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酒好きになり店を出したら人に騙され人に救われた話④

大学生活の中で東洋、酒見という2人に出会ったことが
この後の人生を大きく変えるきっかけになった。

「煙草吸いに行こうぜ!」
東洋がそう言って喫煙所に向かう

”煙草か…”
心の中で喫煙所に行くのを嫌がる気持ちもあったが
せっかくの誘いを断るのも悪いなと思いついていった。

「吸ってみる?」
「いや、いいや」

東洋がそう言いながら煙草を
差し出してきたが即答で拒否した。


友達に誘われて煙草を始める
パターンも多いのだろうが

ノリが悪いと思われようがどう思われようが
どうしても煙草だけが吸う気になれなかった。

そんな気分が乗らないまま喫煙所に一緒にいた。
すると立て続けに、東洋が口を開く。
「皆、酒とか飲むの?今度宅飲みしようや。」

そんな誘いにまた拒否反応がでてしまう。

”その当時はお酒を飲んだことなかったのだ”

初めて屋台に行った時は
お酒は飲まずにラーメンなどを
食べただけで一切お酒は口にしなかった。

大学の飲みのイメージは
めちゃめちゃな飲み方をして
はしゃぐようなイメージがあったから
できれば大学生活中、ずっと避けていたかった。


そして当時の自分は酒を飲むという体験は
”酔う”という体験に恐怖すら感じていた。

「いや、やめとくわ。」

そう伝えようと思ったが、
省られたら後々大変だと思い、誘いに乗った。


「やろうか!でも俺酒飲んだことないんよ。」
そう伝えると、東洋が少し悪意のある表情で笑った。

その夕方…

少しビビりながらも買い出しに合流する。
東洋の家がある七隈へと向かう
まだ当時は全然開拓できていない土地だった。

「レッドキャベツに集合で!」
そんな連絡が来て更に戸惑った。

「何だ、レッドキャベツって??八百屋なのか?」
そう、思いながら目的の住所へ行くと
スーパーの前に東洋と酒見の姿があった。

そのスーパーの看板を見てみると
”Red Cabbage”と書かれてあった。

「買いに行くか!」
そう言うと、東洋は意気揚々と酒コーナーに向かう。
手にとった紙パックには「黒霧島」と書いてあった。

当時は黒霧島という名前を見ても何のお酒なのか
さっぱりわからないし、アルコール度数なども全く見当もつかない。
何もわからず、言われるがままに従った。

買い物かごの中には
キリン一番搾り、アサヒビール、サッポロ黒ラベル
これがそれぞれ一本と黒霧島1800mlの紙パック
それから魚の缶詰と少々のつまみと氷。


家に到着すると、それぞれビールを開けて乾杯した。
まともにビールを1缶も飲んだことがなかった私は
一口飲むごとに、思うことはひとつだった

”まずい…”

「美味いねー!」
まだ私が1/4も飲み終えてない段階で東洋がビールを飲み干す。

「はやっ!よくこんなまずいのすぐ飲めるなー。」
率直に思ったことを言った私に東洋がこう返す。

「浪人してた時、飲まなかったからねぇ。」


「…!?浪人してた………んですか?」
思わず敬語で聞き返した。
それが初めて東洋が1個上だと知った瞬間だった。

最初から1個上というと皆気使うからという
東洋なりの気遣いだったらしい。
先輩の言うことは絶対で育ってきた私からすると
ここからは、より酒の誘いを断りづらい環境に追い込まれた。

長い時間かけてようやく
缶ビールが空いた。

初めて体験する”酔う”という感覚に楽しくなっていた。
そこから謎の”黒霧島”とやらを飲む時間に突入する。

「これどうやって飲むん?」
酔ってるからか1個上なんて関係なくタメ口で話していたと思う。

「氷入れて飲むか、そのままやね。」
そう東洋が言うと「そうやね。」と酒見が続く。


彼らが私を潰すために策略を組んでいるとは
当時は知らず、言われたまま氷だけを入れて飲んでみた。

初めて飲んだ”芋焼酎”の味は
アルコール臭くて飲めたものじゃなかった。

それでも自分のペースで飲みながら
酔いが回ってきたのだろう。
芋の香りがしてきて美味しいものという
認識ができるようになった。

途中までその場にいる全員が
”嘉松を酔い潰す”で結託していた。

しかし、その”結託”は途中から崩壊した。

東洋も久しぶりに飲めて楽しかったのだろう。
真っ先に潰れたのは東洋の方だった。

そんななか私は、酒うまいなと思いながら
ゆっくりと味を楽しんでいた。

初めて自分で”酒が強い”
そう認識した瞬間だった。

東洋を介抱してそれぞれ帰路に着く。
これが酒好き人生のスタートであった。



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