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就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww⑧

「もう一緒に仕事をするのはやめよう」


重大な決断もあっさりと決まる。
それが、この会社の特徴かもしれない。


ある時に、ウェディングプランナーからの
商業施設で使うPVのオファーがあった。


商業施設のトイレで手を洗っていると、
珍しく電話が鳴る。


電話に出ると、とある紹介を通じて、
出会ったプランナーからの電話だ。


「擬似結婚式の企画に使う動画を依頼してた人が
制作を渋ったので、鳥部くん作ってくれない?」


そんな話を快く受けて、
制作を走らせるも、
色んな壁が立ちはだかる。


ある日、いつものベンチに、
スズメたちが集まる。


「なんか釈然としないんだよな。
なんで、こうも俺たちの希望が通らないのだろう。」


素朴な疑問を尾崎に
投げかけていた。


「んー、まぁ嫌なら、この仕事を
 辞めてもええんやけどね。」


諦めを促すような言い方ではなく、
諭すように尾崎は返事をした。

要は、見合う工数に対しての
報酬が少ないことだ。


よくよく考えると、
実績の”じ”すら持っていなかったからだろう。


いくつかのプランナーの要望に応えようと
二人でヒアリングに行き、


そこで、プランナーの要望を拾い上げる。


「いい、私の考えるようにしなさい。
 それが、色んな人の為になるの。」


内心、誰目線での制作しているのかが、
イマイチ掴めずにプランナーに反論する。


「いやいや、その演出だと、
 趣旨から逸れて、何を伝えたいのか、
 分からない動画になりますよ」


尾崎は、何も言わずに横に座っている。


「関係者の為に、演出をするよりも、
 本当のクライアントを想定した、
 動画にしましょう。」


少し意見を押し問答し合ったヒアリングを後にして、
天神の街を2人で歩く。


「とりべさー、何であんなに
 あの人に突っ掛かんの?」


ふと、交差点で待ってる間に、
唐突に投げかけられた。


「ゆうても、仕事の依頼者な訳だし、
 寄り添ってもええんじゃないの?」


棘もない、非常に穏やかな声で、
こちらに伝える。


「それはそうやけど、
あの人は撮影をするわけでもないし、
 誰目線の映像になるかもわかってない。

ましてや報酬もないようなボランティアみたいな
 仕事を仕事とは呼べない。


でも、企画に必要な動画を
むやみに放り出す人よりは、


俺が動画を作った方が、
当日見に来る見込み客の人達には
良い演出を提供できると思う。」


尾崎に不満はないのだが、
少し語気が強くなった。


「・・・」


街中の雑踏と行き交う車の音が
やけに煩く聞こえる。


信号がようやく変わるその瞬間に、
尾崎が言った。


「やめよう」


「えっ?」


「もう一緒に仕事をするのはやめよう。」


面食らった顔で見返す。
 二人とも歩き出すことを忘れている。


「いやいや、何言ってんの?
 一緒に仕事しよう言ったのそっちやん?」


今度は、ハッキリと不満を顕にして、
尾崎に返す。


「ちゃうよ。”俺”は”現場”を
 とりべに託すよってこと。」


「俺もとりべにもっとこうした方が
良いよって思うこともある。」

不満よりも、予想外だった為に、
キョトンとしてる自分に続けて伝える。


「でも、よくよく考えたら、
 とりべが”自分の基準”で仕事をした方が
顧客にとっても良いかと思ってさ。」


「僕と二人で現場に行くよりは、
 とりべ自身が制作を取り仕切った方が
とりべにもクライアントにも良いかもね。」


「・・・」


気がつけば、もう一度赤信号になる。


「いいよ!俺もちゃんと制作に向き合って、
 顧客にとって”良質なもの”を提供するよ」


「ありがとう!そうしよう!」


尾崎の返事と共に、
一つのフェーズに区切りを打つ。


一つの仕事を複数人で行えば、
 効率が良いというが、
それはケースバイケースだ。


多くの意見を出し合って、
作りあげたもの程、
何がしたいか分からなくなる。


スズメたちは、”役割”を理解したのだ。


一匹は、獲物を探し、 
一匹は、獲物を狩る。


片方が獲物探しに専念をすることで、
見込み客数を増加させて、


片方が、顧客の依頼を叶える”狩り”を
徹底的にする。

そうすることで、
“集客”と”換金”という役割を全うする。


“効率的”を求めているのではない。
“効果的”を求めるようになったのだ。


役割を理解した頃には、
目の前の信号は青になっている。


尾崎が持とうとした撮影機材を
自分が持ち上げる。


「いいよ、俺が持つよこれは!」


そうして、スズメ達は 次のフェーズへと向かった。


・・・続く



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