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就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww⑩


「やるやん鳥部くん!
 新商品の売上が動画導入前と比較しても
 2倍以上になってるやん!」


動画制作納品後にかかってきた
社長からの渾身の褒め言葉の電話を聞いて、
嬉しかったのを覚えている。


“目的を果たす映像を作るんちゃうんか
君たちは、おぉ!?”


煽られながら指摘された日から、
早半年、すべての店舗の
動画を一から全部作り直していた矢先のことだった。


福岡市西区の商業施設にある
お寿司屋さんが開店して、早数年。


社長から電話がなった。


「鳥部くん、各店舗ええ感じやね!
 今度は、”お寿司屋さん”の動画ば
 作ってくれんね?」


「お寿司屋さん?いいですよ!
 一度、見に行きましょうか?」


「おぉ、ありがとう!
 ぜひお店に顔出してくれな!」


普通は、仕事の延長なので、
社長にお店の人を紹介されて、
スタッフの方と顔見知りになる。


しかし、その前に自分の素性を
伏せた状態で、一度お寿司屋さんを
利用してみた。


これはいわゆる、
“ミステリーショッパーだ。”


大学生時代に働いていたのグッズ販売時代には、


お店の接客態度やお店の清潔環境などを、
匿名の一般客を装った人物が


品質管理の目的で密かに査定して、
後日評価を通達するという制度があった。


この利点は、いわゆる審査員目線で、
そのお店をくまなく観察することで、


そのお店の特徴や強み、そして弱点も
新たに発見することができるのだ。


そんな、”ミステリーショッパー”風に
家族を連れて、お店に入ると、


「ぅぇぃいらっしぇーい!!!」と
勢いよく通りの良い声と素敵な笑顔で
出迎えてくれた。


板場を囲むようにして、
20~25席程のカウンター席には、


びっしりお客様が入って、
各々が楽しく会話しながら、
食していた。


「どうぞ、こちらへ!」


店内に沿って誘導されて、
ボックス席にメニューを見る。


どれも美味しそうなコピーライティングが
されていて、イメージしやすいお客様目線の
メニューだった。


“かんぱち”というシンプルなメニューでなく、

“糸島産のコリッコリ,カンパチ”というように


お客様が食べた時の食感等や
どこで漁れているかが分かるように
命名されていた。


次々に、家族の各々が
好きなお寿司を注文して食べている時、
ふと姉が言った。


「タカシ、これ美味しいね!
 今月のオススメ」


「んっ?どのネタのこと?」
置いてあるメニューを拡げて、
探しているが、あっさり諦めて、


姉はお寿司を頬張り、
ニッコリしながら、


「食べちゃって、どれか分かんないやw」
と言った。


「!!!」


ふと、気づいた。


“もし、寿司ネタを作る動画や、
最終的なネタのルックスを納めた
画像や値段が出てきたら、どうだろう?”


老若男女にお寿司ネタを
簡易的に”映像”で見せることができたら、
お客様の食欲をそそるのでは?


ひいては、特に売りたい
“オススメの一品”の注目度もあげて、
売上を伸ばせるのでは?”


お店を出て、自宅に着いて、
すぐにいつものベンチに向かう。


社長に、珍しくこちらから
提案の電話を入れる。


「社長!お店にこっそり食べに行きました!
 味も接客も満点ですが、


”食べてもらいたい商品を
知ってもらう”という観点では,
改善の余地があります。」


「・・・」


少しの沈黙があって、
また叱られたりするのかなと
思いきや、


「確かにな!!ええやん!!
 ほんなら、板場正面と客席に
 全部モニター導入したるで!


食欲そそる、動画ば作ったってな
鳥部くん!楽しみにしてんで!」


「はいっ!早速、お店の人に挨拶して、
 段取り組んでみますね!」


そうして、初めてのお寿司屋さんにて


“お客様が配膳待ち中に見て、
ついつい追加注文したくなっちゃう系動画”


を制作したのである。


関わってくださったスタッフの皆さんとも
コミュニケーションやヒアリングをして、


客単価の高いお客様の特徴や
どういう仕事振りをお客様にも
知ってもらいたいか?等を聞き、反映する。


“目的を果たす”

一見、簡単なように見えるが、
極めて、難しいことだ。


自分が決めつけた目線ではなく、
お客様”が”あったらいいな!と思ったり、
これは必要だな!と思える、


いわゆる、自分目線ではない、
顧客の目線に立って、


本当の意味で、
役に立つ動画を作ること。


土曜日のお昼の仕込み後回転直後に、
食べさせてもらったお寿司は、
どれも美味しかった。


魚の魅力に取り憑かれたのも
この頃からだ。


帰り道の川沿いの信号待ちの時に、
ふと電線に目がいく。


烏が一匹、じっと見つめていた先には
道端に散らばったお菓子をじっと見ている。


行き交う車がそのお菓子を粉々に踏み潰して、
信号が変わる直前に、颯爽と降り立ち、


潰れて食べやすいサイズのお菓子を咥えて、
颯爽と立ち去る。


目の前の出来事に、
“コイツら、烏は賢いなー”と
感動しながら、


“俺も一人でどんどん、
サクサク仕事をこなせる側に回ろう!”
そう思った。


信号が変わる。

まだ、自分で餌を取れないスズメは
“偶然にも与えられた餌”に感謝しながら、


再び、颯爽と飛び立った。


 続く・・・



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