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Babylon Health, WeDoctor: イギリスと中国の医療サービス

海外の遠隔医療サービスをその国の制度と一緒に調べてみました。

コロナ禍から耳にすることが増えたオンライン診療ですが、日本では1997年から厚生労働省の許可は下りていました。当時は技術的な問題から利用されることは多くありませんでしたが、インフラが整えられた今では様々な企業が遠隔医療サービスの提供を始めています。

海外では先んじてサービス展開をしている企業があり、今後の社会のモデルとしてその国の医療制度や背景と共に成り立ちを学ぶことで業界予測や課題の発見に繋がると思われます。今回取り上げたのはイギリスのBabylon Healthと中国のWe Doctorです。

Babylon Health

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英スタートアップ企業Babylon Healthは医療サービスプロバイダとして医師と医療専門家との遠隔相談を提供しております。所謂遠隔診断プラットフォームとそしてサービスを提供しており、必要に応じて医療専門家への紹介や薬の処方箋の郵送なども行っています。

英国の医療制度とBabylon Healthのポジション

イギリスでは国民保険サービス(NHS)によって国民の医療費は原則無料で行われており、診察は緊急事を除いてはGPと呼ばれるかかりつけ医に担当してもらう必要があります。同社はGP at handというチャットボットによる医療診断、24時間年中無休で利用可能なオンライン診断、対面診断予約のサービスを提供してます。このサービスはAIドクターの利用とプラットフォームとしての二つの役割を果たすことでGPの負担を減らし、かつ数週間かかることもある予約を2時間にまで減らすことに成功しました。

ビジネスモデル

GPは通常NHSより登録患者数に応じて平均$80支払われており、同社はその負担を軽減していることにより、同様にNHSから報酬を受け取ってます。そしてサービス使用料として月額$7.99の収益を得ています。

企業成長の流れ

創業時にUCL(University College London)病院の元医療ディレクターであるポールグリン博士の監督の元100人以上の医師を採用し、2014年にリリースされたこのサービスはその年イギリスの社会的ケア事業の登録、監査、評価を行うCare Quality Commission(CQC)に登録されました。また2年後の2016年にはシリーズAラウンドで$2,500万の資金調達に成功し、その資金からAI開発に力を入れGP at Handの開発に至りました。

2019年にはシリーズCに於いて$5億5000万の資金調達に成功し2020年にはCOVID-19のケアアシスタントとして米国に進出しました。また同年8月にはBabylon Healthに所属する研究員のAI診療に関する研究がnature communicationsに掲載されており、そこでは1,671の症例の設問に対してGPが出した平均スコア71.4%に対しBabylon Healthのアルゴリズムは77.6%のスコアを記録し72%の医師を上回ったことが記されました。

現在はアジアやアフリカに展開する大手保険会社Prudential Plcと契約を結び、今後その市場をより広めると公表しております。

We Doctor

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WeDoctorは主に中国に展開する遠隔医療プラットフォームです。WeDoctor Healthcare、WeDoctor Cloud、WeDoctor Insurance、WeDoctorPharmaの4つの主要事業を運営しており、2,700以上の病院、22万人の医師、15,000の薬局、そして2,700万人の月間アクティブユーザーを抱えております。

中国の医療制度

中国では個人の戸籍や就労状況によって保険制度が異なり、都市部での就労者と農村部の住民、都市部での非就労者によって分類されます。
その分類によって納める保険料が異なり、また医療費はその保険料にそって請求されます。また大規模医療施設への患者の集中を避ける為に病院にはその施設によって階級が設けられており、その階級が低いほど自己負担額も低くなる仕組みが作られています。しかし尚も中国では人口増加と急激な経済成長に医療の対応が追いついておらず病院側の人員不足や患者側の待ち時間の増加と行った課題がありました.

現在中国は”Healthy China 2030”という目標を掲げており、全国で提供される医療サービスの質とレベルを大幅に改善し健康の公平性を確保することを目指しています。
このような背景から中国国内では遠隔医療ビシネスの発展が見られています

WeDoctorの発展

2010年にGuaHaoという名で設立され病院で待ち時間を減らす為のサービスをリリースしておりました。その後2年間で中国のeHealthへの投資額の40%を調達し2015年には$3億9,400万の資金調達に成功。社名をWeDoctorに変更しました。この時点でWeDoctorはサービスの中に遠隔医療を組み込み、それまで4時間かかった診察までの時間を10分に短縮しオンラインからの薬の処方まで行える仕組みを構築しました。

その後中国初のインターネット病院であるWuzhen Inteernet Hospitalを設立し2016年にはWeChatを運営するTencentHoldingsなどの大手投資家から合計$4億9,500万の資金調達に成功しました。それらの資金から手術センターの設立や全国的なインターネット診断、治療プラットフォームの構築を行いさらにTencentはWeChatの電子決済サービスにWeiyiを統合し、支払いをWeChatPayから一括で行えるかたちを整えました。ZhongAn Insuranceという保険会社と提携しオンラインヘルスケアの保険金支払いの促進にも成功してます。

現在は12の医療施設と27のインターネット病院を運営しており、そのユーザー数は2億1000万人に登ります。そのような過程を得てWeDoctorはWe-Medical, WE-Medicine, We-Insuranceの3つの主要事業を持つに至りました。それらの収益比率はそれぞれ45%, 20%, 30%となり、総利益は約2億8,000万元。今年2021年の資金調達ラウンドで$68億の価値判断を下されIPOに踏み切る予定です。

最後に

これら遠隔医療サービスは地域によるサービス格差や予約から診療までの動線最適化を熟した上で活用可能なデータを蓄え、その利便性と応用可能性を向上させています。今後5G通信システムの普及に伴い通信速度と容量の向上が成された先により詳細なデータの取得と分析が可能になると予想されます。日々向上する解析技術と医科学研究も併せ、空間の隔たりを解消できれば利便性と市場規模は飛躍するでしょう。そのプラットフォームを提供することで得られるデータの量と価値を考慮すれば、なぜ今企業がこの業界に参入しているのかも納得できます。


弊社ではウェアラブルデバイスのデータを活用した精神疾患の研究を行っています。ご興味ある方は是非お気軽にご連絡下さい。

TechDoctor株式会社:https://www.technology-doctor.com/


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