好き。
心の堰を少し開ける。
指先から自分が溢れる。
透明な指で蜘蛛に触れてみる。
蜘蛛は驚き、巣の上を右往左往している。

【spin a yarn】
ぼんやり外の景色を見つめている。
本当は、何も見ていない。
何を見ているの?
問われた時になんと答えようか、考えている。
心の空に星の降るのを待っている。
皆がただ空を見あげることを許された、流星群の日を思い出す。
星の降る。
降らなくても構わなくて。

【spin a yarn】
眠りをおよぐ。
つま先に灯があり、魚がちらほらついてくる。
明るみの所は夢で、映写機で流されているようだけれど、ノイズはない。
眠りをおよぐ。
深みの方へ向かう。
いつか、戻れない所まで泳ぐことを考える。
いくらかのわたしは、すでに渡っていると思う。

【spin a yarn】
処方箋から薬がひとつ消える。夜、眠れるようになった私に不必要な薬。しばらく頓服薬として様子をみるけれど、それでも、このことを素直に喜ぶ。増える一方だった薬は、ようやく缶の中に収まるようになる。朝の薬は黄色い缶。夜の薬は青い缶。昼の薬をそれぞれに分けて。