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リモートマネジメントの悩みの構造①”情報共有が進まない”

スコラ・コンサルトの滝口です。昨年7月の記事以来ひさしぶりの投稿です。私たち”サイスコ”チームは今年に入ってからも、リモートワーク環境下のマネジメントについて、セミナーに参加いただいた皆さんと意見交換を続けてきました。

今後は再びオフィスで仕事をする場面が増えたり、リアルとリモートが混在するハイブリッド環境になったりするかもしれませんが、いずれの状況でも根底に流れる”マネジメントの本質”を意識していきたいと考えています。そこで今回は、最近のセミナーでお寄せいただいたリモートマネジメントのお悩みを構造的に整理してみました。

第1回は“情報共有が進まない”という悩み。

コミュニケーション(情報共有)の全体構造

職場での困りごとを整理・構造化しているうちに私の頭にこんな図や配置が浮かびました。

図1

真ん中の図を拡大するとこうです。

図2

安心して話せる関係性や、コミュニケーションを推奨する企業文化という土台があることで初めて雑多な情報が交わせるようになると考え、上に乗っかる配置にしています。

そして、雑多な情報に含まれる「仕事の背景や全体像」が共有されることで、業務の目的や、メンバーの個性を生かした役割分担も明確になる。一方で職場には達成すべき必須条件もあるでしょう。これらの条件が交わるところでで個人個人がモチベーションをもてるかどうかがチームマネジメントの成否にかかわるかと思います。この部分は「チームワークの5つの条件」を参考にしています。

この構造図を補助ツールとして使い、参加者から伺った悩みを配置したのが冒頭の全体像です。後ほどもう少し詳しく見ます。

情報共有の3つのレベルと4つのルート

ところで、今回のセミナーでは、参加者のお悩み共有の前に呼び水として次の情報を紹介しました。

1つ目は「情報共有の3つのレベル」。

図3

リモートワークにおいても最低限必要な業務情報(レベル1)は共有できていることが多いと思われますが、背景情報(レベル2)になると不足しがちではないでしょうか。背景情報の共有はチームワークを円滑にし、新しい知の創造(レベル3)も可能にするので重要です。

2つ目は「情報共有の4つのルート」。

図6

上司と部下の縦のラインやチームメンバー同士(ピア)の1対1の関係だけでなく、チームメンバーが集う機会(クロス)やチームをまたいだ情報共有(インターチーム)があると組織全体に情報が流れます。さらに、各所で生まれた情報がオンライン上でも見られれば、組織全体で問題解決やイノベーションにもつなげやすいでしょう。

情報共有の悩みの構造

この情報提供を糸口に悩みの共有が始まりました。出てきた話をカテゴライズすると、「オンライン環境下ならではの悩み」と「情報共有そのものの悩み」がありました。

オンラインならではの悩みはたとえば次のことです。

全体 - コピー

オンラインだと「意図が伝わりにくい」「雑談が減る」「どこにどんな情報があるか分からない」という困りごとが出てきました。情報伝達スキルの不足にも悩んでいます。これらは目的共有や情報流通のレイヤーに関することなのでそこに配置しました。

コミュニケーションの中身以前の問題として、ウェブ会議で顔を出さないのでコミュニケーションがとりにくい、という話も出ました。ネットワーク回線の事情もあるかもしれませんが、もともと「会議は一方的に聞くもの」という文化になっているとも言えます。そのため、オンラインなら顔を出す必要はないと考えているのです。

それでは、オンライン・オフラインを問わずあてはまる、そもそものコミュニケーションについてはどうでしょうか。

全体 - コピー

「上意下達で部下から上司への問返しがない」「仕事の意義や判断の背景が共有されない」「部下の主体性が引き出されない」という悩みが出てきました。これらはコミュニケーションをとる意識がある上での悩みですが、中には、メンバーが相談や情報共有をする意識が乏しくコミュニケーションの量が増えないことに困っているマネージャーもいました。

目的実現のために雑多な情報流通のすそ野を広げる

図5

情報が不足した状態だとどうなるでしょうか。目的を実現したいと願って形式的にゴリゴリやらせたりスピードを追求しても、土台がしっかりしていなければコケてしまいそうです。そうならないために、雑多な情報が流れるすそ野を広げることが大事だと考えます。

情報流通を促進するノウハウは探せばたくさんあるでしょう。

🌻部下の報告負担が軽くなるように、完成度や進捗度が低い状況での共有をよしとする
🌻ウェブ会議は長時間開催よりも、短い時間×短い間隔にすることで情報が生まれたり流れることを促進する
🌻出入り自由なオンラインの場を開設して雑談量を増やす
🌻チャットではカジュアルな言葉を使い気軽な雰囲気をつくる

ある程度情報が流れやすくさえなっていれば、上記のようなノウハウ自体もどんどん出やすくなりますし、問題に思うことや解決のアイデアを気軽に話してみることができ、事態は良い方向に向かいやすくなります。気軽に雑談することは遠回りに見えて実は目的実現への近道なのです(参考記事「雑談は仕事です」)。

このようにノウハウを並べましたが、こういうノウハウを持っている人や問題を感じている人は会社の中に既にいそうな気がします。せっかくいるにも関わらず顕在化していないとしたら、なぜその組織ではノウハウや問題意識といった情報が流れていないのでしょうか。

「情報を共有しよう」と言うことは大事ですが、言ったところでなかなかそうならないかもしれません。関係性や企業文化など根深い問題も影響していそうです。そこで次回は、情報共有の最も小さい単位である1on1ミーティングについて考えます。

リモートマネジメントの悩みの構造②“1on1で信頼関係が築けない”に続く



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