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Livongo Healthの成長

これまでの記事では主に複数企業を紹介する形を取ってきましたが、今回は少し変わって一つの企業についてその成長過程をまとめてみました。Livongo Healthという糖尿病予防ソリューションを提供している企業は他企業を相手にその従業員の血糖値を管理、医療費の削減に貢献しています。

Livongo Health概要

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Livongo Healthとは糖尿病などの生活習慣病の患者を対象にコーチングサービスを提供する米国ヘルスケア企業で、雇用主、保険、協会、その他のプロバイダーを含む企業を相手に個人の血糖値監視の為のデバイスとコーチングを利用者1人当たり月額$60~$70で提供しています。

Livongo Health創設後にはTullman氏が勤めていた7Wire VenturesやGeneral CatalystPartnersから資金調達し、他企業とパートナー契約や買収を通して成長を遂げてきました。

Livongo Healthの沿革

Livongo Healthの母体は2008年にKimon Angelidesによって創業されたEosHealth, Inc.であり、2014年9月に元ベンチャーキャピタル創設者でEosHealthにも投資をしていたGlen Tullman主導でLivongo Health, Inc.に社名を変更。

2017年にLivongoと同様に血糖値測定用デバイスの開発と体調管理サービスを運営していたDiabetoを買収。2018年には個別の体調管理サービスを提供するRetrofit、そして2019年にはデジタル行動療法を提供するmyStrengthを買収しました。

その後2019年7月にNASDAQに株式上場し、2020年にTeladoc Health, Incに吸収合併されています。

Livongo For Diabates: サービス概要

サービス利用者にデバイスを配布し、そのデバイスから測定される利用者の血糖値情報を他の利用者のデータから相対的に評価します。その評価からAIによる行動アドバイスや適正値を超える値が検出された場合には数分以内に社内の認定糖尿病教育者から直接連絡が届く仕組みになっています。

下の公式動画でわかりやすく説明されていました。

また病院での治療の際にはそれまでの患者データと電子カルテの統合が可能になっている様です。

業績の変遷

米国CDC(Center for Disease Control and Prevention)の統計によると2020には3420万人が糖尿病を患っており、これは米国人口の10.5%に当たります。また、18歳上の8,800万人(米国人口の34.5%)が境界型糖尿病患者として糖尿病予備軍と考えられています。

医療費の90%は、慢性, 行動的な健康状態に依るものと推定されています。その中でも糖尿病や高血圧を考慮すると、早急な対処によるものだけでもその市場規模は467億ドルに昇ると考えられています。

これら糖尿病患者の治療と予防を目的として同社は年々規模を拡大しています。下の図はTeladoc, Livongo Healthの2020年9月のIR資料です。

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資料には同社の糖尿病プログラムの利用者が過去3か月間の血糖コントロールを反映する臨床指標であるHbA1cを大幅に低下させることに成功したことが示されていました。その他にJournal of Medical Economicsに掲載された論文ではLivongo Healthのサービス利用者が医療費を21.9%削減したことも示されています。

上の資料は2019年と比較した2020年次の資料でしたが、サービス開始時から2019年の利用者数の推移と2018年から2019年の売り上げ推移は下のようになっています。

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業績変遷の背景

Livongo Healthは設立当初CEOのTullman氏がそれまで勤めていた7Wire Venturesというデジタルヘルス企業を対象に投資を行うベンチャーキャピタルからの初期投資とGeneral CatalystPartnersからの1,000万ドルの投資でシリーズA資金調達を成功させました。

General Catalyst PartnersのHemant Taneja氏は投資の決め手をLivongo Healthの医療費の削減への可能性であったと述べています。その後大学等との臨床研究を通して臨床医にそれまで以上の多くのデータを提供しています。2015年にはKleiner Perkinsという投資企業主導の元で2,000万ドルの資金調達を成功させています。

2019年にはIPOで3億5,500万ドルの調達に成功しましたが、その翌年2020年8月に同じく大手遠隔医療企業であるTeladocがLivongo Healthを185億ドルで買収しました。

Teladocとの合併後

大手企業同士の合併により下のそれぞれの企業が持つ規模を併せて展開することが可能になりました。

Teladocはアメリカ国内に7,000万人のユーザーを抱え、175カ国以上の国でサービスを展開、2020年の利用者数は1,000万人に上っています。対してLivongo Healthは41万人以上のユーザーを抱え、30%以上のFortune 500に掲載される企業で使用されており、上位100にランクされる病院の内60の病院で使用、2020年第2期までの段階で7.5億回のDigital Transactionが行われています。

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合併後のTAM (Total Addressable Market) は1,210億ドルと推定されています

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最後に

今回は米国の大手遠隔医療企業で糖尿病予防の為のサービスを提供するLivongo Healthについてまとめてみました。対企業や研究へのサービス展開で、設立から短期間で大きく成長を遂げたデジタルヘルス企業の例としてLivongo Healthを取り上げました。企業としてのあり方や経済、業界の先見のお役に立てば幸いです。


読んで頂きありがとうございました。

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