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就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww⑬

尾崎がソファにくつろぎながら、
話しかけた。


目の前の編集作業をしているので、
PC画面に顔を向けたまま、返事をする。


実業での役割分担もだいぶ慣れて、
実務と経理の効率化にも慣れてきた。


博多区とは言ったものの、
博多駅から徒歩15分はかかり


博多区端っこにある、
 室内一面がストライプ柄の
目がチカチカするような


オフィスに来てから、早2年。


事務所を構える金すらなく、
どうやって仕事を獲得するかが
昔の悩みであったのに、


今では、事務所の更新が
悩みになっていた。


「んー、だいぶ安定してきたけど、
 まだ他に移す必要ってあんの?
 俺ら2人しか使わねーのに。」


「実はさ・・・」


尾崎が”そういう言葉”を使うことは、
実に珍しい。

ほぼほぼ、毎日顔を合わせて、
もう秘密やお互いの隠し事も
失せていく頻度で会っていたので、


“今更、かしこまって伝えることでも
あるのだろうか?”と思った。


「ん?」


尾崎の方を向くと、
一瞬の変な間を空けて、
言い放った。


「”シラタ”がウチに入るってよ!」


「・・・えっ!?そうなん? 聞いてねーよw」


「返事が来たんよね!」


「返事ってまだわからんくね?」


「辞表出したんだってさ!」


「おぉ、まじか。。。」


すっかり、熱々に入れてたコーヒーは
すっかりぬるくなってしまった。


シラタは、本業はディーラーであるが、
訳あって、バイトとして映像制作をするようになった。


シラタとの出会いは、
小学校時代に遡る。


明るくひょうきんなキャラ立ちで、
寒い日でも、短パン小僧な元気ハツラツ系男子だ。


中学に入っては、バスケ部に入り、
大学では、別の大学だったので、
中学校からは、プツンと接点がなかった。


大学生の時に、中型バイクに乗りたい為に

マイマイスクールに申込みをしに行った時に、
久しぶりに見覚えのある顔がいた。


「おっ!シラタやん! 単車の免許取りにきとんやな!」


「そうやね!とりべもバイクに乗るんやね!」


そんな、やりとりの後に、
尾崎や白田を交えて、バイク交流を
後に頻繁にとるようになった。


社会人となって、シラタはディーラーとして
 働いていることはうっすらとは聞いていたが、


どうも最近は仕事を続けるかどうか
悩んでいるとも尾崎経由で耳にしたことはある。


そういうことを耳にする度に、
就職できなかった自分としては、


“せっかく入社できた道を
自らフイにする奴はおらんだろ”


そう思うのが毎度だった。


だが、尾崎の言葉を聞いて、
一瞬で理解した。


”ウチに新たなメンバーが入るのか”


今までは、自分と尾崎の最小人数で
役割分担をしながら、働くことが普通だった。


それが、新しく仲間ができるとなると、


“自分目線”ではなく、
 新たな仲間の”周囲の目線”や


”新たな価値観”も取り入れながら、
働くということになる。


そして、その時に、

「事務所の更新どうする?」の意図が
やっと汲み取れた。


事務所の更新をする=人は要らない


事務所の更新をせずに移転して、
新たなオフィスを構える=人を入れる


そうなることが、
この時にして理解できた。


やっと安定するかと思いきや、
再びジェットコースター。


そう、忘れがちになるのは、
“安定することを良しとしない”ことだ。


編集をやめて、タバコを吸う。


窓から見える景色も途端に寂しく見える。


そして、そこから数日後に、 事務所を移転した。


続く・・・・



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