Kaz UTASHIRO
ハッカーを読め (5/7) 『ハッカーと蟻』
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ハッカーを読め (5/7) 『ハッカーと蟻』

Kaz UTASHIRO

過去に雑誌等に書いた記事を再掲しています。編集前のものなので、出版されたものとは異なるし、掲載にあたり若干修正している場合もあります。これは2007年に発売された、UNIX MAGAZINE Classic に書いたもの。

ルーディ・ラッカー『ハッカーと蟻』

ルーディ・ラッカーは作者自身がプログラマでありハッカーであり、元々は博士号を持つ数学者で今はサイバーパンクSFの旗手、ついでに大学でプログラミングを教えていて、実は哲学者ヘーゲルの子孫ときているので、その存在自体が琴線にビリビリ触れまくりの作家なのである。はじめて読んだラッカーの著作が本作品で、他の作品は古本屋を駆け回って手に入れた。

この作品の主人公はシリコンバレーで働く中年プログラマで、人工生命技術を使ってロボット用のソフトウェアを進化させるのが仕事だ。しかも、ハックのしすぎで奥さんは子供を連れて家出してしまって一人暮らしという、思わず感情移入してしまう設定。これはラッカーの自伝的小説でもあり、彼がオートデスク社でプログラマとして働いていた1990年前後は、ぼくがシリコンバレーに長期滞在することが多かった時期と重なっているのも共感を誘う。

ストーリーの方は、サイバースペース中のバーチャル蟻をめぐるハチャメチャなもので、とても簡単には説明できない。作中で主人公が LISPを批判している文章が面白いので、それを載せておこう。「現実のコンピュータチップ上で LISP を走らせるのは、中国語をしゃべれない友だちに中国語トラベル辞典を使って中国語で手紙を書き、手紙と一緒にそのトラベル辞典を郵送するようなもの」だって。ラッカーはLISP嫌いだったのか?


大森望

訳者の大森望さんによるあとがきをネットで読むことができる。『「よそのコンピュータに無断で侵入して悪事を働く人」を「ハッカー」、その行為を「ハッキング」と呼ぶのは明らかな誤用』とも書いているが、この辺の認識については、最初に紹介した山形浩生さんの記事を読んでほしい。僕の感覚は山形氏のそれに近い。

ルーディ・ラッカー

ラッカーの著作のほとんどは、現在新刊では入手不可能だ。古本を探し回った2000年前後は、ネットでもなかなか見つからず、かなり苦労したものだが、最近は Amazon の中古販売で大概手に入るようになっている。

ラッカー氏は、まだ精力的に活動を続けているようだ。

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