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人はいつ死ぬかわからないからこそ、自分が本当にやりたいことに突き進む (東修平四條畷市長イベントレポート/ Team WAA!)

7月20日のWAAフェス!には多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。
WAAフェス!にご登壇いただいた東修平四條畷市市長には、今年1月の大阪開催のマンスリーセッションでもお話いただいていました。
今回は大阪で「Purpose drivenなリーダーは何が違うのか」について東市長がお話くださったことをレポートします。モデレーターは、島田由香ユニリーバ取締役です。

松田誠さんとの出会いと別れまで

中3の時にニュートンという科学雑誌で、核融合特集をやっていました。核融合で太陽を地球につくることができたらエネルギーが3000万年もつという内容で、夢があると思いました。京都大学で素晴らしい研究をやっているところがあるのを知って、そこに行こうと中3の時に決めました。
大学で原子力を学んでいる時は、電力の半分は原子力で賄おうと政府が言っていた「原子力ルネサンス」の時代でした。その後大学院にあがる直前の2011年3月に、東日本大震災が起こりました。原子力の安全に関する授業もあり、津波が来て、非常電源が喪失すると水素爆発が起こるということは授業でやっていました。まさにテキストブックレベルの事象が目の前に起きていて、時の政府の動き方は本当にこれでいいのか、科学がわかる人がもっと国の中枢にいないといけないのではないのかと感じました。そのタイミングで翌月に国家公務員試験があることを知り、受けたら受かりました。

外務省で、経済連携課というTPPなどの経済連携協定を扱っている課に配属されると、エース級と言われていた松田誠さんが課長としてやってこられました。この方に出会えたことが人生において一番価値があると思っています。すこぶる仕事ができる方で結果的にTPP締結の立役者となった方。また、歓送迎会を何よりも大切にされていた方で、「東君、これまで一緒に働いてきた仲間にありがとう、これから一緒に働く仲間によろしく、という、これ以上に大切な行事はあるわけはない」ということを言われるような人格者でもありました。
外務省で京大の原子力を専攻していたのは私と松田誠さんの二人だけで、大学の先輩でもあり、よく一緒に食事をしました。
TPPの大筋合意がみえてきた段階で、過労のためか、ある日の朝松田誠さんは急死されました。

松田誠さんのような素晴らしい方になれるとは思わないけど、そんなに素晴らしい方でも49歳で突然亡くなる。ということは、自分はどうしていくべきか。そう思った時、石破大臣が唱えた、地方創生という言葉が出てきました。

外務省では、1つのことを変えるにもとても時間がかかります。
地方が前例をつくれば、それをどんどん国に真似てもらうことで、地方から日本をよくしていけるのではないか。ある日突然49歳で死んでしまうのであれば、ここにはいられない、と1年半で外務省を飛び出して、市長になりたいと思ったのです。

父の死で、本当にやりたいことが地方創生だということを思い出す

市長は社長と同じで、お金と人を扱うので、マネジメント経験をしたり、経営を勉強しなければと思いました。その頃野村総研がインドにオフィスを立ち上げました。入って3か月目でも3年目くらいの仕事ができるよと聞いて、入社。入って同時に6本プロジェクトを抱えるくらいの忙しさでした。
インドに行ってから1か月後に母から電話があり、父が末期がんで余命半年と聞かされました。父は半年後に59歳で亡くなりました。
父の死に直面して改めて感じたのは、ある日突然人は死ぬということ。
自分は日本をよくするために地方からこの国を変えていきたい。そのために市長になって、自分のまちをよくしようと思っていたのではないか、という想いが頭をよぎりました。

そのタイミングで四條畷市にいた同級生と話す機会があり、それがきっかけで調べてみると、5年で子どもが15パーセント減っているくらい、まちに元気がありませんでした。
四條畷市の現職市長は父親の代から政治家。地元の府議会議員・国会議員もお父さんの代からやっていました。当然、次の市長選は無投票再選だと言われていました。ただ、今選挙が行われないと、四條畷の現状について議論もされないのではという危機感を感じました。

インドにいる人間が選挙に勝てるとは思わない。でも一度市民が立ち止まって、まちについて考える機会をつくらないとと思い、その時の勤務先のインドの社長に「会社をやめて市長選に出たい」と伝えました。社長はまっすぐ私の目を見て「勝てるのか。もしも勝てないのなら、お前の人生によくない。1か月休みをやるから調べてこい」と言われました。
1か月間の調査で、1パーセントくらい勝てる確率があるので、市長選に出馬することを社長に伝えました。社長はそれを受け入れてくれて、「そのかわり落選したら雇いなおしてやる」と言われました。この時の社長には今でも本当に感謝しています。

1パーセントの確率にかけた市長選出馬

選挙まで半年しかない。
最初は家に引きこもり、市についてあらゆることを把握するため、市議会の過去10年分の議事録を覚えこみました。

両親とも四條畷出身ではない。親戚に政治家がいるわけでもない。
まず自分のことを知ってもらうためにビラをまきました。
『27歳 京大卒、外務省、インド帰り』というビラを配ると、噂にはなる。
信頼はされてないが知名度は出てきました。

交差点で演説をきいても、市民は投票しようとは思わないだろうと思ったので、毎晩、政策の意見交換会である「東修平と語る会」をやり続けました。
参加者が3人でもいいから語りあうのです。
これを選挙3か月前からやりつづけました。
市議会の過去10年分の議事録を覚えこんでいたので、「東修平と語る会」にひやかしで来た人が、こいつ知らないだろうと質問してきたことを全部答えることができました。
マイナスが大きかった分、プラスの跳ね返りも大きくなるのです。
その人は翌日以降ずっと東修平の話をきいたほうがいいよ、と言ってくれるので、少しずつ参加者が増えて、選挙直前には500人集まるようになりました。
そして市長に当選しました。

市長になってからも対話を大切に

所信表明演説では最初に、働き方改革について話しました。

市長というのは、市役所のトップだけでなく、まちのリーダーという役割も担っています。
市長になって2年ですが、地域と住民と最も対話した市長だという自信はあります。昨年だけでも100回やっています。すべて映像に撮って、ノーカットで市のホームページに載せています。
地域の方が主体的になってまちづくりに参加できる仕組みをつくってきています。公務員が思いつかないような提案がどんどん出てきています。

オンライン面接は人事課長の提案!!

オンライン面接は人事課長の案です。
子育て中で突然子どもが熱を出してリスケとか、九州から面接に急に来れなくなった例をうけてやることにしました。

QRコード決済は市民課長の提案!!

住民票の発行の際、市役所の窓口で払う手数料のQRコード決済は、管理職だけの飲み会で、市民課長から「市長、ピッとできた方がいいと思うんです」と言われたのが発端です。

やってもいいかわからないので、総務省の友人から担当の方を教えてもらい、総務省に会いに行きました。「やっていいですか」と聞くと、「止めはしない」という返事。これは霞が関でいうOKです。
QRコード決済を実際に導入するにあたって、公費負担で議決をもらうと時間がかかって難しいこともあり、公民連携でやることにしました。
日本で1件目の事例を一緒につくりませんか、と声をかけたところ、タブレットなどを提供してくれる民間業者が出てきてくれました。

地方創生は、移住・定住で横の市同士で人口の移動があっても、日本全体ではプラスになりません。日本全体がプラスになっていく仕組みが大切です。
四條畷市が前例を作ったことが他市に広がって、それをまねる自治体が出てきて、日本全体が一段あがるような取り組みに四條畷市がコミットしていこうと考えています。

へこんだ時の話

東市長には、会場の参加者からたくさんの質問が投げかけられました。ここではへこんだ時に東市長がどうやって立ち直っているかについて、取り上げます。

あんなに素晴らしい松田誠さんが49歳で亡くなった。
仮設定として自分は49歳まで生きる。50歳以降はボーナスタイムだと思って生きていく。
人生の師は松田誠さん。つらい時もある。失敗したなと思う時もある。お風呂に入りながら彼だったらこの場面どう考えるだろう。松田誠さんだったらこういう想いで、みんなと一緒に行動をおこすはずだ。彼がこれ以上日本をよくすることができなくなったのに、僕がへこたれている場合ではないと思って、熱くなってお風呂を出ます。

最後に

最後に島田さんがこう話されました。
東さんのような方がどうしたら増えますか、という質問をなさった方がいらっしゃいました。何があなたの心を響かせて、ワクワクさせて、希望を持たせたのかを考えてみてください。東市長がご両親やご家族から圧倒的に守られて育ってこられたので、自分は受け入れてもらえている、守ってもらえているとおっしゃっていました。東市長の場合、何があっても安心安全だというベースのところの強固さが大きいのかなと感じました。そして四條畷市の市民の方も、そういった東市長にだからこそ、信頼を寄せているのだなと思いました。

***

心から尊敬する大学・外務省の先輩の松田誠さんやお父様の死を受けて、自分の想いを実現して、まちをよくし、国全体をよくしていこうという東市長の姿に、参加者みんなが心打たれたセッションとなりました。

カエルンさんのグラレコはこちらから

登壇者プロフィール

東 修平(あずま しゅうへい)1988年大阪府四條畷市生まれ。大阪府立四條畷高校、京都大学工学部を卒業し、同大学大学院工学研究科の修士課程を修了(原子核工学)。外務省、野村総合研究所インドを経て、2017年1月に行われた四條畷市長選挙において初当選。全国最年少市長となる(当選時28歳)。エン・ジャパン株式会社と連携して副市長を全国公募し、応募者1700名の中から0歳児を子育て中の女性(38歳)が着任。働き方改革を柱に、前例主義に縛られない「日本一前向きな市役所」をめざして、組織改革に取り組む。LINE@を用いた市民からの道路通報を受付ける仕組みの構築や、オンラインによる職員採用面接、市役所窓口における手数料支払いのキャッシュレス化など、全国初の施策をいずれも職員の発案により展開。北海道から沖縄まで、問合せや視察を多数いただている。また、あらゆる市民が公平に挑戦できる環境を整えるため、就任直後からすべての補助金の見直しを行い、市民提案型の新たな支援制度を構築。加えて、年間50回に及ぶ地域との対話会を通し、しがらみのない透明なまちづくりを推進する。

島田 由香(しまだ ゆか)
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長。
2016年7月1日にユニリーバでスタートしたWAA(Work from Anywhere and Anytime)の発起人。
満員電車で通勤することなく、働く場所や時間を社員が自由に選べるWAAの反響の大きさから、WAAのビジョンへの共感者が参加できるコミュニティとしてTeam WAA!を主宰。
自然が大好き。Team WAA!のスピリットをメンバー一人ひとりが伝えることを「タンポポ作戦」と命名しているが、自身は野原の草花とは無縁の、東京生まれの東京育ち。 いろんな地域での働き方を模索し、地域創生に注力。地域創生で行った山林で、多くの人が子供の頃に見慣れているエノコログサのふさふさの緑の穂を、生まれて初めて見てさわって感激したというエピソードをもつ。
多忙なスケジュールをこなす中、大好きなキングダムを読むきっかけをくれた高校生の息子さんら、ご家族と過ごす時間も大切にしている。

文:宮崎恵美子
(Team WAA! プロモーションチーム)
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🔹2019年度 Team WAA!マンスリーセッション日程
*やむを得ず、日程の変更を行う場合もございます。
*8月開催なし。7月にスペシャルイベント予定。
1月18日 金(初の大阪開催!)
2月18日 月
3月15日 金
4月18日 木
5月15日 水
6月17日 月
7月20日 土:WAA フェス!
9月18日 水
10月15日 火
11月15日 金
12月18日 水

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