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spin a yarn

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私の世界はどこまでも平ら、レイヤーの目を入れたり消したりして、時々君の前に現れよう。 石川葉による小さなお話の連作。
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2018年5月の記事一覧

兄弟の眠り

兄弟の眠り

丸くなって眠る。
そんな夜が必要。
寂しくても、こんこんと眠る。
兄弟の眠りと名付ける。

2018.5.10 tweet【spin a yarn】

はばたきでうたう

はばたきでうたう

怖い美しさを、いつか、わたしも。
(紡ぎきったら、もしかしたら)
(口を失い、はばたきでうたうの)
(言葉を失い、はばたきでうたうの)

2018.5.5 tweet【spin a yarn】

闇の中なら

闇の中なら

弱い明滅。
それでも、まだ星と思うの。
薄い香気。
それでも、まだ花と思うの。
闇の中なら、直ぐに。
闇の中なら、仄かに。

2018.5.4 tweet【spin a yarn】

雨を運ぶ。

雨を運ぶ。

夜に雨を運ぶ。
いくらかこぼれて、それは睫毛を濡らす。
夢を見ていたの、と言う。
雲が流れて、その脇では御使いのような姿が、言葉を編んでいる。編まれた言葉が口の中に放り込まれて、驚いて目を覚ましたら、泣いていたの。
夜に雨を運ぶ。
誰かの睫毛を濡らし、雲は北進する。

2018.5.3 tweet【spin a yarn】

足の着く。

足の着く。

夜の深みを泳ぐ。
いつの間にか、足が夜の底に着いてしまうまで。
それはもう、夜の浅瀬で、気の早い鳥や人や虫が、水面に音を立てる。
もしもし、起きていますか。
独り言が泡になるのを楽しんでいる。

2018.5.2 tweet【spin a yarn】