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就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww⑨

「ええ加減にせえよ、こんガキゃぁあ!」


電話越しに怒声が響く。
とあるお客様からの”お叱り事”だ。


その日は、確か尾崎と共に、
珍しく共同面会があり、


福岡の長浜付近のオフィス街の路地を
話しながら歩いていた。


「何となくだけど、
 俺らは人からどうこう言われずとも
 上手くやってくしかないんだよね」


尾崎は、落ち込み気味でもなく、
元気ハツラツでもなく、
物事を見透かしたように言った。


「せやな。この仕事をしている以上、
 基本すらないから、基本を構築する為にも
結局は、”努力と前進”しかないんだよな。」


自分も何となく同調して、
物事を見透かしたかのように
尾崎に返したところ、

突如、電話が鳴った。

普通は、
「あっ!電話!」くらいにしか思わないが、


このタイミングでの電話は、
さっきの見透かした言動直後ともあって、
少し嫌な気がした。

結論から言うと、


まだ何も生み出しても、
掴んでもいないスズメたちにとっては、


ある意味でいうところの
“警鐘を鳴らす信号”のようなものだった。


電話を取ると、
クライアントの担当者ではなく
社長自身からのお電話だった。


「もしもし!
From now on groupの鳥部です!」


「おー!鳥部くん! お疲れさん!」


「あっ!大原社長!


この前は、ご提案の際は、
 ご挨拶共にありがとうございました!


どうされました?」


社長は、気分を害してもおらずに、
友人たわいもなくするかのような口調で続ける。


「納品された映像を担当者から教えてもらって、
君達が作った映像を確認したんだよね!


ぶっちゃけさー、 ”あんなもの”を頼んだ覚えはないよ?」


青天に霹靂とでもいうか、
 すごくショッキングだったことを覚えている。


「えっ?ヒアリングの際に担当者にお繋ぎ頂いて、
担当者と打合せしながら、イメージ通りに
 作ったんですけど、間違ってました?」


ここから、少し社長の語気が強くなった。

「なんや君、ウチらが悪い言うの?」


物怖じせずに、
こちらも至って普通に、丁重に返す。


「いや、悪いかどうかやなくて、
それじゃあ何が正解なのかを聞きたいんですが?」


冷静に話しているが、内心はこうだ。

 “何言ってんだこのオッサン?”


少しずつ口調が荒くなりそうな気配を出しながら
会話は続く。


「いやいや、それは違うでしょ。」 

「何がですか?」と冷静に返す。


「君達”が”、”目的を果たす為に映像を作る”言うから、
そこに共感したのに、この映像じゃ魅力も
伝わってないし、納得がいかんのよ」


この言葉は、後に一つの指標となっている。


「・・・分かりました。
 でしたら、再度事務所に伺いますので、
 “今すぐに”時間を取って下さい。」


「はぁ?なんやねん君のその”態度”は?」


「お互いにより良いものを作る為にも、
 早く行動しましょうよ。」


その瞬間である。


よく漫画にあるが、受話器から雷マークが出て
電話越しに怒られるというやつだ。


わずか数分の出来事であった為、
尾崎は相変わらず街並みを見ながら
のほほんと歩いている。

クライアントとは、その日の午後の事務所面会にて
なんとか着地させると取り付けて、電話を切った。


尾崎が、少し心配そうにこちらを見て、
「大丈夫?」と聞いてきたので、
手短に伝えた。


「例の件、作った映像は全部やり直しやね。 

 
けど大丈夫。なんならこの際、
 徹底的にあの社長とぶつかってでも、
 良いものを作ったるわ。」


尾崎も空気を察したのか、
共同面会後は、お互いに
現地で解散となった。


今思えば、最初に仕事をする上で
”肩書き”や”組織の在り方”云々よりも


“極めて大切なこと”に気づいたのも、
この電話を機にかもしれない。


たった数分くらいの出来事だったが、
後に人生を一変する
”マーケティングの極意”は これらの道中の会話に出ていた。


時計を見れば、
いつもの餌の時間だというのに


“片方”のスズメは帰路につかずに、
いつもと違う方向に飛んで行ったのである。


続く・・・・



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