
対策上手な女性の常識①ヘアサイクルと女性のからだ

記事執筆/監修:金子 章子/ Akiko Kaneko, MD, PhD: 日本形成外科学会専門医、医学博士、女性の薄毛・抜け毛対策の治療専門病院・ボナディアクリニック院長👉 臨床データに基づき作られた、女性の髪対策 Selfcareプログラム「ブロッコリーSprouts」開発
こんにちは。女性にとって、シャンプーしたりスタイリングしたりするなど、毎日の髪のお手入れは身近ですよね。だから、見えている(作り終わった)髪の外側のお手入れは、結構詳しいのではないかと思います。

でも・・、まだ見えていない(頭皮の下で作り途中の)髪や、健康的な髪を作るための内側のお手入れ(自分の髪を作ってくれるのは、自分の体だけですからね!)に関しては、多分あまり詳しくないような・・。😅

でも女性の髪って、なにもしなくても、常にベストコンディション!・・といった丈夫なものでなく、野生の小鹿のようにナイーブで、か弱い存在です。

だから、大きな病気などがなくても、日常のいろんなことをきっかけに、抜け毛が増えたり、髪が細くなったり、髪のボリュームが減ってきたり・・といった、髪のゆらぎが起こってきます。
そこで、この「女性が薄毛・抜け毛対策する時に、絶対知っていてほしいこと」シリーズでは、女性が薄毛・抜け毛対策する時に、絶対知っていてほしいことを、順番にお伝えしていきたいと思います。
1回目の今回は、「ヘアサイクルと、女性の心と身体」に関してです。
▶ ヘアサイクルとは?

髪は、一生の間「抜けたり、生えたり」を繰り返しますが、1本の髪が生え始めてから、抜けて次の新しい髪が生えるまでを1周としたサイクルをヘアサイクルと呼びます。 ヘアサイクルは、大きく3つ(+1つ)のステージに分かれています。
① 成長期 /anagen(2~7年):髪がどんどん伸び続ける時期
② 退行期 (数週間):成長期と休止期の間の時期
③ 休止期 / telogen (数か月):髪がこれ以上成長しない時期
③-2 休止期の終わり / teleptosis または exogen:毛が抜ける時期
👉抜けた髪のすぐ下に新しい髪がスタンバイしていたら、次の成長期が速やかに開始されますが、抜けた髪のすぐ下に新しい髪が、スタンバイしていないと、次の新しい髪がセットされるまでの間、毛穴だけの状態で待つことになります。😱
頭部には10~15万本の髪が存在しますが、髪全体の85%は成長期に、15%弱が休止期にあります。髪は、休止期に入ったらすぐ抜けるわけではなく、数か月その場にとどまり、数か月たった時点で抜けます。(👈ポイント)
▶ 調子の良い、ヘアサイクル
1日あたり50~100本程度抜けても、「生理的な(自然な)」抜け毛の範囲とされていますが、なぜ「生理的な(自然な)」といえるかというと、これくらいの抜け毛の本数であれば、同程度の本数の髪が新しく生えてくるので、髪全体の毛量が保たれるからです。
ということで、調子の良いヘアサイクルは、その日に生える髪と抜ける髪のバランスが良いです。
👉 生えた髪の本数 ≒ 抜けた髪の本数
ちなみに、今日抜けた髪は、数か月前に休止期に入った髪です。そして、今日休止期に入った髪は、数か月後に抜けます。
「抜け毛が増えてきた😱」、「髪のボリュームが減ってきた😰」という時に、対処するためには、このメカニズムを知っておくことが、とても大事ですよ。
▶ 調子の悪い、ヘアサイクル
調子の悪いヘアサイクルでは、その日に生える髪の本数より、抜ける髪の本数が多くなっています。
👉 生えた髪の本数 < 抜けた髪の本数
そして、本来今日抜けるべき髪(生理的)だけでなく、前倒しで休止期に移動させられた髪が混じるようになると、その数か月後から抜け毛が増えます。(補足:どういう時に、髪が前倒しで休止期に移動させられか?に関しては、こちら→② 女性の薄毛・抜け毛の2大原因と「不調のタイプ」)
抜けた髪=本来、今日抜けるべき髪+前倒しで、休止期に入った髪
では、抜け毛がおさまる時は、どうやっておさまるかというと・・、髪が前倒しで休止期に移動させられなくなれば、その数か月後から抜け毛は元通りに戻ります。
抜けた髪=本来、今日抜けるべき髪(だけ)
▶ (そもそも!?)髪の育ち方

髪は、頭皮の下の毛穴の奥で、髪を構成する細胞たちから作られます。この段階では、髪の細胞たちは生きていて増えます。だからこそ、髪は伸びたり、木の年輪のように太くなっていきます。
そして、頭皮から出て見えるようになった部分は、作り終わった髪の細胞で構成されています。
▶ (そもそも!?) 薄毛とは?
薄毛というと、世の中的には「地肌がすごく目立った状態」をイメージするかと思いますが、私たち女性が「薄毛」という表現をする時って、もっとマイルドな早い段階の「髪の変化」も含んでいます。
なので、よくあるのは、髪がちょっと気になってきた時に、ご家族や親しい友人に見てもらって「どう思う?」と聞いても「大丈夫、わかんないよ。」とあしらわれてしまうパターンです。😓
でも、他の人がわからないけど、ご自身では「髪が、前と違う・・」🧐と感じる時、その感覚は正しかったりします。(お知らせ🔰一番下にある髪の不調のタイプチェックには、髪のボリュームを画像でチェックしてもらえる1回券がついてます。)
そもそも薄毛って、① 今日生えてきた髪より、今日抜けた髪が多い、② 1本1本が細くなる、のいずれか、または両方が続くとはっきりしてきます。
今日生えてきた髪 < 今日抜けた髪(👈ここに目がいってしまうけど)
普段は抜けた髪しか見えないので、ついつい、抜け毛の本数に目がいってしまいますが、ちゃんと新しい髪が出始めていれば、抜け毛がちょっと多くても、全体としては大丈夫なことも、よくあります。(お知らせ🔰ちなみに、手持ちのスマホのカメラで地肌を撮影すれば、新しい髪がちゃんと出始めているか、チェックできますよ。)
▶ 従来の医学的な「女性の薄毛」と、その重症度
女性の抜け毛や薄毛問題は、世界中の女性に共通する普遍的なテーマです。そのため、これまでにも、髪の治療や研究に関わる諸外国の医師が、女性の脱毛症(薄毛)の医学的な(見た目の)程度分類を発表しています。
例えば、こちら👇は、女性の脱毛症領域で権威ある、オーストラリアの大学教授らのグループが、2004年に医学論文で発表した女性の脱毛症の程度分類ですが、「もし髪が気になるわ~」という女性の方で、「私はこのあたりかな?」と当てはまる写真は、ありますでしょうか?


おそらく、今「髪が気になるわ~」という女性の多くが、「左から2番目までいかないけど、1と2の間かしら??・・・っていうか、1番目も薄毛なの?」など、色々感じるものがあるかと思われます💦。
この分類を発表したグループでは、1番左の写真を、最も軽い段階「早期の女性型脱毛症」と位置づけて、「抜け毛の増加や髪のボリュームダウンを主訴とするが、臨床上明らかな密度の低下の見られない状態」と定義しております。
ちなみに、たしかに1番左の写真の方は、ベストな状態ではなく、薄毛のはじまりのサインがみられているので、ご本人は「髪が気になってきたわ😱」と感じると思います。(だけど、周りの人に「どうかしら?」と尋ねても「そんなことないよ、気のせいだよ。」と言われてしまうかもしれません。)
でも、私たち女性は、周りの方がそれほど気付かない段階の、マイルドな髪の変化も、気付けることが多いですし、その段階で早く立て直したいとも思います。
だから、より多くの女性に役立つ、女性の脱毛症(薄毛)の医学的な(見た目の)程度分類は、薄毛のはじまりのサインや、マイルドな段階での髪の変化も、ちゃんとチェックできるものが良いのではないかと思いました。👇


なので・・、作りました。( 👉詳しくは「女性の髪のセルフチェックの方法💚薄毛・抜け毛サインの早期発見で、対策が楽になる!」 医学論文:A new classification of Early Female Pattern Hair Loss International Journal of Trichology. Mar-Apr 2018;10(2):61-67. )
▶ 女性が「薄毛」と感じ始める、早い段階の変化
女性の髪の変化に関しては、早い段階と、ある程度進んでしまった段階の違いは、3次元の変化か、2次元の変化か、です。
具体的には、進んでしまった段階だと、分け目などの「地肌がどれだけ見えてしまうか」が、程度の基準ですが、早い段階では、分け目の広がりはまだ大丈夫だったりします。それよりも、早い段階で起こっているのは、ボリュームの減少😵です。

髪のボリュームは、実は体調など心身のコンデション次第で、よくゆらいでいます。でも、あまり心配しすぎないでくださいね。マイルドな段階なら、多少抜け毛が増えていたり、髪のボリュームが減少していても、コツがつかめると何度揺らいでも、立て直せたりします。
▶ ヘアサイクルに影響する「状況」「原因」「きっかけ」
そのためにも、ヘアサイクルに影響する「状況」「原因」「きっかけ」を知っておくのは、良いですよ。👉詳しくは、『女性の薄毛・抜け毛の2大原因と「不調のタイプ」(女性の薄毛・抜け毛の原因と対策)』
■ 抜け毛・薄毛対策は、どれくらいで効果がでますか?
ヘアサイクルのうち、髪を前倒しで休止期にセットさせるような「状況」や「原因」が収まっていて、新たに髪を前倒しで休止期にセットさせるような「きっかけ」が起こらないまま保てれば、その良い状態になり始めてから、2、3ヶ月の間に、抜け毛の減少や、髪のボリューム回復のサインが出てきます。
■ 薄毛・抜け毛対策をやめたら、髪が元に戻ってしまうか?
これは、髪対策をまだ始めてない方も、実践中の方も、気になる疑問ですよね。この答えは、ある方にとってはYesで、別な方にとってはNoです。
ヘアサイクルを伸ばす目的で、種々の薬剤を使っている方は、その使用をやめると、その方がその時点で薬剤を使わなかったら、なっていたであろう髪の状態に落ち着くと考えられています。なのでYesです。
一方で、ヘアサイクルを伸ばす薬剤にそれほど依存せず、髪が前倒しで休止期にセットされないように、しっかりした髪を作れる体とライフスタイルができている方は、髪対策として使っていたアイテムを多少サボっても、髪を保てています。
いずれにせよ、髪対策の選択肢は1つではありません。どちらかが、良い悪いという類いのものではなくて、ご自身の大事にしたいものが何かや考え方による違いであって、ご自身が納得して選ぶのが大事です。
■ 薄毛・抜け毛対策は、いつまで続ければいいの?
ヘアサイクルは、日々の体調や心身のコンデションの影響を、受けます。なので、髪の対策を続けることにこだわらず、その時々の状況に応じて実行可能な、ご自身の体調管理やライフスタイルの工夫は、いつでも髪を保つ対策につながりますよ。
【おまけ】
👇 ここに、女性の”髪の不調タイプ”チェック💚が、あります。効率よく髪対策をしたい女性に、おすすめです。(その前に、女性の”髪の不調タイプ”チェックって、なんですか?という方は、こちらの解説を読んでみてくださいね。)

「髪の不調のタイプチェック」をご利用いただくには、利用規約とプライバシーポリシーへの同意が必要となります。あらかじめご了承ください。
💚記事執筆/監修💚
金子 章子/ Akiko Kaneko, MD, PhD: 日本形成外科学会専門医、医学博士、ボナディアクリニック院長、株式会社Aventino創業者:筑波大学医学専門学群卒業、慶應義塾大学大学院医学研究科修了。慶應義塾大学病院、静岡赤十字病院、国立成育医療センター、横浜市立市民病院等を経て、現在ボナディアクリニック院長として、女性の脱毛症の診療に従事。日本臨床毛髪学会評議員。 2022年、女性の髪の問題(薄毛・抜け毛)対策のセルフケアに必要なプロセスを全てそろえた、日本初の女性の髪対策セルフケア支援サービス「ブロッコリーSprouts」をリリース。専門領域:女性の脱毛症(薄毛・抜け毛)論文:A new classification of Early Female Pattern Hair Loss International Journal of Trichology. Mar-Apr 2018;10(2):61-67. 医学書:Retrospective analyses of Nutrition status of Asian Female Pattern Hair Loss patients ( 「Practical Aspect in Hair Transplantation for Asians」 (chapter70 )