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任天堂決算の衝撃 〜広告費のナゾ〜

Twitter見てたら任天堂の決算が話題になっていた。

売上高+108%
営業利益+428%

何やらとても凄そうな数字。

古巣の会社なので嬉しい限りである。
いつもならここで気分良くTwitterを閉じて終わりだが、今回はあまりにも盛り上がっているので自分でも少し分析してみたい。

営業利益+428%の凄まじさ

もう一度決算の内容を見てみよう。

売上高       前年同期比 +108%
営業利益    前年同期比 +428%

前年同期と比べて「売上高2倍」「営業利益は5倍」ということになる。

これはほとんど見たことないレベルのいびつな数字である。
売上高2倍で営業利益5倍ということは、営業利益率が2.5倍である。
前年同期の16%から今期は40%に上昇している。何が起きたのか?

「1. 粗利率」「2. 販管費率」に分けて見ていきたい。

1. 粗利率の上昇(48%→59%)

理由は決算説明資料に明記されている。

売上総利益率は、円高による為替のマイナスの影響があったものの、主にゲーム専用機の売上高に占めるソフトウェアの売上高の割合や、ソフトウェア売上高に占める自社ソフトウェアの売上高比率及びデジタル売上高の比率が上昇したことで、前年同期比10.6ポイント増の59.1%となりました。

要は、「ソフトの売上割合が上昇した」「自社ソフトの割合が上昇した」「デジタル版の割合が上昇した」ということ。一つずつ分析していきたい。

「ソフトの売上割合が上昇した」

毎年魅力的なソフトが発売されるので、年々ハード一台当たりのソフト購入数が上がるのは当然のこと。なのでこの現象に関しては、発売4年目ハードとしては自然だと思う。

なお、今期はそれに加えて昨年9月のSwitch Lite発売によるハード販売単価の減少というのもあったはず。

「自社ソフトの割合が上昇した」

マリオやゼルダ、どうぶつの森などは自社ソフト。ドラクエ、妖怪ウォッチなどは他社ソフトとなる。
自社ソフトの方が儲けが大きい傾向にあるので、自社ソフトがたくさん売れれば利益率も上がる。

今期は「あつまれ どうぶつの森」が爆売れしたことで自社ソフトの割合が増えたのが大きかった。

「デジタル版の割合が上昇した」

カートリッジ版は「物理的なモノ」であるため、製造コストがかかる。カートリッジを入れるパッケージのコストもかかる。卸や小売まで運ぶ輸送コストもかかる。

一方でダウンロード版は上記のコストは一切かからない(簡略化のためPINコードやPOSAカード販売の説明は省く)。ダウンロード版特有の決済手数料はかかるが、上記のトータルコストよりも安いはず。なので、ダウンロード版の購入割合が増えれば利益も増える。

今回、このダウンロード版需要の増加がコロナ渦における一番の追い風だったのではないかと思ってる。
外に出なくなるためダウンロード版の購入が増えたと推測している。

しかも、一度ダウンロード版の購入を体験したお客さんはコロナ後も引き続きダウンロード版を買う可能性が高まるはず。今回ダウンロード版購入者を増やせたことは、任天堂にとって今後の大きなプラス要素になったのかもしれない。

ちなみに、2020年6月に配信開始した「ポケモン ソード・シールドの追加コンテンツ」もデジタル版割合上昇の大きな要因のはず。

2. 販管費率の低下(32.5%→18.7%)

販管費率が異常に下がっている。決算説明資料には下記の記載がある。

売上高に占める販管費の割合は、主に売上高が増加したことにより13.8ポイント減の18.7%となりました。

売上が増加したから販管費率が下がったとのこと。

確かにそうである。しかし、販管費が売上ほど増えていない説明もほしい。

ここで今期の広告宣伝費を見てみる。前年同期が145億円に対して今期は118億円である。減っている。売上倍なのに広告費が減っている。

広告宣伝費の減少

ここが今回の決算最大のおもしろポイントだと考えている。

売上高に占める広告宣伝費の割合がたったの3.3%なのだ。

これがどれだけ異常なことか、過去の広告費割合の推移を見れば分かる(今回の決算は一番右の21')。

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※任天堂HPからの情報をもとに作っており05'〜08'のQ1は出せない

この表から分かることは、

①09'から21'までのQ1のうち、広告宣伝費割合が7%を下回ったのは今回が初。しかも大幅に下回っている。
②09'から20'まで全て、通期の割合はQ1よりも低い。

②の傾向通り進むと、今期通期の広告費割合は3%を切るかもしれない。
任天堂恐るべし。

なぜ今期の広告費割合が急低下したのか?

正直全く分からない。とりあえずラフな推測だけでもしてみたい。

・Switchが据置・携帯一体型だから
Switch以前の任天堂は、据置機と携帯機の2ハード展開をしてきた。
「ゲームキューブとゲームボーイアドバンス」「WiiとDS」「Wii Uと3DS」。

これに対して、Switchは一つで据置機にもなるし携帯機にもなる。宣伝効率が良さそうである。
ちなみに去年9月からNintendo Switch Liteという携帯専用機も販売しているが、これにも「Switch」という名称が入っているので、完全に名前の異なる2ハード展開するよりは効率が良さそうである。
この一体型の宣伝効率の良さが、ある程度周知の広まった4年目に突如目に見えるカタチで表れたのかもしれない。

・YoutubeやSNSでの拡散
ここ数年ゲーム実況動画やSNSでのゲーム情報投稿が盛り上がってるが、今年に入ってからの勢いは凄まじいと思う(あくまで体感ベース)。

それもあって、自社で広告打たなくてもユーザーが勝手に拡散してくれる割合が高まってるのかもしれない。最近は法人向けの著作物利用ガイドライン見直しも頻繁に行っているようなので、この流れは加速するかもしれない(下記リンクのQ&A9を参照)。
https://www.nintendo.co.jp/networkservice_guideline/ja/index.html

広告費割合が大幅低下した理由について、何か良さそうな推測があればコメントなりお願いします。





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