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バーチャルろくろの話をしよう。

PCの前で「ろくろ」の動きをすると,Leap Motionというモーションセンサーが手のひらを認識し,画面の中で陶芸が可能。完成した器は3Dプリンタで出力ができる。

Virtual Roquro,略してVR。

よく「エアろくろ」と言われますが,それではARです。このページを見てしまった方は「略してVR」だけでも覚えてください。

画面の中で,手を動かしてものづくり。そしてその完成品を画面から取り出したかのようなバーチャルとフィジカルがシームレスに繋がる世界

その体験を子供でもお年寄りでも,誰でもできるというコンセプトから生まれました。

バーチャルなろくろを作りたかったのではなく,このコンセプトを体現するためのツールとして「ろくろ」が選ばれた,というのが正しい経緯になります。

というのも,実際の「リアルろくろ」を触ったことのないエンジニアが作り始めたシステムだからです。ろくろといえば「インタビューの時の手の動き」を連想する人々が作りました。

外側から器に触れると小さく(細く)なり,手のひらを外側に向けると大きくする(内側から広げる)ことができるのは,バーチャルろくろ特有の動きです。
リアルろくろを知らなかったからこそ,極限までシンプルな機能になりました。だからか動作もサクサクです,ということにしてください。

そんなバーチャルろくろ,3Dプリンタを使って陶器で出力すればお茶も点てることができます
そのバーチャルろくろの完成品でお茶を点てるのが,このプロジェクトにおける私の仕事になります。(その他,宣伝や人の紹介などは随時してきました)

このシステムが福島県の窯元の後継者育成に活用できるのではないかということで,復興関連のイベントやハッカソンにも出展してきました。

↑こちらは初期作品ですが,一言で言うとお茶が点てづらいです。茶筅が折れそう。

そのためツルツルの器も作りました。こちら,ハッカソンの審査員だった池澤あやかさんです。

先ほど福島県と触れましたが,中学校の授業で陶芸体験に使われています。

あ〜いいですね。手書きの黒板に,3時間目,理科,バーチャルろくろ。

アナログなのに近未来感あります。(本当は総合の授業ですが,マグネットがなかったのでしょう。)

こちらは栃木県子ども総合科学館のホームページです。
とちぎの伝統工芸のページに不可解な一文。「バーチャルろくろ体験もできるよ」。しれっと益子焼の欄に書いてあります。

ただし,このような事例を紹介しておいてアレなのですが,バーチャルろくろは正確には「いわゆる陶芸体験」のためのシステムではないと思っています。

バーチャルろくろは,手で作ったらめちゃくちゃ面倒な形も,「Change」ボタン一つで器表面のポリゴン数を変化させ,ツルツルもガタガタも一瞬。
通常なら重力で潰れるバランスの悪い器も,この通り。バーチャル空間では,重力を実装する方が大変です。

こういった,リアルろくろとは完全に別物の「バーチャルろくろ体験」と呼ぶしかない体験を提供しています。

リアルろくろに近づける方向には,開発を進めていません。水分量や摩擦といったリアルろくろの特徴(=限界)を全て実装することはできない以上,リアルろくろの劣化版にしかならないと考えているからです。

そしていくら頑張ってリアルろくろに近づけても,今の陶芸にできることしかできません。

伝統工芸×最新技術というと,新しい素材で3Dプリントする,VRを使うなど,最新技術を使うことが目的になることが多々あります。
しかしお茶が好きなアナログ人間としても,今既にできていることは,リアルろくろで体験していただくのが一番だと考えています。

つまりバーチャルろくろは,今できていないことが新しくできるシステムでありたい。

今ある焼き物からは浮かばなかった使用法や評価軸が,バーチャルろくろから思い浮かぶこと。

例えるなら,焼物の権威を人間国宝というタイトルで決める一方,バーチャルろくろは日本一や世界一をeスポーツの大会で決めるような,そのくらい異なる評価軸。決してお互いに阻害し合うものではありません。

この新しい文脈を生み出すことが,伝統文化をわざわざ最新技術と組み合わせる意義だと思っています。

むしろ,新しい文脈を生み出せない限り,バーチャルろくろはリアルろくろの代替品ではないと主張するのは難しいと考えています。

そんな新しい文脈を,皆さんと考えていけたらと思っています。

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以上の内容のプレゼンを,7月13日に行われた「HoloLens ミートアップ 京都番外編~日本の伝統とxRとファブな夏の夜 in MTRL KYOTO~」で行いました。

こちらは5分間のLTだったため,この部分をもっと詳しく聞きたいという点もお寄せいただけたら幸いです。

技術面はバーチャルろくろ開発者のほうにお願いしていますが,私自身はもう少しアナログ寄りのポジションで,伝統と最新技術の間を繋ぐ人であれたらと願っています。
それが「新しい文脈を生み出すこと」にも繋がると,信じています。


他の参加者さんの資料は下記リンクから。


バーチャルろくろ公式サイトは下記。info@roqu.ro宛にメールをいただけますと,技術者に直接届きます。

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