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02 - 毎年「10000000㎡」の茶園が減り続けている理由

こんにちは!
株式会社TeaRoomです。

「はじめまして、TEA ROOM へようこそ。」の中では、TeaRoomの開発環境や提携についてをお伝えしました。
現在弊社では、TeaRoomとグループ企業2社で茶業界のサプライチェーンを網羅するで行う形で事業展開をしています。

グループ企業については以下のnoteをご参照ください。

では、なぜ私たちはこの座組みにすることを決めたのかを詳しくご紹介していきます。これからお茶の産業に入っていきたい方には、ぜひ読んでいただきたいnoteです!

■衝撃の数値「10,000,000㎡」

これは、毎年減っているお茶の栽培面積です。(平成30年から令和1年までの数値を参考にしています[1])2020年はコロナが追い風になって静岡を中心に生産量も減少し、単価も落ちています[2]。

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単価の下落をわかりやすく理解するために、毎年の「煎茶」の荒茶*の平均価格を比較してみましょう。
5年前の2014年は「1,544円/kg」[3]、3年前の「1,373円/kg」[4]、そして2019年時は「1,178円/kg」[1]と、年を追うごとに下がっていることが分かります。

*荒茶とは、第一次加工済みのお茶で、茶の専門商社や茶市場等で取引がされる状態のものです。

以下のグラフからも、平成15年から令和1年の約15年間でお茶の価格はほぼ半値に落ち込んだことが分かります。

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引用元:茶をめぐる情勢 令和2年[1]

■消費者の需要と生産者の疲弊

日本茶のサプライチェーンは現在、
「生葉生産者(お茶を生産する農家)→ 荒茶工場(荒茶という一次加工済みのお茶を作る工場)→ 市場 →茶商(二次加工をする製茶工場)」
を通して、市場に出てくるという構造になっています。

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この構造の中で最も力を握っているのは、川下にいる卸業者や小売業者*。そしてもちろん、その先にあるお客様のニーズです。

* 卸業者とは、製品をメーカーから仕入れて小売業者に販売する業者のこと、小売業者とは、製品をメーカーや卸業者から仕入れてお客様に販売する業者のことを指しています[5]。
以後、「川上」「川下」という言葉を使用しますが、
サプライチェーンの流れを川に例えて、「川上」はお茶を生産する部分、「川下」はそれを加工して卸す部分、を指しています。

日本茶の最も上流を担う、生産者に求められるお茶の品質や単価は、最も下流にいるお客様のニーズに従って決定します。ここ数十年はペットボトル飲料としてのお茶のニーズが高まったことで、お茶の単価が下がり続け、そのしわ寄せが生産者にきています。

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■ペットボトルニーズの高まり

私たちの生活になくてはならないものとなった、ペットボトル。このニーズの拡大はなぜ起こったのかを、考察していきましょう。

①都市型の「働く」を中心とした生活スタイルになり、持ち歩き出来る飲料の需要が高まったこと
都市型のワーク/ライフスタイルになることで、都心部に一人暮らしをして、仕事を夜遅くまでして帰る、という生活様式が定着し、持ち歩ける飲料を常に携帯する人が増加しました。

②多様化した食に対応する、クセのない飲料が求められたこと
食の多様化(メインは欧米化)によってどの食品にもあう飲料が求められ、そのポジションにお茶が見事にフィットしたという意見が多く見られます。

③核家族化が進んだことで、お茶を淹れるのに適切な道具であった「急須」の使用頻度が極端に少なくなったこと
大家族の人数分のお茶を淹れるには、何煎でも何人分でも注げる急須がとても便利です。しかし、一人暮らしや夫婦のみの家庭、ライフスタイルが個人によって様々になった今、同時に大人数にお茶を注ぐ機能は重視されなくなっていきました。

これらの消費者のライフスタイルの変化を受け、効率的に日中の止渇(喉の渇きを潤す)の役割を果たす、そして安価で美味しい、というニーズを満たしていったのが「ペットボトル」なのです。

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メーカーは消費者の様々なニーズを満たすために、健康要素やフレーバーなどの変更によって清涼飲料水としてのお茶を多様化し続けています。
しかし、寡占状態にあるお茶市場で、大手メーカーが同一の戦略を取ることで、消費者の需要はより限定化されていってしまいます。その結果、川上にいる生産者が疲弊する構造の加速が進んでいるのです。

■ペットボトルへの供給と生産者の疲弊、耕作放棄化

このような要望に応えるのが、メーカーの下請け機能を担う茶の専門商社、そして生産者である茶農家です。
ペットボトルでは上質な茶葉ではなく、比較的安価な茶葉を使用することで、効率化、そして規模の経済によって単価を下げる勝負をする商売です。そこに応えるべく生産者は生産方法を効率化しますが、効率化が難しい急山間地や、中小規模生産者は疲弊し、市場に求められる価格では供給が難しくなってしまっている現状があります。

お茶は植えてから5年後にしか収穫できないということもあり、日本で最も多く栽培されている「やぶきた」などのような、平均程度のクオリティーを担保できるだろうとされる品種が全国的に植えられるようになりました。
一度植えたらなかなか改植をできない点も、価格を長期的に下げていく要因になっています。

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2020年に弊社が改植をした茶園(品種名:摩利支)
ここから収穫まで5年かかります

最終的には市場に求められる茶葉の単価が非常に低く、コストに見合わないことが理由で茶業への参入が減り、農業従事者の高齢化もともなって、農家数が激減していき、耕作放棄地が増加しています。

このように、現在の構造の中にいる生産者は川下と同一の戦略をとってしまうと生きていけず、急速に生産者の数やお茶の生産面積が減っている、という現実があります

■緑茶飲料水市場の推移

伊藤園さんの決算資料に記載されている、緑茶飲料市場の状況を参考にすると、実は、2005年程度から緑茶飲料の市場は横ばいであるということがいえます。
つまり、生産側に期待される単価やクオリティーは15年間ほぼ同じで、同じ需要に対して同じお茶を供給する、ということをこの15年間続けてきたという歴史があります。

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引用元:伊藤園 決算説明会資料 p.12[6]

お茶の生産者は、今後もこれまでのように続いていくであろう需要に対して、最も’’安全’’な戦略は、効率的で画一的なペットボトル用のお茶をつくることだ、と考えて5年以上の計画を引いています。
消費者の需要が限定化し、それをJA(農業協同組合)も商社も求めていることが主な理由です。

本記事でのペットボトルへの考察は、ほとんど0円、且つ家庭内消費需要しかなかったお茶を、本日の姿まで社会に浸透させた清涼飲料水メーカーの発展を尊敬の念を持って勉強させて頂いたものです。ペットボトルに対する批判等ではございませんので、ご理解ください。

■まとめ

日本茶の業界では、消費者の需要が「ペットボトル以外の消費イメージや実際の消費をほとんど行わない」というところで限定化してしまっているためにそのしわ寄せが生産者にきて、生産者が疲弊する状況になっています。

単価を下げていく動きが進み続ける中で、生産者の離農も激しく、このままではお茶の産業自体が潰れてしまうほどの大きな問題です。
茶産地と言われる静岡も、数年で鹿児島に抜かれてしまうという予測も立っていたりと、その活力の低下速度は想像以上のものです。

このような状況に対して必要なのことは、やはり「需要の多様化」です。消費者が求める商品をどのようにつくっていくのか、これから参入する茶業者にはぜひ理解いただきたい視点だと考えております。


次回は、需要の多様化に対する、私たち TeaRoom の取り組みについてお伝えしたいと思います!

■過去記事

本文中で参考にした文献
[1]茶をめぐる情勢, 農林水産省, 令和2年7月.
[2]静岡県産一番茶生産14%減 平均単価も過去最低水準, 日本経済新聞, 2020-08-20, 閲覧日 2020-11-16.
[3]茶をめぐる情勢, 農林水産省, 平成26年4月.
[4]茶をめぐる情勢, 農林水産省, 平成28年5月.
[5]メーカーと卸売業者と小売業者の違いは?, 創業手帳, 閲覧日 2020-11-16.
[6]2020年4月期 通期 決算説明会資料, 株式会社 伊藤園, 2020-06, p.12.

(最終更新:2021年1月23日)

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