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ELECTRO produced by TK

小室哲哉のビルボードライヴ-福岡公演-へ行ってきた。
御大は近年オーケストラセットにハマっているらしく、TMネットワークともglobeとも違った新たな試みのステージである。
開演前に御大のインタビューを読んでいると、それはEDMとオーケストラが融合したTomorrowlandというベルギーのフェスより着想を得たそうだ。
そういえば僕の敬愛する、Haciendaというマンチェスターのクラブもオーケストラセットのレコードを録音していた事を思い出した。

このコンサートの不思議なところは予めセットリストが公開されているところである。

セットリスト

僕の中で小室哲哉の印象といえば"globe"や"安室奈美恵"で有名なイケイケのおじさんといったところ。
この度のセットリストを見る限りGet Wildしか認知の曲がなかったのだが、これも何かの縁と会場へ足を運んだというわけである。
(かねてより、僕の旧姓・KAWAHARAだった頃のイニシャルが他ならぬTKだったので、いつか御大と接触してみたいという思いはあった。)

開演前

福岡港にあるサンパレスホールはホテルに併設している。
会場へ着くと暑さ対策なのかミストが撒かれており、辺りが薄煙につつまれて幻想的な景色となっていた。

会場の様子

以前のツアーではフルオーケストラセットが行われており、今回は人数を減らした少数精鋭とのことだが、それでも30人程の人員が組まれていた。
メンバーは指揮者に弦楽器、管楽器、パーカッション、打ち込み、そしてTKである。
TKはグランドピアノとオルガン系のシンセ(?)、MOOGシンセ(?)、マルチシンセ(?)の四機に囲まれるようなセットを組んでいた。

第一部

まずオーケストラが登場し調律から始まる。
そして指揮者に続きTKが入場。
TKの衣装は、まるで戦艦の船長のような肩パットを装着した礼服であった。
そしてTraffic Jamがはじまる。
これはTKのジャズアルバムからの一曲である。
弦楽器を、まるでシンセサイザーの一音のように散りばめた編曲で、それはイゴーリ・ストラヴィンスキーのペトルーシュカのように自由な旋律のクラシックであった。
その美しい音を聴きながら、僕は母の事を思い出していた。

T KAWAHARA回想

僕の母は(歪んだ)英才教育を謳っており、実家時代はクラシック音楽を聴かされて育った。
地元の文化ホールで行われる子供向けクラシックコンサートに連れて行かれたりもして、その生の演奏には子供よりも母が感動していた。

T KOMURO再生

母の感動の声を思い出しながら、それに失笑を送っているうちにコンサートは二曲目へと続いた。
クラシックでありながら地響のような音が鳴っており、コントラバスの弦が織りなしているのかと思っていたが、それは打ち込み部隊が鳴らしている音だと後ほど気付いた。
二曲目以降それが顕著になったのだが、ややバスドラムのテンポが遅れ気味だった。

僕が以前Ryoji Takahashiのバンドへパーカッションとして参加していた時に、シンセサイザーのカーヤンが打ち込む電子的なアルペジオが、バンドの演奏と合わない出来事があった。
カーヤンは
『Bpm的には合ってるんすけどね』
と語り、結果却下になったわけだが、TKの打ち込みが遅れを取る現象もそれかもしれない。
僕の耳にはそれがやや不快であったのだが、楽団は特に気にしていない様子だった。
もしかすると客席へ届く過程で波長がズレているのかもしれない。

などと思いながら聴いていると、曲の始まりにクリック音が流れているのに気付いた。
打ち込みはそのクリックを元に鳴らし、それを聴いてからオーケストラが奏でるからズレが生じるのかもしれない。
もしくはオーケストラの生音に対する打ち込みのデジタルが原因か。

等々、疑問はありつつも総合的には素晴らしい出来のまま第一部は終了した。
歌声が入る隙間のないような、独立したクラシックの楽曲となっていた。

第二部

二十分の休憩を挟んで第二部が開演した。
TKは水色のジャケットに着替えて登場した。
二部の方はTMネットワーク木根さんがゲスト参加する曲もあり、また構成としてはオーケストラをストリングスとして用いたようなアレンジだった。
二部は一部よりもエレクトロ色の強まった内容で、TKは時折ショルダーキーボードを登場させて会場を沸かせていた。
そしてSouth Beach Walkで本編が終了した。
素直に良い曲だった。

セットリストに書かれていた背徳の瞳はアンコールとして演奏されていた。
そこでTKはなんとヴォーカルとしてマイク握っていた。
YOSHIKIを意識した歌声は、どちらかというとファンサービスに近いパフォーマンスだった。
ギタリストのジェフベックがマイクを持ち歌う曲が存在するのだが、僕はそれに近い感想を持った。
絶妙に下手。

アンコールはさらに続き、ゲストの木根さんを再び招いてもう一曲演奏された。

大ラストは全員が捌けた後にTKだけが残り演奏していた。
手厚いファンサービスに皆起立していた。
最後はグランドピアノでCan You Celebrateが演奏された。
そうして大喝采の中コンサートは終了した。

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