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Health Fidelity, Flatrion Health: 非構造化データの活用: 医療の効率を上げる企業達

少しづつ暖かくなってきましたね。先日ふと天気予報はすごい技術だなと感じました。観測地からの情報を集めて先を予測する技術を文明の発達前に実行しようと発想したことが偉大だと感じます。いつの時代も情報の重要性は変わらない様ですね。

そんなことで、今回は医療の現場で活用しきれていない情報を集め、治療と研究開発の効率を上げることを目的とした事業を展開しているアメリカ合衆国の2社:Health FidelityとFlatiron Healthをご紹介します

Health Fidelity:病院や保険会社に向けた健康異常に対するソリューション

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この会社はスタンフォード大学の外科および生物医学情報学研究の非常勤教授兼臨床情報学者であり、Vanguard Medical Technologies(VMT)のCEOであったDan RiskingがVMTの派生企業として2011年に創設されました。医療に於いて治療の評価とその改善の為に電子カルテ(EHR)は大きな役割を果たします。しかしそこに含まれる重要な情報の多くが特定のフィールドでは無くメモとして残されていた為に、そのような非構造化データを抽出し分析する技術を開発しました。

これまでの電子カルテには活用されないまま埋まったデータが数多く存在し死亡率や医療費に大きな影響を与えていることがわかっており、医師や看護師が患者の情報をマークしてもその評価が正しく行わていませんでした。
マッキンゼーグローバルインスティテュートの2011年のレポートによると、米国の医療がビッグデータを創造的かつ効果的に使用して効率と品質を向上させた場合、これらのデータから得られる潜在的な価値は、毎年3,000億ドルを超える可能性があり国の医療費の内8%に相当します。

そこで自然言語処理によって患者のリスクの適切な評価と最善の治療法を計算することで従来手動で行われ数百万ドルを費やしていた作業を低コストでより効果的に行えるようにしました。

2013年に米国立科学財団NSFはHealth Fidelityの活動の発展の為に150,000ドルの助成金を授与しています。またピッツバーグ大学医療センター(UPMC)は2014年にHealth Fidelityとの連携を始め、その運用効率とコンプライアンス管理を強化し2015年には1,900万ドルを投資しています。

同年Health FideltyのCEOはStericycleという医療廃棄物の処理を行う企業でSVPを勤め、BerylHealthという医療コミュニケーションを提供している企業の利益向上に大きく貢献したSteve Whitehursが務めることとなりました。

その後2019年にChange Healthcareと協力し学習技術をリスク調整コーディングサービスに組み込み保険会社と請求者がより適切に健康異常に対処することが可能になりました。

そして2020年にはコロナ禍による医療圧迫の中で効率を高める為に”Lumanent Pre-Encounter Prep Report”と呼ばれるシステムを導入。これにより患者の状態を個々に把握し、それらの解決の為に最も最適な動線が計算されます。


Flatiron Health:研究開発の為のデータ構造化

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米Flatiron Health社は、癌診療向けの電子カルテ「OncoEMR」を全米の医療機関に提供するサービスだけではなく、電子カルテで得た匿名化された臨床情報を構造化し、研究開発向けに提供するサービスも手掛けています。

この企業は2012年にNat Turnerによって創設されました。彼は従兄弟が白血病と診断された際に小児がんの治療法とその有効性に関する情報へのアクセスが困難であったことと多くの癌治療センターとその研究員たちが他の業界で扱われている分析ツールを用いていないことからビジネスパートナーであったZach Weinbergと共にFlatrion Healthの設立に至りました。

創設1年後の2013年にGoogle Ventures、First Round Capitalなどから800万ドルを調達

2014年にGoogle Ventures主導のシリーズB資金調達で一億3千万ドルの資金調達に成功しました。この資金の一部を用いてAltosSolutionsの買収に成功した結果、当時1,000人程であったFlatrion Healthの使用者にAltosを使用していた当時約1,300人の医療の専門家が加わり、ユーザー数を倍に伸ばすことに成功しています。また同年、癌関連遺伝子を網羅的に解析するプロファイリング検査を提供している米Foundation Medicine(FMI)社と提携し、癌研究の促進を目的とした臨床-ゲノム情報データベースの構築を開始しました。

2016年にバイオテクノロジー、医薬品製造企業で在るRoche主導のシリーズC資金調達で1億7500万ドルの資金調達に成功します。これに当たってRocheはFlatiron Healthと数年間にわたる非独占契約を結び臨床試験, 研究のサポートと個別医療の実現を目指します。Roche最高執行責任者であるO’DayはFlatrion Healthの取締役会に就任しました。同時にその年Flatiron Healthは米国食品医薬品局(FDA)と連携を開始し匿名化された臨床データセットを共有することで研究のサポートを開始しました。

そして2018年には、Rocheが19億ドルでFlatiron Healthを買収しており、2020年には英国国立医療技術評価機構(NICE)との連携を発表しています。

Flatiron Healthは企業の買収も併せてデータ基盤の確立と研究者, 施設とのネットワークの構築によって独自の価値を生み出しており、他企業との差別化が十分に図られた企業であると考えられます。


最後に

今回の記事は少し長めにそれぞれの企業の沿革の様な形になってしまいました。両者ともにサービス内容は似ていますが、そのターゲットとアプローチ方法は異なります。Health Fidelityは主に医療施設や保険会社を相手に健康異常への対策としてのソリューションを提供しており、Flatrion Healthは主に癌の研究開発の促進を目的としたデータの構造化と企業や研究施設間のネットワークを築くアプローチを行っています。

今後進化するセンサー, 通信技術によって得られる情報は量、質ともに大幅な向上が予想されます。冒頭に述べた先を予測する技術を医療に応用する先駆者として、活用されない生のデータを分析可能な構造化データに変換する事業の今後の成長が楽しみです。


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